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休職・復職ー3ー

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休職・復職ー3ー

著者・米田徹氏のプロフィールはこちら

賢い会社の就業規則・人事規程作成のポイント(12)

Q

私傷病の休職で一番問題になるのは精神疾患のケースだと思います。就業規則の見直しをする場合、どのような点に注意したら良いでしょうか?

A

精神疾患の場合に問題になるのは、休職・復職が繰り返される可能性が高いということです。昔の古い就業規則を見ると、私傷病休職は通常1回限りのもので病気が再発するということを想定していない場合が多いように感じます。

 ところが 最近増加している精神疾患の場合には復職の判断も難しいですし、診断書で治癒したと記載され会社もこれを根拠に復職させても、実際には治癒しておらず、勤務することによって再び以前の症状や類似の症状が出てしまう場合が多いのです。

 結果として、休職と復職を繰り返すことにもなりかねず、企業にとっては大きな負担になってしまうケースも多いのです。

Q

休職と復職の繰り返しにならないような規定が必要ですね。

A

はい。そのための規定の仕方としては、「休職期間の通算」という方法をとるのが妥当と思います。社員が一旦復職しその後○ヶ月を経過する前に再び同一又は類似の病気によって欠勤ないし通常の労務が提供できない事態になった場合は、再度、休職を命じるものとし、休職期間は以前の期間と通算することとします。

(規定例)
同一又は類似の事由による休職の中断期間が○ヶ月未満の場合は前後の休職期間を通算し、連続しているものとみなす。

 上記の規定例で「同一事由」だけでなく「類似の事由」を加えているのは、精神疾患の場合には、様々な病名があり、診断する医師によっても診断の判断が異なる場合も考えられるからです。
 実質的に同一の原因であれば、このような規定内容で休職期間を通算することができるので、いつまでも休職と復職を繰り返すといったことは防げることになります。

Q

休職期間を通算する場合、休職と休職の間が何ヶ月程度以内とすればいいでしょうか?

A

これは、精神疾患の病気で休職後に復職してから、どのくらいの期間、平常の労務が続けられれば再発のリスクが少なくなるかということと関連します。

 通常は復職後6ヶ月程度の期間を見れば再発するか否かが判断できると考えられますので、6ヶ月と定めるのが最も適切と思います。

 復職後、この期間が過ぎれば、以前の休職期間を一旦リセットして通算の対象からはずすわけです。このリセットに要する期間が半年では少し長いので2~3ヶ月程度としている規定も見かけますが、個人的には少し短いように感じます。

 なお、例えば復帰後6ヶ月以内に病気が再発して再び休職に入る際には以前の休職期間を通算するわけですが、通算後の残存期間がごく僅かしか残っていない場合も想定されます。

 小さな企業では、その残存期間がなくなった時点で自然退職を適用することも可能と思いますが、ある程度大きな企業の場合には「残存期間が3ヶ月未満しかない場合には休職期間は3ヶ月(最低保障)とする」といった措置も実務上は必要になると思います。

Q

復職についての規定はどのようにすればよいのでしょうか?

A

復職の判断については、前回述べたように本人が主治医の診断書を出すなどして治癒の事実を証明し、それに疑義がある場合には、会社が指定医などへ受診させることができるように規定しておく必要があります。

 そして、復職についても休職と同様に会社が休職事由の消滅を認めたうえで復職を命ずるというのが手続きの流れになります。
 職場復帰にあたっては本人の従前の職場に復帰させるのが原則ですが、復帰時の人員配置状況や当人の労働能力などを勘案して、会社側の判断で決定します。

(規定例―復帰)
会社は、休職期間の満了日以前にその事由が消滅したものと認めた場合は、復職を命ずる。復帰後の職務については、会社がそのつど定める。

Q

休職・復職規定についてはいろいろと見直しをした方がよいケースが多そうですね。休職規定を変更する場合、就業規則の不利益変更の問題が気になりますが、その点はどのように考えたらよいでしょうか?

A

確かに、今までは繰り返し休職できたものができないように変更されたり、休職可能期間が短縮される場合、就業規則の不利益変更の問題が発生する可能性があるでしょう。

 しかし、休職制度の場合、全社員一律に明日から労働時間が1時間延長になったり退職金が減額になるのとは異なりますので、通常の健康な社員が受ける不利益の程度がそれほど大きいとはいえないと考えます。

 精神疾患が急増していて度々休職される社員が増えては企業としての競争力維持も困難になる情勢であることから、休職規定変更の必要性・合理性は増しています。

 また、同種の企業規模の会社と比べて不相応に長期の休職期間が設定されている場合は変更(期間短縮)の合理性は認められやすいと考えます。

 もちろん、現在長期療養中の社員がいる場合などは、新規定の適用は猶予するなどの一定の猶予措置は必要でしょう。
 そういった配慮を前提としつつ労使でよく話し合いをすれば、休職制度の見直しや変更を行なうことは十分可能だと考えます。

 「休職・復職」はこれで終了します。次回からは、「服務規律」について考えてみましょう。

今回のポイント

  • 休職規定の見直しの際、精神疾患などでは休職・復職が繰り返されることを想定して検討する。
  • 復職後○ヶ月(6ヶ月程度が望ましい)以内に同一又は類似の病気で再度休職した場合は、前後の休職期間を通算する。
    復職後は従前の職場に復帰するのが原則だが、会社の判断で配置変更できることを明記する。
  • 休職規定を変更する場合には、就業規則の不利益変更の問題が起こりえる。休職中の社員への猶予措置などを配慮しつつ、労使でよく話し合いをした上で規定を変更する。

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