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賃金ー1ー

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賃金ー1ー

著者・米田徹氏のプロフィールはこちら

賢い会社の就業規則・人事規程作成のポイント(25)

Q

今回からは、社員にとっても会社にとっても大変重要な賃金に関する規定について教えてください。

A

賃金は労働時間と並んで重要な労働条件です。特に社員にとっては最大の関心事と言えます。

 労基法11条では、「賃金とは、賃金、給料、手当、賞与その他名称のいかんを問わず、労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのものをいう」と定義されています。

 そして、労基法89条2項で「賃金(臨時の賃金等を除く)の決定、計算及び支払いの方法、賃金の締切り及び支払いの時期並びに昇給に関する事項」は就業規則の絶対的必要記載事項、また同条3号の2(退職手当)、同4号(臨時の賃金、すなわち賞与等)も相対的必要記載事項(定める場合には必ず記載が必要)になっています。

 賃金(又は給与)に関する事項は項目が多岐に渡りますので就業規則の本則から切り離して別の規程として記載されるのが一般的です。

例:就業規則の委任規定
第○条 従業員の賃金に関する事項は、別に定める賃金規程による。

 このように別規程にした場合でも就業規則の一部であることには変わりはなく、したがって規程を作成し行政機関に届出る義務があるわけです。
 就業規則としての効力や労働者への周知義務についても同様です。

Q

わかりました。それで具体的に賃金についてはどのように規定したらよいのでしょうか?確か労基法には「賃金支払いに関する原則」があったと思いましたが。

A

労基法24条(賃金の支払)では、賃金について1)通貨払い、2)直接払い、3)全額払い、4)毎月1回以上、5)一定の期日払い、といういわゆる「賃金支払いの5原則」が定められています。

 賃金規程で賃金支払いについての規定を行う際には、これらに関する法律を認識して自社の実態に合わせて定めることが必要です。

 まず賃金の決定ですが、賃金の構成(賃金体系)がどうなっているのかを定めることになります。
 通常、賃金は基準内賃金としての「基本給」「諸手当(住宅手当、家族手当、通勤手当、役職手当等)」また基準外賃金としての「時間外手当、休日出勤手当、深夜勤務手等」があり、また特別給与としての「賞与(ボーナス)等」があります。

Q

まず、どんな種類の賃金があるのか賃金体系を記述するということですね。
そして、それぞれの賃金項目の決定方法を規定することになると思います。
家族手当や通勤手当は比較的明確に規定できると思いますが、「基本給」の決定方法については、いろいろな方法があると思います。
賃金表等も含めどこまで具体的に記載することが必要なのかがよくわかりません。

A

基本給は賃金の大部分を占めるもので、その決定方法は最も重要でまた難しい部分になります。

 社員の年齢や勤続を加味した属人的要素(年齢給等)、また職務遂行能力や職務の重要度・困難度を加味した職能給・職務給など、会社毎に様々でしょう。

 「賃金規程」では、できるだけ詳細な方法で記載することが望ましいとは思いますが、決定方法の詳細は会社の人事制度・人事考課制度などとも深く関連することになるのでなかなか難しい問題といえます。

 規定する際には、どのような要素(年齢、職務能力等々)に基づいて決定するかの記載は必要ですが、詳細な決定方法や賃金表等は別途内規を作成する等でもかまいません。

例:(基本給の決定)
第○条 従業員の基本給は、次の点等を考慮して各人別に定める。
1.職務の重要度・困難度
2.年齢・経験・能力
3.勤務成績・勤務態度

Q

次に、賃金の締切り日と支払日を定める必要がありますね?

A

「賃金の締切り日」とは、毎月1回賃金を支払うとして、毎月、月の何日から何日までの労働に対して賃金を支払うのか、その計算の対象となる期間の締日を指すことになります。

(賃金計算期間及び支払日)
第○条 賃金の計算期間は前月26日より当月25日までとする。賃金は毎月25日を締切日とし、これを同月末日に支払う(支払い日が休日にあたるときはその前日に支払う)。

 賃金の支払い日は、「毎月○日」とか「月の末日」というように支払日が特定され、その期日が周期的に到来するように定めなければなりません。例えば、「毎月第4○曜日」というような定め方は、毎月の暦によって支払日が月7日の範囲で変動し労働者の生活の安定上問題があるので許されません。

 それから退職者への賃金支払いにも注意しましょう。通常、退職後の最初に到来する賃金締切日に支払うこと等で差し支えありませんが、退職者(権利者)から請求があった場合は、退職(または死亡)から7日以内に賃金を支払う必要があると労基法で定められています。

 ただし、退職金については、予め退職金規程で支払い日を定めている場合(例えば、「退職後1ヶ月以内」等)には、その支払い時期に支払うことで問題はありません。

Q

なるほど、月例給与と退職金では支払い期限に違いがあるわけですね。
 さて毎月の給与の支払いですが口座振込みが一般的だと思いますが、「賃金5原則」にある「通貨払い」という点をどのように考えればよいのでしょうか?

A

その点、疑問に感じる方もいらっしゃると思います。

 法的には賃金は通貨でその全額を労働者に直接支払うのが原則になりますが、支払い方法については労基法の施行規則で「労働者の同意を得た場合」には「その労働者の預金口座に振り込むことができる」と例外規定が盛り込まれています。したがって、就業規則では次のように規定しておけばよいでしょう。

例:給与の支払い方法
第○条 給与は、全額通貨で直接従業員に支払う。ただし、本人の同意を得た場合、銀行振り込みにて各自の指定する本人の預金口座に振り込むことができる。

 なお、振り込まれた賃金は所定の賃金支払日の午前10時頃までに払い出しができるようになっていること、取扱い金融機関を複数とするなど従業員の便宜に十分配慮することが望ましいといった行政の通達がでています。

 したがって会社が給与の振込金融機関を一つに限定するというようなやり方は問題があることになりますね。
 また会社が振込手数料を徴収するというような行為をしてはならないのは当然で、これは立派な労基法違反(「賃金の全額払いの原則」違反)となります。

 次回も、「賃金」についての規定を検討しましょう。

今回のポイント

  • 「賃金規程」には、賃金の決定、計算及び支払いの方法、賃金の締切り及び支払の時期並びに昇給に関する事項を必ず定めなければならない。(絶対的必要記載事項)
  • 退職手当や臨時の賃金(賞与等)がある場合は、「賃金規程」等にその旨を必ず定めなければならない(相対的必要記載事項)。
  • 賃金規程では、労基法の「賃金支払いの5原則」を遵守して各社の実態に即して規定する。
  • 基本給はどのような要素(年齢、職務能力等々)に基づいて決定するかの記載は必要だが、個人毎の詳細な決定方法や賃金表等は別途内規等を作成することでもよい。
  • 賃金の「通貨払いの原則」では、従業員本人の同意を得て銀行口座振り込みにすることができる。

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