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事業承継をスムーズに進めるには

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事業承継をスムーズに進めるには

組織・人事Q&Aーよくあるクライアント企業のお悩み(2)

 みなさんこんにちは。コンサルタントの渡辺俊です。
 ここのところ東日本は、記録的な大雪に見舞われ、物流が滞るなど大混乱となってしまいました。が、陽射しは日に日に明るくなっており、春の兆しも少しずつ感じられるようになってきました。
 さて今回は、「事業承継」を取り上げます。

Q

3年後の社長交代をめざし、長男への事業承継を考えています。財務や法的な手続きについては専門家のアドバイスを仰ぎながら粛々と進めていますが、社員と組織のことについては暗黙の了解で進めてきたことが多く、引き継ぎの難しさを感じています。どんなことに留意して、何をしていけばいいのでしょうか?

A

社員との関係性をどのように承継していくかが、企業存続のカギ。内部バランス・報酬を急激に変えることは得策ではない。現社長が築いてきた関係性を尊重しつつ、次期社長が会社の未来を社員とともに探求していく中から、新たな内部バランスのあり方を見出していくことが大切。

1.関係性の承継こそ最重要課題

 事業承継を巡る課題といえば、まずは、各種の財務的・法的手続きが思い浮かべられます。
 しかし、多くの会社が、それ以上に複雑で重要な課題だと感じているのは、現社長が紡いできた多様な関係性の承継ではないでしょうか。

 顧客、取引先、金融機関、地域社会、そして社員との関係性を、どのように引き継ぐのか。
 これは、処理や手続きといった類のものではなく、専門家やマニュアルに頼れるものでもありません。
 承継する本人の資質・姿勢・経験・知識・能力を総動員して、全人格的に向き合わなければならない課題だと言えます。中でも社員との関係性は、最も身近で大切なものです。

 先日、中小企業の労働政策支援をしている方から、こんな話をお聞きしました。
 彼女が講師を務める中小企業向けセミナーの開催にあたり、主催者である自治体は、そのチラシ制作を地元の印刷会社に委託。
 ところが、できあがったチラシは、セミナーに対する愛情や思い入れが一片も感じられないもの。

 依頼主が自治体でなく民間企業だったら、突き返されても不思議はない出来栄えだったそうです。
 彼女は、憤りを通り越して、逆に「こういうものを作る会社ってどんなところなんだろう?どんな人がこれを作ったんだろう?」と興味を持ち、社長を訪問しました。

 会ってみると 30代の二代目社長。「5年前に経営を引き継いだが、会社としての理念が打ち出せず、社員との関係性もうまく作れていない」と、悩みを吐露してくれたそうです。

 このように、社員との関係性の承継がうまくいくかどうかは、顧客の信用をも左右し、企業が存続できるかどうかの分かれ目になるといっても過言ではありません。

2.トップ交代で、人と組織に何が起きるのか

 指揮官が代わることは、会社のビジョン、事業運営の方針・戦略に大きな影響を及ぼします。
 それは、組織編制、人員配置にも変化をもたらします。

 たとえばプロ野球のチーム。監督が代われば戦略も変わります。
 そして新たな戦略にふさわしいチームづくり、ポジション配置、オーダー編成が行われます。
 守備重視の戦略への転換により、不動の4番がスタメン落ちするようなことも起こります。
 みなさんも、人事異動で上司が代わった時に、似たような経験があるのではないでしょうか。

 これはつまり、指揮官の方針・戦略・価値観によって、組織における人や仕事の相対的な価値や序列づけ、すなわち、前回説明した「内部バランス」が変わることを意味しています。
 内部バランスが変化するということは、これまで認められ、良しとされてきたことが否定されるようなことも起こります。

 そうなれば、自分がこれまでに積み上げてきた実績、成長実感、自信が、急に意味のないものに感じるかもしれません。

 元の上司のもとで、「役割期待⇒仕事⇒成長⇒実績⇒モチベーションUP⇒仕事・・・」とつながっていた人ほど、上司の交代によって喪失感を覚えるばかりでなく、自己肯定感はゆらぎ、キャリアの断絶を感じることにもなるでしょう。
 私にもそんな経験があります。

