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年次有給休暇ー3ー

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年次有給休暇ー3ー

著者・米田徹氏のプロフィールはこちら

賢い会社の就業規則・人事規程作成のポイント(22)

Q

パートタイマーには有給休暇を与える必要がないと考えている社長さんや、与えなければならないことは知っていても実際に与えていない中小企業も多いようですね。
ところで、パートタイマーは正規社員より労働時間や労働日数が短い場合が多いのですが年休の付与日数はどうなるのでしょうか?

A

パートタイマーであっても労働者である限りは年休の権利は当然発生することになります。

 年休の付与日数ですが、週3日しか勤務しないパートに正社員と同じ日数の年休を付与するのは不合理なので労基法では、「年休の比例付与」という規定がされています。

 すなわち、週の所定労働時間が30時間未満で、かつ 週の所定労働日数が4日以下の労働者の年休の日数は、通常の社員の年休日数に対して比例付与することになります。

 例えば、週3日(又は1年間の所定労働日数が121日から168日)働くパートタイマーの場合は次の表のようになります。週の所定労働日が少ないパートタイマーがいる場合には、そのパートに適用される就業規則にはきちんと比例付与の規定を入れておくようにしてください。

Q

年休については、入社してからの勤続年数に応じて付与日数が決まるわけですが、当社では中途採用者も多く、特にパートタイマーなど含め入社時期がまちまちです。
その点、管理部の女性から社員の年休の管理が面倒という声を聞いたことがありますが、何か良い方法はありますか?

A

たしかに正社員やパートタイマーの数が多い場合など、入社年月日を起点に年休を個別管理するとなるとかなり面倒です。

 それで年次を単位に4月1日を基準日にして斉一的に取扱いたいという会社も多いと思います。管理の煩雑さを回避するためにこのような方法は認められます。

 ただし、その場合注意したいのは労基法で決められている勤続年数に応じた年休付与日数は最低基準ですから、これを下回るような決め方は法違反になってしまいます。
 基準日を決めて斉一的な管理をする場合には社員が不利にならないような取り扱いをする必要があります。

 例えば年度の途中で10月1日以前と以後に入社した2人の社員がいた場合、当年度の年休付与の扱いはどうすれば良いか考えてみましょう。例えば10月1日以降入社の正社員の場合は3月末時点で勤務期間は6ヶ月以下なので新年度の初日(4月1日)に勤続6ヶ月とみなして10日の年休を与えれば問題はありません。

 しかし、9月30日以前に入社した社員の場合には当年度中に勤続6ヶ月を経過するので新年度を待って年休を与えるような方法では労基法違反になってしまいます。

 そのため、4月1日から9月30日までに入社した正社員は初年度の10月1日に勤続6ヶ月を経過したとみなして、10日の年休を付与し、さらに翌新年度の4月1日には1年6ヶ月を経過したものとみなして11日の年休を付与するといった方法をとる必要がでてきます。

Q

その場合10月1日以降に入社した社員は翌年4月1日の新年度まで年休はゼロである一方で、例えば9月中に入社した社員は翌月の10月1日に10日、さらに翌年4月1日には11日の年休が取得できるわけですね。

A

入社日が1ヶ月違うだけで年休付与の待遇がこんなに違ってしまうのは不公平ともいえますが、斉一的管理をするためにはある程度やむを得ません。

 この他にも、基準日を決めて斉一的取扱いをする場合には種々の方法が考えられますが、入社初年度の年休付与をどのようにするのかをよく検討して決める必要があります。
 例えば、次のような方法は比較的シンプルで法律を上回っているので問題のない年休の付与規定といえます。

1 年次有給休暇は、4月1日を基準日とし、計算期間は当年4月1日より翌年3月31日までとする。
2 入社初年度については3ヶ月経過した場合に5日、更に3ヶ月経過した場合に5日の年次有給休暇を与える。
3 入社後最初に到来する4月1日には勤続1年6カ月とみなし、以降勤続年数に応じて次表(省略)のとおり付与する。

Q

なるほど、これなら法定以上に付与することになるので問題はないというわけですね。当社でもいろいろと検討してみたいと思います。
年休の取得については、会社実務の中で何かと問題が発生することが多いように思います。先日も、1ヶ月後に退職が決っている社員が業務の引継ぎも不十分なままで残りの就労日をすべて年休で休むと言ってきて、ちょっとした騒動になりました。

A

1ヶ月後に退職することが決まっている社員の場合は、退職予定日を超えて振り替えるべき日を指定するわけにはいきませんので、前々回に説明した会社の時季変更権を行使することはできません。

 このような問題を回避するためには日頃から社員の計画的な年休取得を進め、退職直前に多くの年休が残ることを防ぐことが大切です。また、退職者の業務の引継ぎに関しては、きちんと業務引継ぎの義務付けを就業規則に明記しておくことも有効だと考えます。

 また、退職時には未消化の年休を買い取って欲しいというような要望が退職者からでる場合もあると思います。

 原則として会社が年休を買い上げることは違法とされていますが、
1.法定日数を超える部分、又は2年の時効で消滅した日数
2.退職・解雇によって消滅する残日数
については買い上げることも可能とされています。

 この際の年休を買い上げる場合の単価については、特に法的な定めは無く労働者との話し合いの中で任意に決めることになります。

 なお、事前に年休の買上げを規定するようなことはできませんから就業規則で触れる話ではありません。

 年休は今回で終了、次回は「その他の休暇」について解説します。

今回のポイント

  • パートタイマーも労働者であって年休の権利は当然に発生する。
  • 週の所定労働時間が30時間未満で、かつ週の所定労働日数が4日以下の労働者の年休は比例付与の規定に従う。
  • 社員の年休について基準日を設けて斉一的に管理する場合には、法律の要件を下回らないように注意する。
  • 法定を上回る年休や退職時に未消化の年休を買い上げることは可能だが、就業規則で事前に買い上げを規定するようなことはできない。

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