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持続可能な賃上げのための条件とは (ブックレット69号巻頭言)

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持続可能な賃上げのための条件とは (ブックレット69号巻頭言)

株式会社プライムコンサルタント代表  菊谷寛之
(2024年2月21日(オンライン開催)春季定例研究会 ブックレット「はじめに」より)

持続可能な賃上げのための条件とは(37)

 大企業が継続的な賃金引上げと「人への投資」に向けて本腰を上げ始めた。昨年は3%を超える物価上昇と長年のデフレ経済に対する反省から、30年ぶりの歴史的な賃上げとなったが、今年も昨年実績を超える賃上げで「成長と分配の好循環」を実現し、デフレ脱却に勢いをつけようという社会的合意ができつつある。

 中小企業の経営者も、絶対的な人手不足に対応するため、経営課題として賃金のテコ入れが不可欠なことに異論はなかろう。ただしせっかく貴重な賃金原資を投入しても、組織・人材の活性化につながらなければそもそも投資の意味がないし、次年度以降の賃上げ余力の実現につなげることができなければ、経営の持続性に疑問符がつく。

 お金をかける以上、設備投資やシステム投資と同様、注意深く「人的資本」の潜在力を引き出し、「稼ぐ力」を高め続けなければ、成長も賃上げも持続しない。

 少し基本的な話になるが、企業が自社の賃金水準を決める際には、⑴物価と家計、⑵税・社会保険負担、⑶労働需給、⑷賃金相場、⑸労働生産性(収益力)などが重要な考慮要素となる。中でも賃金と利益の源泉である「付加価値」の大きさによって、個々の企業の賃金水準は大きく左右される。

 使用者が賃金を出して人を雇うのは、賃金その他に投じる費用以上の粗利益(付加価値)が見込まれる「仕事」があるからである。賃金を払ってその仕事をさせるほうが、お金を払って仕入れるよりも費用対効果が大きいという経営判断がある。

 直近2022年度の財務省・法人企業統計(全産業・全規模平均)をみると、従業員1人あたりの年間売上高は3662万円で、仕入・外注費等の原価を除いた1人当たり付加価値(労働生産性)は738万円、うち従業員給与・賞与・福利費などの人件費は434万円、残る営業純益(=営業利益-支払利息等)は130万円となっている。

 付加価値に対する賃金水準の高さは、従業員1人あたりの資本装備率や熟練・専門的労働者の比率、固有の労働市場などにより、業種によってかなり開きがある。ただしどの業種も、企業規模による労働生産性と収益力の差は歴然としており、1人あたり付加価値と人件費および営業純益は強い比例関係がある。

 この関係から、各業種の平均的な労働生産性と営業純益を前提とした人件費支払い能力がかなりの確率で推計できる。私たちの簡単な試算では、例えば年間人件費550万円の輸送用機器業種の場合、平均賃金を2.7%、8000円ベースアップするためには、1人当たり年間18万7200円、2.6%の付加価値増を実現する必要がある。

 これからは、このような生産性に裏づけされた持続的な賃上げと人材の確保が、企業存続の分かれ目となる。そのためには大胆な設備投資や成長分野へのシフト、新たな需要の創造、商品力による価格転嫁、少ない人員で成果をあげるDX・AIの活用など、生産性向上によって賃上げ原資を確保する経営努力を避けて通れない。

 さらに賃上げの効果性を高めるために、見た目の金額だけでなく、実質的な「報酬価値」を向上させる取り組みも不可欠である。経営者も人事担当者も、事業の目的や仕事の与え方、評価・報酬制度、信頼関係などを通して仕事の満足や成長・貢献意欲を高め、企業価値向上につなげる「人的資本経営」を徹底する必要がある。

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