 まして、会社のトップが交代し、会社全体としての内部バランスが、次期社長の考えのもとに決定づけられるということになれば、それまでの自分の居場所を失う人さえ出てくるかもしれません。
 もちろん、反対に、現社長の元でくすぶっていた社員が、次期社長の元で活躍するということも起こり得ます。

 いずれにせよ、内部バランスの変化は、報酬にも直結するため、社員の心を波立たせ、見えないゆがみや亀裂を、組織の中に引き起こすことになります。

 前回お話ししたように、内部バランスには、経営者の考え方や価値観が表れるものである以上、社長交代に伴ってそれが変化することは、ある意味当然のことです。

 しかし、その変化があまりに急激で、多くの社員がついていけないようなドラスティックなものだと、これまで培ってきた信頼関係が大きくゆらぐことにもなりかねません。
 全体的・長期的視点でみれば、組織としての総合力の低下につながると懸念されます。

3.事業承継を上手に進めるには

 事業承継は大きな節目であればこそ、これを会社のさらなる飛躍のきっかけにしたいと考える後継者も多いでしょう。
 ますます厳しさを増し、めまぐるしく変化していく経営環境に適応していくために、大きな社内変革を断行する機会だと意気込むのもよくわかります。

 しかし、先に述べたように、急激な内部バランスの変化は、組織に必要以上の軋轢を引き起こしかねません。
 そもそも、変革への舵を急に切ろうにも、さまざまな障害が発生し、人も組織も簡単には動かない、変わらないというのが現実だと思います。

 では、どうすればスムーズな承継ができるのでしょうか。

 まずは、これまでのあり方=現社長がやってきた事、その結果何が起きて、今どうなっているのか=をしっかりと見つめることです。
 そのためには、現社長はもちろんのこと、現社長と一緒に歩んできたベテラン社員やOB、古くからおつき合いのあるお客様、取引先など、わが社のこれまでをよく知っている方々に直接向き合うことが大切です。

 先入観を持たず、率直に質問を投げかけ、様々な視点から語っていただく。
 そして、語られたことに解釈を加えることなく紡ぎ合わせていく。
 そうすれば、そこにわが社の本当の姿が描き出されていくのではないでしょうか。

 その上で、何を残し、何を変えるべきなのかを、じっくりと探求していくことです。
 それには、なんといっても、これからの会社を共に創っていく社員との対話が不可欠です。

 「顧客や社会はわれわれをどう見ているのか」「これからのわが社をどんな会社にしていきたいのか」「そのために経営者は何をしなければならないのか、社員はどうあるべきなのか」etc。
 このような、会社の存在意義に関わる本質的なことを、全員がオープンに真摯に繰り返し語り合うことが、何よりも大切なことなのです。

 次期社長のもと、全社一体の対話と探求が進めば、会社の未来を支える共有ビジョンがおのずと見出されていきます。
 そこに、これからのあるべき内部バランスも浮かび上がり、次期社長が大上段から振りかざさなくても、組織の中で自然と共有され、受け入れられていくように思います。

 Qにある「3年間」は、ぜひ、このようなプロセスに使っていただきたいと思います。

4.内発的動機の基盤=内部バランスを丁寧に取り扱う

 ところで、承継後も会社が存続していくためには、次期社長のもとで、社員がさらにヤル気になり、活躍してくれることが絶対条件です。

 そのヤル気の源は、個人の内発的動機=心からそうしたいと思う強い気持ちです。
 その気持ちは、個々人がもともと持っている信念、価値観、使命感などに根差して内側から湧き上がるものです。

 ただし、どんな環境でも自然に湧き上がるというわけではなく、組織の中で一人ひとりの存在が認められ、その働きが承認されているという心理的安定があってこそ生まれるものです。
 つまり、今回見てきた組織の中の位置関係(内部バランス)に対する安心・信頼は、個人の内発的動機が発動する根幹ともいえる基盤であり、丁寧に慎重に取り扱うべきものなのです。

 では、内部バランスの安定があれば、それだけで内発的動機は湧き上がるものでしょうか?
 次回は、「評価制度」をテーマに、内発的動機についてさらに探求していきたいと思います。

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