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賃金ー2ー

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賃金ー2ー

著者・米田徹氏のプロフィールはこちら

賢い会社の就業規則・人事規程作成のポイント(26)

Q

賃金規程には給与の改定時期についても記載がありますが、近年では昇給がほとんどない中小企業も多いのが実情のようです。

A

「昇給」に関する事項は就業規則の絶対的必要記載事項と決められています。ただ、法律条文にあるように「昇給」とだけ書くのは問題があると思います。

 むしろ、「給与改定」として時期(例えば毎年4月等)を記すようにするのがよいでしょう。そして昇給どころか会社業績や人事考課結果によっては降給の可能性も あるように規定にしておきましょう。

規定例:(給与改定)
第○条 給与改定(昇給・降給)は会社の業績等も勘案して原則として毎年4月に行う。
給与改定は従業員の勤務成績等を人事考課により査定し、その結果をもって基本給について行う。

Q

昇給や降給という場合、各人ごとの「基本給」に対して行うわけですね。それでは次に「手当」について伺います。例えば、「家族手当」「住宅手当」「通勤手当」などは割増賃金の算定基礎額から除外できると聞いていますがその点いかがでしょうか?

A

まず、基本的な知識として割増賃金の計算の基礎から除外しても良いとされるのは次の手当と決められています。(労基法37条4項)

・家族手当
・通勤手当
・別居手当
・子女教育手当
・住宅手当
・臨時に支払われた賃金(賞与など)
・1箇月を超える期間ごとに支払われる賃金

 労働とは直接関係ない個人的事情等によって支払われる手当は算定基礎に入れることは必ずしも妥当とは言えず、割増賃金の計算基礎額から除外して良いことになっています。

 ただ、ここで少し注意が必要になるのは、例えば会社によっては「住宅手当」と称していても実質は全員一律の額で支払っているような場合も多く、そのような場合は算定基礎額から除外することはできません。
 割増賃金の算定基礎から除外できる「住宅手当」とするためには、各社員ごとに住宅に要する費用に応じて支給額が異なるような支払い形態が求められます。

 例えば、実際にかかる家賃の月額に応じて住宅手当の額が決められているといった場合です。
 「家族手当」や「通勤手当」についても考え方は同じで、例えば「家族手当」の場合、扶養家族の数に応じて支給額が決められていれば問題ありませんが、扶養家族数に無関係に支払われているのであれば算定基礎額から除外することは認められません。

Q

なるほど、名称だけでなく実態が問われるわけですね。ところで、通勤手当は通勤定期代相当額を毎月支払っていますが、本来、通勤にかかる費用は会社が必ず支払うべきものなのでしょうか?

A

「時間外勤務手当」のように必ず支払わなければならない手当もありますが、多くの手当は法的に会社に支払い義務があるわけではなく、使用者が任意に決めてよいのです。

 通勤に関する費用は原則的には労働者が負担すべきもので、会社に通勤にかかる費用の支払い義務はありません。あくまで会社の裁量の範囲内ということになります。

 そうはいってもほとんどの会社では、上限額を設けているケースはあるにせよ、通勤手当を支払っていると思います。その場合は通勤手当も労務提供の対価としての賃金として扱われることになりますので就業規則にはきちんと支払う条件等を明記してください。

Q

それでは法的にも支払いが必要になると考えられるいわゆる「残業手当」、「休日勤務手当」についてはどのように規定すればよいか説明してください。

A

時間外や休日に勤務した場合に支払われる「時間外勤務手当」や「休日勤務手当」については、その計算方法等の記載が必要になります。この際、規定する上で注意が必要になるのは、「所定時間外」か「法定時間外」かの区別です。

 例えば一日の所定労働時間が7時間の会社の場合で考えてみましょう。
 「所定時間外」と「法定時間外」を区別しない場合は、所定労働時間の7時間を超えた労働から2割5分の割増賃金を支払う必要が生じると思います。

 一方、会社としては法定の1日8時間を超えた労働に対してのみ割増賃金を支払いたい場合には「7時間から8時間までの労働については基礎賃金分のみ」、「8時間を超えた場合にのみ基礎賃金に加え、2割5分増しの賃金を支払う」旨を明記すれば法定以上の割増賃金の支払いを抑制することができます。

 また、時間外労働については、次の規定例のように「実働」時間で計算することを明記すると良いでしょう。

規定例:(時間外勤務手当)
第○条 1日実働8時間又は1週実働40時間を超えて労働した場合には、時間外勤務手当を支給する。

 単に「終業時刻を超えて勤務した場合」と記載していると、遅刻等により実労働時間が短い日でも、終業時刻以降の労働は割増賃金の支払い対象になってしまいます。

Q

なるほど。会社としては法定以上に支払う必要はないとするとこのような細かな点にも注意が必要ですね。それでは3割5分増しの賃金支払いが必要な休日勤務はどう規定すればよいのでしょうか?

A

休日勤務についても、「法定休日」なのか「所定休日」(= 法定休日を上回る部分の休日)なのかが重要で、それによって給与の支払いに区別をつけたい場合にはその旨を賃金規程で明確に記載する必要があるのです。

 以前にも説明したように、法定休日というのは毎週1日(または4週に4日)与えなければならない休日ですが、その法定休日に労働させた場合には3割5分の割増賃金の支払いが必要になります。

 しかし、毎週一回、法定休日の休みが取れていればそれ以外の休日は所定休日労働になりますから、3割5分増しの賃金支払いは不要です。もちろん法定時間外労働(1日8時間又は週40時間超)に該当する場合にはその分(2割5分増し)の賃金支払いは必要になります。

Q

なるほど、よくわかりました。最後に深夜勤務手当ですが、これは時給分に加えて5割増しで支払うと考えていますが正しいでしょうか?

A

深夜勤務手当は労基法の規定どおり、深夜時間帯(10時から明け方5時)の労働に対する割増賃金ですね。

 これは5割増しではなく、基礎賃金(時給)の2割5分増しが必要と考えてください。
 そして深夜に労働した時間が1日8時間を超えるなど法定時間外労働(2割5分増し)として行われた場合は、その賃金との合算で「基礎賃金額×(1.25+0.25(深夜)=1.5)」となるわけであって、深夜勤務が直ちに5割増しというわけではないのです。

 例えば、日中は働かず深夜勤務だけであれば法律上は2割5分増しの賃金を支払えばよいことになります。

 次回も、「賃金」についての規定を検討しましょう。

今回のポイント

  • 「昇給」に関する事項は必ず記載が必要だが、「給与改定(昇給・降給)」として降給の可能性も含めて規定する。
  • 「通勤手当」「家族手当」「住宅手当」など割増賃金の算定基礎から除外できる賃金が労基法で決められている(制限列挙)。実際に除外できるか否かは支払いの実態にも考慮が必要。
  • 時間外労働に対して支払われる賃金の計算では「法定労働時間内」か「法定労働時間外」かを区別する場合にはその旨を明確に規定する。
  • 同様に休日労働に対して支払われる賃金の計算では「法定休日」か「所定休日」かを区別する場合にはその旨を明確に規定する。
  • 深夜勤務手当は算定基礎賃金(時給)の2割5分の割増しの支払が必要になる。

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