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ブラック企業問題と企業を取り巻く環境の変化ー4ー

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ブラック企業問題と企業を取り巻く環境の変化ー4ー

ブラック企業問題と企業を取り巻く環境の変化(4)

 皆さんこんにちは。コンサルタント・社会保険労務士の津留慶幸です。
 前回前々回と長時間・過重労働に関する法制や行政のルール、裁判例等について解説してきました。
 今回は、長時間・過重労働問題を解消するためにどのような対策を取ればよいのか、世間ではどのような対策が取られているのかをご紹介したいと思います。

2.長時間・過重労働問題

(6)労働時間の現状を把握する

 対策を考えるためには、まず自社の労働時間の実態を正しく把握しておく必要があります。
 皆さんは次の質問に正しく答えられますか。

  • あなたの会社の月間所定労働時間は何時間ですか?
  • 1人あたりの残業時間は月平均何時間くらいですか?
  • 残業時間に部門・職種ごとの偏りや繁閑差等はどれくらいありますか?
  • 36協定で届出している時間数は何時間ですか?その時間は実態に合っていますか?

 タイムカードあるいは自己申告等で、きちんと労働時間に関するデータを取っている会社であれば、すぐにわかる、もしくは少し時間をかけて確認すればわかるようなことだと思います。
 しかし、時間管理をほとんど行っていない会社では、上の質問に正しく答えることは難しいのではないでしょうか。

 現状が正しく把握できないまま手を打ってもあまり効果は得られません。
 そういった会社はまず、「労働時間を管理し把握する」ところから始めた方が良いと思います。

 もしかしたら、労働時間を管理していない理由が「残業代を適切に払っていないから(管理すると払わなければならないから)」という会社があるかもしれません。
 しかし、時間管理をしなければ残業代支払いは不要というわけではありませんので、時間管理はしっかりと行ってください。
 残業代の問題については、次回以降に詳しく話をしていきたいと思います。

(7)トラブルを未然に防ぐための対応ポイント

 労働時間はしっかりと管理しているし長時間労働に関する法的な知識もわかった。自社の現状が適切でないと思う。
 それでもなお、「すぐに改善できない」「何からやれば良いのかよくわからない」という方もいらっしゃると思います。

 残業時間は仕事量や仕事の効率に関係するので簡単に減らせるわけではありませんし、色々な問題が複雑に絡み合っていて、不用意に手を付けると思わぬ影響が出てしまうのではないかという不安もわかります。

 ただ、一方で、「上司が帰らないから帰れない」とか「仕事のできる社員は残業して当然」といった会社独自の文化や思い込みにより、必要もないのに残業をしている人がいるかもしれません。
 このような不必要な残業によって、会社の利益だけでなく従業員の健康まで蝕まれているとしたらとても不幸なことです。

 後者の組織文化や思い込みに起因する残業は管理職や従業員の意識を変えるだけで減らすことができますし、減らしたとしても仕事の成果にそれほど影響を与えないはずです。

 そうは言っても長く根付いた慣習を掛け声だけで変えることはなかなかできませんので、まずは次のようなことから取り組まれることをお勧めします。

1(労働時間管理をしていない場合)
残業時間の把握・管理を徹底して行う。
・「だらだら残業」に慣れている人は、自分がどれくらい働いて、それがどれくらいのコストになっているのかを認識していない場合があります。
・一方、会社側は、時間を管理していないから時間短縮を強く指導できない状況になりがちです。
・そこで、会社と従業員お互いの意識向上のために、どれくらいの残業が発生しているのかきちんと把握・管理し、見える化してみてください。

2 残業の事前承認制を導入する。
・個人の意思で自由に残業していい制度環境では、「だらだら残業」はなかなか無くなりません。
・会社側もどういう理由で残業しているのかわかりにくく、手の打ちようがありません。
・そこで、残業を「事前承認制」にし、終業時間が近づいてきたら、本人から「今日は何をやるためにどれくらい残業したいのか」を申請してもらい、上司が内容を点検して残業が必要と判断したら承認するようにします。
・さらに、事前の承認だけだと形骸化しやすいので、あとで申請時間と実際の残業時間が乖離していないかをきちんと確認し、残業を減らす方法を一緒に考えるようにしてください。

