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その他の休暇ー1ー

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その他の休暇ー1ー

著者・米田徹氏のプロフィールはこちら

賢い会社の就業規則・人事規程作成のポイント(23)

Q

前回まで3回にわたって年次有給休暇を説明していただきました。これは法律で決められた休暇ですが、年休以外に法律で決められた休暇にはどんなものがあるのでしょうか?

A

はい、それでは会社が法に基づいて必ず定めなければならない休暇について説明しましょう。まず、労働基準法ですが以下の休暇・休業を定めています。

・公民権の行使(労基法7条)
・産前産後休業(同65条)
・育児時間(同67条)
・生理休暇(同68条)
更に、育児介護休業法等で 以下の休暇・休業を定めています。
・育児休業(育児介護休業法5条以下)
・介護休業(同11条以下)
・子の看護休暇(同16条の2以下)
・介護休暇(同16条の5以下)
・母性健康管理休暇(男女雇用機会均等法12、13条)

Q

なるほど、年休以外にも法律には結構たくさんの休暇・休業の定めがあるのですね。妊産婦とか育児・介護にからむものが多いですね。
それぞれ休暇期間の長さや休暇中の賃金の問題などが気になります。

A

確かに労基法では(年次有給休暇は別として)「公民権の行使」以外は妊産婦など女性の休暇になりますね。

 育児介護休業法の休暇・休業を含め、以上の法定休暇・休業は有給を保障していません。
 つまり年次有給休暇だけは例外的に有給保障がされますが、それ以外の法定休暇は「ノーワーク・ノーペイの原則」に従って無給と定める会社も多く、実際それで法的には問題はないのです。

 もちろんこれらの法定休暇を、法律よりもさらに期間を長く(多く)認めたり有給としたりするのは、企業の裁量で決めて良いので就業規則上どのように定めているのかを良くチェックしておく必要があるでしょう。

 なお、産前産後休業や育児休業のように健康保険や雇用保険から一定の保険給付がなされる場合もあり、そのような休業期間中に給与が一定以上支払われると保険給付が減額調整されてしまうという問題もあります。

Q

それでは順に質問します。
まず労基法7条の公民権の行使ですが、社員が数年前から開始された裁判員裁判に選出されたような場合も含まれると考えてよいのでしょうか?

A

はい、労基法7条はつぎのようになっています。

(公民権行使の保障)
第七条 使用者は、労働者が労働時間中に、選挙権その他公民としての権利を行使し、又は公の職務を執行するために必要な時間を請求した場合においては、拒んではならない。
 但し、権利の行使又は公の職務の執行に妨げがない限り、請求された時刻を変更することができる。

 裁判員制度は平成21年5月21日から実施されていますが、原則として「正当な理由なく裁判所への出頭を拒むことはできず」、上記中の「公の職務」には裁判員制度への参加も含まれます。
 裁判員制度が導入された当初は、特別に裁判員休暇規程のようなものを作成する会社も多かったと思います。

 ただ、中小企業の場合などは、そのようなケースは比較的稀でしょうし、仮に裁判員裁判で休暇が必要な社員がでた場合は従前からある上記の公民権行使による休暇で扱えば問題ありません。

 賃金に関しては裁判員としての公の職務を執行している間は、会社に対して労務の提供をしているわけではありませんので有給にする必要はありません。

 裁判員の審理は数日程度で終わることが多いようです。その間裁判所からは日当が支払われますし、その社員に年休が残っていれば年休を利用することも考えられますね。

 ただ、審理が長期化するような場合は裁判所からの日当だけでは生活に支障をきたすおそれがあるかもしれません。
   そこで一定日数以上(たとえば5日以上)裁判員として休暇が必要な場合には通常の給与(または通常の給与から裁判所で支給される日当を差し引いた額)を保障してあげるような規定があれば社員さんには優しい扱いになりベターだと思います。

Q

なるほど、社員数が多い企業では十分起こりうる話ですから検討しておく方が良さそうですね。
さて次に女性の生理休暇の扱いについて聞きたいのですが、これは請求されたら必ず与える必要があるのでしょうか?

A

労基法では「使用者は、生理日の就業に著しく困難な女性が休暇を請求したときは、その者を生理日に就業させてはならない。」としています。

 ですから、請求があれば会社としてはこれを拒むことはできません。

 ただ、条文にもあるように単に生理日だから請求できるというわけでなく、あくまで「就業が著しく困難な場合」に与える必要があるというわけです。
 生理休暇の期間については生理期間、苦痛の程度、就労の難易は各人ごとに異なるので、日数を限定することはできません。

 また取得単位は必ずしも暦日である必要はなく、女性社員から半日または請求のあった時間について与えるようにすればよいということになります。

 賃金の扱いについては大手企業ではわかりませんが、中堅・中小企業では無給とする場合が多いのではないでしょうか。
 行政の通達でも支給してもしなくても差し支えないとしています。

Q

なるほど生理休暇といっても半日や時間単位で与えても差し支えないわけですね。
 賃金に関しては中には有給の会社もあって、その場合「生理日で就業が著しく困難」という点に疑義があるような社員の場合はどうすればよいのでしょうか?

A

医師の診断書のような厳格な証明を求めることは不適切なので、あくまでも本人の意思表示によるしかありません。

 あとは女性労働者が生理休暇の目的にしたがって正しく使用する信義則上の義務があるということだと思います。

 なお年休取得の出勤率の計算にあたっては、生理休暇の期間を出勤したとみなす必要は法律上ありませんが、当事者の合意で出勤したとみなしても結構です。

 また精皆勤手当があるような会社で生理休暇を取った場合、精皆勤手当を減額することは労基法違反とはいえませんが、好ましいことではないということになるでしょう。

 なお、賞与や昇給の査定などで極端に不利に扱うことは法の趣旨から許されないとした裁判例もあるので注意してください(日本シェーリング事件、最高裁 平成元年12月14日)。

 それでは、次回も、「その他の休暇」について検討しましょう。

今回のポイント

  • 年休以外にも労基法や育児介護休業法では必ず定めなければならない休暇・休業が法定されている。
  • 年休以外の休暇・休業における賃金は「ノーワーク・ノーペイの原則」が適用されるが、有給にしたり、また期間を法定以上に長く(多く)与えたりする等、会社の裁量で行うことができる。
  • 公民権行使の保障(労基法7条)は裁判員裁判への参加に必要な時間に対しても適用される。
  • 生理休暇は「生理日に就業が著しく困難な場合」に本人の請求があれば与えなければならない。

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