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休職・復職ー1ー

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休職・復職ー1ー

著者・米田徹氏のプロフィールはこちら

賢い会社の就業規則・人事規程作成のポイント(10)

Q

今回は、「休職・復職」について教えてください。まず、休職制度とはどのようなものなのでしょうか。

A

休職とは、社員が職務に従事することが不能であるとか適当でない場合に、社員の身分を保有しながら、一定期間労働義務を免除あるいは労働を禁止する制度です。

 休職の事由としては、1)私傷病、2)私事、3)逮捕・起訴、4)出向、等が考えられます。
 休職といって最初に頭に浮ぶのは、 1)私傷病休職だと思います。業務外の傷病により長期間にわたり業務に従事することが困難になった場合などで、休職のほとんどはこのケースを指す事になりますので、後ほど詳しく説明します。

 就業規則で2)の私事休職という規定を見かけますが具体的な内容が限定されていない場合が多く、そのような規定を置くと社員から相当期間の休職を権利として主張されかねないので、あまり適切とはいえません。
 親の介護等やむを得ない事情がある場合が考えられますが、休職事由の最後に「その他業務上の必要性又は特別の事情があって休職させることを会社が認めた場合」といった包括規定にしておけばよいので、あいまいな形で「私事」による休職を規定するのは避けるべきでしょう。

 3)は逮捕、拘留又は起訴され業務につくことができないケースでの休職です。
 ただ中小企業において社員が逮捕され長期間拘留されるために休職が必要になる事態は比較的稀でしょうから、このような定めは不用と考えます。
 そもそも起訴されたという事実だけで休職を命じる規定は不適当とされた裁判例がありますし、また「逮捕、拘留又は起訴」を休職事由に加えた場合には、本来なら懲戒処分等を理由に解雇したくても判決が確定するまでは困難になる可能性も生じます。

 4)は前回説明した(在籍)出向のケースです。これは本人ではなく会社側の理由による休職になります。
 休職(出向)中の身分や復帰後の扱いについては出向規程を設けるなどして社員が不利にならないように留意する必要があります。

Q

なるほど、出向のように会社側の都合による休職もあるわけですね。ただ当社でこれまであった休職事例はすべて社員個人の病気に関わる休職でした。長期間病気で勤務不能になった場合、会社は必ず休職制度を設けて社員の休職を認めなければならないものなのでしょうか?

A

休職は私傷病を事由にする場合が最も一般的です。社員が病気やけがで一時的に働けなくなった場合に、一定期間休職させることによって健康を取り戻し、再び就労するチャンスを与えることを目的としています。

 これは一定(休職)期間、解雇を猶予する制度ともいえるわけで、一定期間経過しても復帰が困難であれば、はじめて退職ということになるわけです。

 しかし、法律上は休職についての規定は特にありません。
 休職制度はあくまで会社が任意恩恵的に与えるものでそのような制度を設ける法的義務はないのです。
 それでも、多くの会社の就業規則では休職規定があるのが普通ですし、制度として実施されていれば労働契約上の労働条件であって、社員の権利にもなっているわけです。

 適用される社員の範囲ですが、休職制度は長期雇用の正規社員に対する恩恵的な制度と考えられるので、試用期間中の社員や長期雇用を前提としないパートタイマー等は就業規則で適用除外にして休職を認めないように規定しておくことが必要でしょう。

Q

休職が適用される社員を明確にする必要があるわけですね。その他「休職」について就業規則に定めをする場合、どのような条項が必要になるのでしょうか。

A

「休職」の条項としては一般的に、1)休職事由、2)休職期間、3)休職期間中の扱い、4)復職、5)休職期間満了時の取扱いなどを定めることになります。

 1)の休職事由については、先程述べたように「私傷病休職」「出向休職」といったものを具体的にあげ、後は「その他会社が特に認めたとき」といった包括規定を加えておけばよいでしょう。

 休職は通常、会社が命令することによって開始されます。
 社員との合意が必要な規定になっていたり、社員の権利であるかのような規定は避けるべきで、「会社は、従業員が次の事由に該当するときは、休職を命ずることがある。」と、はっきり会社の休職命令権を定めるようにしましょう。

Q

「休職」の開始なのですが、当社の就業規則では「私傷病による欠勤が3ヶ月を超え、なお療養を継続する必要があるため勤務できない場合」に休職が命じられて休職期間が開始することになっています。
最初の3ヶ月間が欠勤で、それを過ぎてからはじめて休職期間が開始することになるということになります。

A

例えば、休職期間が1年の場合、貴社の休職規定では、まず3ヶ月間は通常の欠勤扱いになり、そしてその時点ではじめて休職が命じられることになるので、当初の欠勤から1年3ヶ月を経過した時点で職場に復帰不能なら退職になります。

 このように欠勤が一定期間(1~3ヶ月程度)続いたことを休職発令の条件として定めているケースをよく見かけますが、少し問題があります。
 例えば、最近多い精神疾患の場合には毎日のように遅刻をしてきたり、週に2~3日欠勤するというように連続して欠勤するとは限らず、その場合いつまでたっても休職を命じることができないことになってしまいます。
 欠勤が継続していなくても不完全な労務提供しかできない場合には会社の裁量権で休職が命じられるような規定とすべきでしょう。

(規定例)
精神又は身体上の疾患により労務提供が不完全で相当期間の療養を要すると認められるときは、会社は休職を命じることがある。

 次回も引続き、「休職・復職」について検討しましょう。

今回のポイント

  • 休職は、社員が職務に従事できない場合に、社員の身分を保有しながら一定期間労働義務を免除(又は禁止)する制度
  • 休職の事由には、1)私傷病、2)私事、3)逮捕・起訴、4)出向、等が考えられるが、2)私事や3)逮捕・起訴は不要で、「その他、会社が特に認めた場合」といった包括規定を置けばよい
  • 休職は私傷病を理由にする場合が最も一般的。休職は法律での定めはない任意恩恵的な制度だが、就業規則で定められていれば労働条件の一部で社員の権利になる
  • 試用期間中の社員やパートタイマーは休職制度の適用除外にする
  • 欠勤が一定期間続かなくても、労務提供が不完全な場合には会社が休職を命じられる規定を置く

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