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適切な報酬と人件費コントロールを両立させるには

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適切な報酬と人件費コントロールを両立させるには

組織・人事Q&Aーよくあるクライアント企業のお悩み(1)

 みなさんこんにちは。
 コンサルタントの渡辺俊と申します。

 私がこの仕事を始めて、今年で干支が一巡します。
 この間、2008年のリーマンショック、2011年の東日本大震災など、世界を大きく揺るがす出来事もあり、中堅中小企業を取り巻く経営環境は大きく変化してきました。

 それに伴い、経営を支える人事や報酬の考え方もじわりじわりと変化しつつあり、それが、各社の人事政策、報酬政策にも影響し始めていると感じています。

 今日から数回、私たちがコンサルティング現場でよく耳にするクライアント企業の生の声を取り上げながら、その変化について、皆さんと一緒に考えてみたいと思います。

Q

アベノミクスによる景気回復基調の中、世間では賃上げが叫ばれています。
 しかしわが社の経営環境はまだまだ厳しく、簡単に賃上げに踏み切ることはできません。
 その一方で大企業が採用を増やしているため、それなりの賃金水準を実現しないことには、優秀人材が確保できない、他社に流れていってしまうという懸念もあります。
 経営の安定も維持しつつ、限られた人件費の中で、適切な報酬を払うにはどのようにしたらよいのでしょうか?

A

報酬ポリシーを貫きつつ経営の安定性も担保する弾力的な人件費管理の考え方を取り入れ、社員との信頼関係を保ちながら「絶妙なさじ加減」を見つける

1.わが社にとっての報酬の意味

 わが社の報酬について考える時、おそらく皆さんは、次の2つの「バランス」を気にしていらっしゃるだろうと思います。

 1つは世間とのバランスです。わが社の報酬は他社と比較して高いのか、低いのかということです。
 もう1つは社内でのバランスです。どんな人の給料が高く、どんな人の給料が低いのかということです。

 多くの経営者は、社員のよりよい働きと安心や満足を引き出すため、この外部・内部の2つのバランスがどうあればいいのかを繰り返し考え続け、自分なりの考えを持っていらっしゃいます。

 そこには、経営者自身の、人や仕事に対する思い、こだわりが表れます。「報酬ポリシー」といってもいいでしょう。
 それがわが社にとっての報酬の意味であり、これをルールやしくみとして体系化したものが、わが社の「報酬制度」ということになります。

 たとえば「地方に本社を構えているが、大都市並みの給料」という会社があります。
 ここには、「大企業並みの人材になってほしい、仕事をしてほしい」という社長の思いが表れています。

 「給料は世間よりやや低いがボーナスは高い。一定の会社業績を出せば年収では大手企業を上回る」という会社は、 「自分達で会社の業績を高め、自分達で報酬を勝ち取るという挑戦的な姿勢」を社員に求めているのでしょう。

 内部バランスについても、いろいろな考え方があります。
 役割や責任、貢献度など、仕事に主眼を置いた序列づけをしている会社もあれば、経験や能力、熟練度など、人の成長に主眼を置いた序列づけをしている会社もあります。
 年功序列的な運用を続けている会社も、意外に多くあるようです。

 このような報酬に対する意味づけは、「報酬制度」や実際の報酬決定を通して社員に伝わり、やがて社員どうしの関係や思考や行動にも影響を及ぼしていきます。
 つまり報酬は、会社や経営者の人事観・仕事観を社員に伝え、社員とビジョンを共有するメッセージそのものなのです。


2.信頼関係に基づく合理的な報酬運用

 一方で報酬は、会社の業績や体力の表れでもあります。

 採用競争力やリテンションを考えれば、他社に負けない魅力的な報酬水準にしたい。
 しかし会社の支払能力には限りがある・・・。

 そんなジレンマの中で経営者は、世間相場や人材の市場価値を考慮しつつも、人件費の上昇や総額をある程度コントロールし、支払能力とのバランスをとっていかなくてはなりません。

 具体的には、次のようなシンプルな手順・やり方が考えられます。

 賞与については、あらかじめ期間営業利益のX%を還元する、つまり、業績の良い時と悪い時ではっきりとメリハリをつけることを社員と約束し、実際に利益に応じて支給原資を決めます。

 一方、月例賃金については、しくみや慣習に基づいて例年通りの改定を続けていきます。
 業績が安定的な上昇トレンドになった時には、これに加えてベースアップを行うこともできます。
 ただ、ベースアップ分についてはすぐに固定化するのではなく、経営が長期的に見通せるまでの間は、景気や業績に連動する調整弁的な使い方にしておくほうがよいかもしれません。

 この方法をとると、利益が出なければ賞与は支給されませんが、反対に利益が大きくなれば社員への配分額は増えます(*注)。
 社員にとってはこれが励みとなり、業績の向上を目指してよりよい仕事をしようという気持ちが高まります。

 効率を意識し、コストの削減にも真剣に取り組むようになるでしょう。

 業績が低迷し、赤字になるような場合は、ベースダウンも「あり」とします。
 もちろん、賞与ゼロやベースダウンはないにこしたことはありません。
 しかし、それも「あり」だとしておくことが、逆に責任感や達成意欲を引き出すことにつながります。

 ただしこのような弾力的な運用を行うには、経営者と社員の信頼関係が欠かせません。
 会社の経営状態や今後の見通しについて最低限必要な情報を社員に開示するとともに、経営者がそのつど自分の言葉で丁寧に状況を説明し、納得してもらうことが大事です。

 「説明しなくても分かってくれるだろう」とか「ルールだから分かっているはずだ」というような甘い考え方は通用しません。

 このようにすれば、会社の報酬ポリシーを貫きながら、経営の安定性を一定程度担保する、「絶妙なさじ加減」で報酬運用ができるように思います。

*注)実際の運用においては、利益が出なくても支給する原資をあらかじめ予算化したり、利益が大きくなり過ぎたときの還元率を低減したりするなどの実務的な工夫をします。

3.さらなるヤル気を促すために

 このように、社員に対する誠実な姿勢・配慮を持ちながら、合理的でわかりやすい報酬決定・運用を継続的に行っていくことにより、社員は一定の身分保証や組織人としての承認、期待を感じるようになり、自分が存在する足場ができたような安心感を得ることができます。

 そして、会社と社員の間の信頼関係は、少しずつ着実に深まっていきます。
 今回は、会社の業績や支払い能力を踏まえた報酬の運用を通して、会社と社員の信頼関係を実現していくことを考えました。

 では、信頼関係以上の、さらなるヤル気を促す(動機づけ)にはどうしたらよいのでしょうか。
 皆さんもお気づきかもしれませんが、本当の意味で人を動かすのは、内発的動機=心の底から強くそうしたいと思う本人の気持ちです。

 「人を動かすには給料を上げねばならない」「給料を上げれば人は動く」という即物的なやり方ではうまくいきません。
 しかし、ならば報酬をいい加減に決めてよい、ということでもないはずです。

 次回は、「事業承継」をテーマに、報酬の内部バランスというものに再度目を向け、報酬と人のヤル気(内発的動機)の大事な関係について考えます。

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