DX戦略とリスキリング (ブックレット71号巻頭言)
株式会社プライムコンサルタント代表 菊谷寛之
(2024年11月7日(オンラインZoom開催)秋季定例研究会 ブックレット「はじめに」より)
DX戦略とリスキリング(39)
情報のクラウド化・デジタル化が急速に進展し、特にこの5年間はビッグデータやIoT、AIなどの想像もできなかった非連続な情報技術が、経済社会に巨大な変化をもたらしている。マーケティング、商品開発、モノづくり、物流、サービス、組織、マネジメント、取引、金融など、あらゆる企業活動でデジタル技術の高度活用(DX)が始まり、いまやDXに後れをとっては明日の企業経営が覚束なくなってきた。
「組織は戦略に従う」という言葉があるが、経営環境の変化に合わせてビジネスモデルや事業戦略が変わるなら、人材戦略も必然的に変えていかねばならない。 企業はこれまでも、既存の市場・商品に隣接する新市場を開拓し、新商品を開発し、新業態の知識・スキルを担う人材を確保しながら事業を発展させてきた。いかなる時代でも、経営とは詰まるところ事業を担う人づくりである。
特に働く人々の思考・行動・スキルの集合知が顧客価値の源泉となる「知識経済」の時代においては、顧客視点で仕事の経験を真摯に振り返り、メンバー同士の創発的な対話を促す「学び」のスキルや、自主的な課題解決、自律的な協調・連携など組織行動面のリーダーシップが人の成長そして組織の内部成長を支えてきた。
ただしDXを進める局面では、過去の経験からの学習やOJTの延長線上で、これまでのようにプロパー人材を内部育成・登用する方法だけでは明らかに限界がある。DXを突き詰めると、情報技術のデジタル化を軸に、不連続な変化をもたらす世界水準の先端的な技術体系を集中的に取り込み、付加価値創造の全プロセスを整合的に変化させる企業全体の取り組みに発展する。そのためには一方で、経営レベルでDX戦略を構想できるデジタルエリートや、技術面で具体化できる専門人材をM&Aや外部労働市場から大胆に調達する必要がある。また、これまでフロントで新技術の先兵となってきた新卒や若年層は極端に採用が難しくなっている。これからはフロントの中堅層はもちろん、変化に抵抗しがちな中高年層に対しても、人材の外部調達を進める一方で、必要な業務スキルの学習手段を用意し、デジタル技術を活用した新たな業務のやり方に転換(DX)させる両面作戦が必要になる。これこそ近年、世界中で「リスキリング」が重要視されるようになった最大の理由である。
これを組織的に進めるには、次のような明示的・客観的な仕掛けが必要になる。
⑴事業のDX戦略と既存人員のリスキリングを明確な経営目標に掲げる。⑵対象となる業務スキルのレベルアップを可視化するとともに、資格取得や研修など、学習度合の見える化を集団で進める。⑶リスキリングを仕事の機会につなげ、人事評価や柔軟な配置・異動に結びつけ、成功事例を共有する。⑷年功賃金ではなく、職務・役割への貢献が評価され昇給に連動する人事賃金制度を導入する。⑸経営としてDXとリスキリングが業績に与える経済効果を情報開示し、賃上げに連動させる。
人材調達の外部化や、リスキリングの行動化・習慣化に成功した企業には、さまざまな経営の変革課題に集中的に取り組める組織能力がもたらされる。そのような柔軟なケイパビリティを備えた企業は、他社が容易にまねのできない特異な市場ポジションを取ることで高い優位性に立つことができよう。
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