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第12回 報酬システム(4)デフレにも対応できる賃金表とは

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第12回 報酬システム(4)デフレにも対応できる賃金表とは

第11回では、役割責任を軸とした等級制度について述べました。

第12回は、当社がクライアントにお勧めしている賃金表の考え方と、特にデフレ時代に対応するための強力な賃金ロジックについてご紹介したいと思います。

 

報酬システム(4) デフレにも対応できる賃金表とは

(1)賃金表と基本給

 賃金表は、個々人の役割責任に基づいて決定した等級と成績によって、各人の基本給をズバリ決めるものでなければなりません

 初めに、そもそも基本給とはどのようなものかということを押さえておく必要があります。

 ここでいう基本給とは、年齢給、職能給、業績給・・・などのようにさまざまな賃金項目の積み上げ型で構成するものではなく、その人の「働きの対価」(会社にとってはコスト)が1つの賃金項目で表されるものをいいます。

 さまざまな 賃金項目を積み上げて作った基本給では、会社が従業員の何を評価し、何に期待してその金額を払っているのかがわかりにくくなります。

 会社側もなぜこの金額の基本給を支払っているのかが説明しにくく、せっかく支払っている賃金に込めた従業員へのメッセージがぼやけてしまいます。

 基本給とは、会社における従業員の賃金ポジションをトータルに示すものであり、所定労働時間分の賃金の基本対価を表すものです。年齢分がどれくらいであるとか、能力分がどれくらいであるといったことを分けて表示できるものではありません。
 

(2)ゾーン型の賃金表と基本給の運用

 ここからは、当社がクライアントにお勧めしているゾーン型賃金表の考え方と仕組みの概略を紹介します。紙幅の都合で細かな説明はできませんが、詳しくは書籍をご参照ください。

 まず、等級別に号俸1号あたりの金額すなわち号俸間の金額差(号差金額)を定め、○等級○号はいくらというように基本給の金額を表示できる仕組みとします。等級ごとに上限と下限の金額も設定します。

 定型業務を行うⅠ等級の下限は高卒初任給とするのが通例です。これが賃金表の起点となります。

 ここまでは、従来からあった号俸型の賃金表と大きく変わりはありません。

 大きな違いは、賃金表の中をさらに等級別の実力水準に対応したゾーンで区分していくという点です。通常、その等級に支払う基本給の最高額を示す範囲をSゾーン、次の金額の範囲をAゾーン、以降Bゾーン、Cゾーン、Dゾーン、Eゾーンの順に区分します。

 このゾーン区分は、等級別の実力レベルを表すSABCDの5段階評価に対応し、一番低い賃金の範囲であるEゾーンは評価対象外として昇給を保障する部分です。

 このゾーンを設定することのメリットは、各人が今位置づけられている賃金ポジションを直感的に理解できるようになることと、実力の評価SABCDに対応した賃金の高さを実現する仕組みが容易に作れるようになるということです。 

 例えば高卒で入社した新入社員の場合、高卒初任給はⅠ等級の下限ですのでEゾーンから始まります。

 この社員が毎年ずっとB評価を取り続けたとすると、基本給はBゾーンに向かって毎年上がっていきます。何年か後にはEゾーンの金額を超えてDゾーンの基本給をもらうようになり、次にCゾーン、Bゾーンと年々基本給が上がっていきBゾーンの上限まで昇給させるのです。

 ただし、Bゾーンの上限まできたら、B評価の社員はそれ以上昇給できないようにしておきます。なぜなら、この人はB評価という実力にふさわしい基本給にすでに到達しており、それ以上昇給させる必要がないからです。

 同じように、A評価を取る人はAゾーンの上限まで昇給でき、C評価の人はCゾーンの上限まで昇給できるようにしておくことで、一人ひとりの実力レベルに応じた賃金の高さを決定できるようになるのです。

 評価はSABCDの5段階で行いますが、最低のD評価を取ったとしても、Dゾーンの上限までは昇給できるようにしておきます。つまりEゾーンとDゾーンはどのような社員でも昇給できる範囲として、その部分に限り最低限の年功昇給を保障します。Cゾーン以上が実力評価によるプレミアム部分であり、各人の実力によって基本給に差がつく部分です。

 これまでの導入事例を見ると、定型業務を行うⅠ等級から管理職手前のⅢ等級またはⅣ等級くらいまではEゾーンを設け、最低限の年功昇給を保障するケースが一般的です。

 一方で、管理職クラスではDゾーン始まりにしたり、上級管理職ではCゾーンから始まるようにしてD評価では一切昇給できないようにするケースが増えています。

 このように賃金表をゾーンで区切り、成績と対応付けて昇給を行うことにより、年功要素と実力要素をうまく織り交ぜた混合型の賃金表を作ることができるのです。 

(3)賃金の上がりすぎを防ぐ合理的な昇給抑制機能

 賃金表にゾーンを設定するもう1つのメリットは、賃金の高さ・実額によって昇給額を合理的に制御できるということです。

 賃金表上で、自分の基本給が位置している賃金ゾーンより高い評価を取れば昇給できるようにする一方で、その評価に見合うゾーンに近づくにしたがい昇給額を徐々に減らしていきます。

 例えば、Eゾーンの基本給の従業員がA評価を取った場合、EとAの間にはまだ大きな開きがありますのでは昇給額は大きくします。Bゾーンの社員がA評価を取った場合はBとAの間は小さいですので、昇給額も小さくします。AゾーンでA評価の場合は、1号俸しか昇給することができません。

 さらに、賃金ゾーンより低い評価を取った場合は基本給が下がる仕組みも組み込んでおきます。例えば基本給がAゾーンの人はA評価以上、Bゾーンの人はB評価以上の成績でないと基本給が下がるという仕組みにしておくのです。

 具体的には、基本給がAゾーンの人がB評価を取れば、1号俸の降給になります。ずっとB評価を取り続けると、Bゾーンの上限まで下がることになります。

 こうすることにより、各人の賃金を既得権とせず、その人の基本給の高さにふさわしい働きを促す効果が生まれます。

 会社によっては基本給が上がりすぎることを防ぐために、従来型の定期昇給制度を続ける一方で年齢による昇給調整を行ったり、55歳で無条件に役職を外し、基本給を強制的に切り下げたりしているところもあります

 しかし実際問題として、このような年齢による昇給調整や賃金調整が中高年層に与える心理的影響(ダメージ)はどうでしょうか。特に、年齢による賃金の切り下げは確実に従業員のモラールダウンにつながっているはずです。

 もっとはっきり言えば、定年まで不満を持った社員を抱え続けることになります。若い人たちもそのことに無関心ではいられません。

 ゾーン型の賃金表を活用すれば、これまでのような年齢基準による昇給・賃金調整に頼らずとも、説得力のある合理的な賃金調整を行うことができるようになります。

 次回はゾーン型の賃金表の作り方について、さらに説明を掘り下げたいと思います。

 連載の内容は、『原因×集中×結果の人材マネジメント方程式』(菊谷寛之著)に詳しく書かれています。興味を持たれた方は、当社のホームページからお申込み・ご購入ください。

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