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服務規律ー1ー

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服務規律ー1ー

著者・米田徹氏のプロフィールはこちら

賢い会社の就業規則・人事規程作成のポイント(13)

Q

たいていの就業規則では「服務規律」という章が設けられているようです。「服務規律」ではどのような内容を規定するのでしょうか?

A

「服務」とは「仕事に従事する」という意味です。一方、「規律」は「集団や組織の秩序を維持する決まり」ということですから、「服務規律」は社員(仕事に従事する者)が守るべき一般的な心得や遵守すべきルールを定めたものということになります。

 就業規則では服務規律を必ず定めなければならないわけではありませんが、会社としてこのような定めをする場合には、 社員全員が守るべき規則として記載する必要があり、その意味では就業規則の「相対的必要記載事項」ということになります。

 服務規律の定めは多種多様、多岐にわたることになり、網羅的に列挙されて記載されている就業規則が多いと思います。
 これらのルールは社員の業務態度に大きな影響を与えるものですから、抽象的な内容の文言は避け、できるだけわかりやすく、具体的かつ明確に規定することが必要です。

規定例 - (服務規律)
第×条 従業員は、職務上の責任を自覚し、誠実に職務を遂行するとともに、会社の指示命令に従い、職場の秩序の維持に努めなければならない。
(遵守事項)
1)勤務中は職務に専念し、みだりに勤務の場所を離れてはならない
2)許可なく職務以外の目的で会社の施設、物品等を試用してはならない
3)・・・・・・

Q

会社の秩序を維持するためのルールをできるだけ網羅するとなると内容も多岐にわたりますが、どのような内容を盛り込むべきか、もう少し具体的に説明してください。

A

一般的には、「1.就労に関するルール」「2.業務外の活動に関するルール」及び「3.会社施設利用に関するルール」等に分類して考えると良いと思います。

例えば、「1.就労に関するルール」としては、次のような内容が考えられます。
・職務に専念する義務
・会社の名誉や信用を守ること
・会社や取引先企業の秘密を守ること
・会社の風紀秩序を維持すること

また、「2.業務外の活動に関するルール」としては、以下のようなものがあるでしょう。
・私的な金品の収受の禁止
・兼業の禁止
・政治、宗教活動に対する規制

最後の「3.会社施設利用に関するルール」としては、例えば以下のような事項です。
・会社の物品を大切に扱う義務
・会社の施設、物品の私的利用の禁止

Q

上記中、「兼業の禁止」という規定はやはり必ず必要でしょうか?

A

労働契約では労働者は会社に対し誠実に労務を提供する義務を負っています。兼業を無制限に許すと、結果として長時間労働につながり労務提供がおろそかになる可能性が高まるでしょう。

 したがって、兼業は原則として禁止する旨の定めをするのが適切です(例:「許可なく他の会社等の業務に従事してはならない」)。
 もちろん、パート労働者などについては、禁止するのが適切とは言えない場合もあると思いますので、その場合は事前許可制にするような方法も良いでしょう。

Q

セクハラはどうでしょう?以前、当社で大きな問題になった社員がいます。

A

セクハラについては服務規律の章の中では特に重要だと思いますので目立つように単独条項にするなどして、ぜひ規定しておきましょう。

規定例 -(セクシュアルハラスメントの禁止)
第×条 相手方の望まない性的言動により、他の従業員に不利益や不快感を与えたり、就業環境を悪くすると判断されるようなことを行ってはならない。

 セクハラは男女雇用機会均等法によって雇用管理上必要な措置を講ずることが事業主に義務付けられています。
 例えば、「相談窓口の設置や相談に対する適切な対応」などです。

 最近では、パワーハラスメント(職場の上司など権限を持つものが、立場の弱い部下などの人格や尊厳を侵害する言動を行い、その人や周囲の人に身体的・精神的な苦痛を与え、その就業環境を悪化させる行為)も大きな問題になっているので、併せて禁止規定を設けると良いでしょう。

Q

私の会社では、顧客情報の管理や個人情報保護は特に重要と考えているので、別途「顧客情報保護管理規程」を作成し、社員にも説明し遵守を徹底しています。

A

服務に関する基本的な考え方は、業種や業態によっても大きく変ってくるでしょうね。

 特にその企業が重要と考えた服務規律については、就業規則の中で目立つように単独の条項として独立して記載したり、就業規則への記載と併せて、ルールブックや別規程にして詳細を定めるのが良いでしょう。

 例えば、「秘密保持規程」「個人情報保護管理規程」「セクシュアルハラスメント防止規程」また「インターネット・電子メール取扱い規程」など様々な規程が考えられます。

Q

ところで、服務規律で記載する内容は懲戒規定にも類似の内容がある場合が多いと思います。服務規律に定めた内容と懲戒事由とはどのような関係にあるのでしょうか?

A

おっしゃるように服務規律で記載された事項と懲戒事由に書かれる内容は類似している場合も多いと思います。

 ですから、特に「服務規律」の章は設けずに、懲戒規定やその関連の箇所にそのような条項を盛り込んだ就業規則もあると思います。

 考え方としては「服務規律」を定めた場合に守られる企業秩序というのは、懲戒規定があることによってその実効性が担保されるということです。
 ですから服務規律に違反があったから直ちに懲戒処分ができるとはいえないので、服務規律に関する規定と懲戒に関する規定を明確に関連付けておくことが重要になります。

規定例 -(懲戒の事由)
第×条 従業員が次のいずれかに該当する場合、・・・・・懲戒処分の対象とする。
・・・・・・
・第△条の(服務規律の遵守事項)に違反したとき

 日本の法律では、「罪刑法定主義(刑が科せられるためには、あらかじめ法律によって定められることを要する)」の原則という考え方があるので、就業規則においても、懲戒処分を行なうためには、その行為が明確に規定されていなければならないと考えるべきなのです。

 次回も引続き、「服務規律」について検討しましょう。

今回のポイント

  • 「服務規律」は社員が守るべき一般的な心得や遵守すべきルールを定めたもので就業規則の相対的必要記載事項になる。
  • 服務規律で規定される遵守事項は、「1.就労に関するルール」「2.業務外の活動に関するルール」及び「3.会社施設利用に関するルール項」等に分類できる。
  • 「兼業の禁止」「セクシュアルハラスメントの禁止」等は重要な服務規律の遵守事項になる。
  • 企業が特に重要と考える服務規律については就業規則への記載と併せて、ルールブックや別規程にして詳細を定めるようにする。
  • 服務規律に規定した遵守事項に違反した場合には、懲戒処分の対象にすることを明記する。

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