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第16回 報酬システム(8) 業績連動賞与

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第16回 報酬システム(8) 業績連動賞与

第15回では、諸手当の役割についての説明をしました。
今回は、毎月の基本給や手当の話から少し離れて、賞与についての考えを述べていきます。

報酬システム(8) 業績連動賞与

(1)賞与を通して外部環境を知る

 賞与の金額を賃金の何カ月分という形で決定している企業がまだまだ多いようですが、これでは賞与が既得権化することを是認・助長するようなもので、経営への参画意識を引き出す効果にも乏しく、人材マネジメントの面で大変な損失です。

 一方で、賞与が全くない企業も最近は増えているようです。厳しい経営環境を考えればやむをえない面もありますが、一律にゼロにするのではなく、何かしらの工夫が必要なように思います。

 賞与は会社の経営状況や、会社としての意思決定・判断を社員に示す貴重な情報の1つであり、会社の置かれた環境を社員に肌身で伝える大事な機会です。
 環境が厳しければ賞与は少なくなり、社員も危機感を持ちます。環境が良ければ賞与も増え、社員も努力が報われ嬉しく感じるでしょう。

 しかし、会社の業績に関わりなく、例えば年間4カ月の賞与を常に安定的に支給している場合はどうでしょうか。
 社員は賞与をもらうことが当たり前になり、会社の外部環境がどうなっているのかを体感できません。

 もちろん、知識・情報として知ることはできるでしょうが、自分の肌を通して、直接的に痛みや温かみを感じ取りにくいはずです。
 このようなことを避けるためにも、私たちは賞与原資を会社の利益に連動して決定する「業績連動賞与」を勧めています。

(2)業績連動賞与の考え方

 業績連動賞与とは、対象期間の会社業績(利益)に応じて賞与原資を決める方法です。
 具体的にはまず、「固定ファンド」を社員の人数に応じて決めておきます。固定ファンドとは、会社業績の如何に関わらず支給するもので、これにより最低限の賞与原資を確保します。

 例えば半期分の固定ファンドを「社員の基本給合計額の1カ月分」というように決めたら、その分は毎月賞与引当金を積んで損金経理をしておきます。
 ここでいう1カ月分とは、会社全体として確保している金額であり、全員に一律、基本給の1カ月分を保障するという意味ではありません(配分の仕方については、次回に述べたいと思います)。

 固定ファンドを確保したうえで、次は利益に応じて「変動ファンド」を上乗せします。変動ファンドとは、半年ごとの仮決算による営業利益または経常利益の一定割合(例えば20%)を賞与原資とするものです。

 固定ファンドと変動ファンドを合わせたものが半期分の賞与原資になります。実際の営業利益または経常利益は、変動ファンドが決まった後で確定します。

 ただし、この変動ファンドを使用する場合には留意点があります。
 会社業績が好調で利益が非常に大きくなると、それに比例して変動ファンドも大きくなり、合計の賞与原資が基本給換算で2.5カ月分(年間5カ月分)以上になる場合もあります。

 もちろん、そのまま支給しても構いませんが、2.5カ月を超えた場合は、その超過分については利益の一定割合(例えば20%)を丸々払うのではなく、4分の3に減らすことをお勧めしています。さらに3カ月を超えた分は2分の1に、3.5カ月を超えた分は4分の1とします。

 これは、利益が大きかった場合の過大賞与を防ぎ、将来に備えて留保利益を確保するための工夫です。

 このようにして、固定ファンドと変動ファンドとを組み合わせることで、業績が不調な場合でもある程度の賞与を保障し、業績が良ければ一定の割合で賞与が増えていく仕組みになります。利益が大きかった場合には会社の留保利益を増やすことができ、社員の納得感と会社の安全性の両立を図ることができます。

 ここで用いた月数やパーセントはあくまで一例です。それぞれの会社の状況に応じた基準を設定し、内規を作っておけば、毎回の賞与原資の算出が楽になるはずです。

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(3)賞与と月例賃金の性格の違い

 冒頭で述べたように、賞与を賃金に比例して支給する方法は、賞与を既得権化する原因となります。成績による増減が設けられていたとしても、毎月の賃金がベースとなっているのであれば支給基準を改めたほうがよいでしょう。

 そもそも賞与は、組織全体の成果・利益に連動して決めるもので、毎月の賃金とは報酬形態の性格が根本的に異なります。

 毎月の賃金は安定していることに重要な意味があります。役割責任と実力の評価に応じて、時間要素も加味しながら比較的ゆっくりと変動させ、あるべき金額に近づけていきます。

 時間的な要素を加味するので、特に若年層から中堅層の賃金については年功的な要素も多少入りますが、社員の生計費という観点や生活の安定という意味では、ある程度それをよしとしなければなりません。

 逆に、毎月の賃金が短期的な成果によって大きく変動することになれば、社員は安心して働くことができませんし、社員の目を短期的な目先の利益に向かわせることにもなりかねません。

 結果的に、全体成果への視点や社内の協力関係を失う原因にもなります。一時期、一般従業員の世界でもブームになった年俸制は、もうその役割を終えたといってもよいでしょう。
 行き過ぎた成果主義による即時的な賃金制度は終焉しつつあります。

 しかし、賞与は毎月の賃金とは違います。
 会社利益を配分するものですから、半年ごとに賞与原資を決めればよく、前回いくらだったのかを引きずる必要はありません。また毎月の賃金が安定して支給されているのであれば、思い切って賞与の配分には成績によるメリハリをつけたほうがよいでしょう。

 賞与を賃金比例で決めるような方法では、賃金が高い人は無条件に賞与額も高くなります。
 しかし、半年ごとに実現できた利益を配分するにも関わらず、積み重ねてきた賃金の多寡で金額が決まるというやり方は、賞与本来の性格に反するものです。

 社員は、もらった賞与額を通して、自分の仕事ぶりに対する評価を受けとめるとともに、会社業績の好不調をじかに感じるものです。その方が社員の危機感や結束力も高まるのではないでしょうか。

 賞与の配分方法については、次回、詳しく述べたいと思います。

 連載の内容は、『原因×集中×結果の人材マネジメント方程式』(菊谷寛之著)に詳しく書かれています。興味を持たれた方は、当社のホームページからお申込み・ご購入ください。

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