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著者・米田徹氏のプロフィールはこちら

賢い会社の就業規則・人事規程作成のポイント(9)

Q

前回の人事異動の続きで、今回は社員を「出向」させる場合に就業規則で定めておく規定や注意事項などを教えてください。

A

前回説明した配転や転勤は同じ企業の中での職務、地位、勤務場所の変更でしたが、「出向」は企業間を異動することをいいます。

 通常、「出向」という場合には、元の企業に在籍のまま別の企業(出向先)との間で新たな労働契約関係に入ることをいい、これを特に 「在籍出向」と呼びます。出向元・出向先の双方に雇用関係が生じるので、派遣元だけに雇用関係が生じる「労働者派遣」とはその点が異なります。

 「在籍出向」では、労働時間、休暇等の労働条件は出向先の条件(出向先の就業規則等)に従いますし、労務遂行上の指揮命令権も出向先がもつことになります。
 しかし、就業規則のうち労務提供を前提としない部分(例えば定年の定めや身分等)は依然として出向元の就業規則の適用を受け続けることになります。

 給与の支払については、出向先の企業が基本的な給与を支払い、出向元における給与との差額については出向元が補填する場合と、出向元企業が依然として支払いを続け、出向先企業がそのうちの分担分を出向元企業へ支払うといった方法をとるのが一般的です。
 こういった条件については出向元と出向先との取決め(企業間の契約)ということになります。

 いずれにせよ、出向を命じられた社員は出向先企業との雇用関係に入ることになり社内異動とは違いますから、出向を命じる場合には就業規則の定め(定めがない場合は「個別の同意」)が必要ですし、その上で、出向期間、出向中の賃金などの労働条件について、本人の納得を得るように配慮することが肝要です。

例:出向の規定
第○条 会社は、業務上必要がある場合は、従業員を在籍のまま他の会社へ出向させることがある。

Q

出向者は出向元と出向先の二つの就業規則が適用されるということですと、少々複雑ですね。その点で不利益が発生するような場合はどのように考えれば良いのでしょうか?

A

原則として、出向期間中の勤務時間、休日、また休暇など労務提供に関する労働条件は出向先の就業規則が適用されます。その結果、出向社員に不利益が発生する場合には、出向元の使用者はできるだけ不利益解消に努めるべきでしょう。

 出向中の労働者は出向元企業では労務の提供が停止されますから「休職」扱いになっている場合もあると思います。
 「休職」の場合であっても、定年や解雇などの身分に関する事項については出向元の労働条件(就業規則)が適用される必要があるでしょうし、例えば将来の退職金の支払については、出向中の期間も通算して不利益がないような配慮(就業規則で規定)が重要になると考えられます。

 出向が多くトラブルも懸念される企業の場合には「出向規程」などを設け、出向における労働条件を定めておくと良いでしょう。
 その際、出向期間、出向期間中の社員の地位、処遇などについて規定し、「労働条件が低下しないよう必要な措置を講ずる」旨の規定を置くことも考えられます。

 出向の目的は、従業員の能力開発・キャリア形成、雇用調整、中高年齢者の処遇など様々考えられますが、いずれにしても会社として権利の濫用にならないように配慮する必要があります。

 平成19年制定の労働契約法では、「使用者が労働者に出向を命ずることができる場合において、当該出向の命令が、その必要性、対象労働者の選定に係る事情その他の事情に照らして、その権利を濫用したものと認められる場合には、当該命令は、無効とする。(14条)」と明文化されているので十分な配慮を行なってください。

Q

それでは、転籍出向についてはどのように考えれば良いのでしょうか?

A

直前で引用した労働契約法における「出向」とは、「在籍出向」を指しています。

 在籍出向の場合には、出向元と労働者との労働契約関係が終了するわけではないので、就業規則に前述したような「出向させることがある」旨の規定があって、出向の内容や条件が著しく不利益であったり、将来不利益を招くことが明白な場合でなければ、出向について労働者との個別合意は必要とされないと考えて良いと思います。

 しかし、「転籍」の場合には、出向元企業との雇用関係は終了し一旦退職した後、転籍先との新たな雇用関係に移行するわけですから、必ず事前に当該労働者の同意が必要とされています。

 次回は、「休職」について解説します。

今回のポイント

  • 「(在籍)出向」とは元の企業に在籍のまま、別の企業(出向先)との間で新たな労働契約関係に入ることをいう
  • 「出向」の場合、労働時間、休暇等の労働条件は出向先の就業規則が適用され、労務提供を前提としない部分(例えば定年の定めや身分等)は出向元の就業規則が適用される
  • 出向を命じる場合があることを就業規則に定め、出向中の労働条件が低下しないように十分配慮する
  • 出向は本人にとって著しく不利益等がなければ、労働者の個別合意は不要だが、権利の濫用が認められる場合、出向命令は無効になる(労契法16条)
  • 「転籍(出向)」の場合には、必ず、事前に当該労働者の同意が必要

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