3 「ノー残業デー」などを設けてみる。
 ノー残業デー自体はよくある取り組みの1つで、特に目新しいものではありませんが、これを導入することによって、会社が残業削減にむけて本気で取り組もうとしていることをわかりやすく示すことができます。

4 現場の管理職や従業員を巻き込んで自由に話し合う(対話する)。
・みんなができれば早く帰りたいと思っているはずで、日常業務の中で「自分のこの仕事・作業は不要なのではないか?」とか「あの人のあの仕事はそんなに時間をかける必要がないのでは?」と感じていることがあると思います。
・一人ひとりの気づきの中に会社をより良くするヒントが隠れているはずですが、他の人に伝える機会がなかったり、伝えられるような雰囲気でないために心の中に押し留めているかもしれません。
・「かしこまった会議」の中で意見を集めようとすると参加者も委縮してしまう恐れがありますので、いつもの会議形式とは違った「リラックスした空間」を作り、参加者に自由に意見を出してもらえるようにすると良いでしょう。

 残業の事前承認制やノー残業デーの取り組みは、7月23日付の日経新聞に、「全員参加で残業ゼロ職場」として、数社の事例が取り上げられていました。

 この中には、毎朝自身の仕事予定を、退社時には1日の成果と計画通りにできなかった原因を同じ部署のメンバーに送るようにし、残業する社員には残業していることがわかるマントを着用させる「お仕置き」を用意する事例等が紹介されています。

 他にも厚生労働省が、

・「時間外労働削減の好事例集」
(http://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/kinrou/120703_01.html)

・「中小事業主に役立つ時間外労働削減の事例集」
(http://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/kinrou/110803_01.html)

を作り公表していますので参考にしてみてください(リンク先はどちらも厚生労働省のHP)。

 この「時間外労働削減の好事例集」によると、約6割の企業が「ノー残業デーやノー残業ウィークを設置」、約8割の企業が「残業の事前承認制を導入」しているというアンケート調査結果が示されています(平成23年10月調査 有効回答件数3,081件)

 また、同アンケート調査によると、残業時間削減の取り組みを行っていない企業より取り組みを行っている企業の方が「人件費が減った」と回答している割合が高いということも示されています。

 日経新聞の事例と厚生労働省の事例に共通して言えることは、残業時間の削減を個人や現場の管理職任せにするのではなく、全社的な取り組みとして行っていることです。
 個人や現場の管理職だけではできることに限りがありますし、日常業務に追われているとなかなか「いつもの仕事の進め方」から抜け出せません。

 全社的な取り組みと言ってもどうすればいいかわからないという会社には、上でご紹介した「4.現場の管理職や従業員を巻き込んで自由に話し合う」という方法が効果的だと思います。
 経営や人事が具体策を出すのではなく、現場の社員が持っているアイディアやその種を見つけて、育て、広めていくことで全社的な取り組みの機運を高めていくことができます。

 実際に私たちもこういった対話のお手伝いをさせていただいていますが、今まで思いもよらなかったアイディアが生まれたという声を耳にしますし、上から押し付けられたものではないため、皆が当事者意識を持ってアイディア実現の取り組みに参加しています。

(8)最後に

 今回はできるだけ手軽にできるものを意識してご紹介したつもりですが、それでも、今現在何の管理もしていない・何の施策も打っていない会社にとっては新たな負担になることは間違いありません。
 かと言って、何もしないで放置すると、いつか重大なトラブルにつながる恐れがあります。

 長時間・過重労働は、組織の生産性を蝕む悪習です。
 長い間に従業員の生命や健康、家族の人間関係に悪影響を及ぼし、従業員や家族、職場の仲間に多大な不幸を引き起こします。
 もし労働災害や過労死事故に発展すれば、会社の責任も非常に厳しく問われます。

 まずは、1つでも構いませんので、何らかの取り組みを実行し、会社が長時間労働の問題を組織的に解決する意思があることを従業員に示していくことが大切ではないでしょうか。

 次回は、長時間労働問題ともかかわりの深い「サービス残業問題」について取り上げたいと思います。

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