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人事異動

著者・米田徹氏のプロフィールはこちら

賢い会社の就業規則・人事規程作成のポイント(8)

Q

今回は人事異動について就業規則でどのように扱ったら良いのかについて質問します。まず、人事異動という場合の言葉の意味を教えてください。

A

人事異動は企業が社員の効率的な配置を考慮して行われるものです。社員が10人程度の会社と何万人もいる会社では、自ずとその意味合いも変わってくるでしょうが、本稿では数十人から数百人規模の会社を想定して、就業規則ではどんな規定にすればよいかを考えてみましょう。

まず、人事異動といった場合には、大きく「配置転換」と「出向」が考えられます。
 「配置転換」すなわち「配転」は、 同じ企業内の異動で職種・職務内容または勤務場所が変わることをいいます。勤務場所が変わる場合は特に「転勤」という言葉が一般的ですね。
 「出向」については、企業をまたがる異動を伴い「在籍出向」と「移籍出向」がありますが、出向について詳しくは次回検討しましょう。

Q

それで人事異動についてですが、当社の規定では次のようになっています。これで特に問題はないでしょうか?

第×条(人事異動)
会社は、業務上必要がある場合は、従業員の就業する場所又は従事する業務の変更を命ずることがある。

A

「配転」というのは本人にとっては重要な問題ですし、労働条件(業務内容・就業場所等)の変更になるので一定の配慮が必要になるのは当然です。会社が社員に配転命令をだせるように、就業規則に上記のような規定を置いておくことが重要です。

 そしてこのような就業規則の定めがあって、入社時にも就業規則が周知されているのであれば、原則的には本人の個別同意がなくても会社が配転命令を出すことは可能と考えられます。

 会社は少なくとも正社員には長期の雇用保障をした上で採用しています。その見返りとして職種や勤務地を特定せずに採用し、経営の柔軟性と人材活用の活性化を目的に配転を行うことができるというのが一般的な考え方だと思います。

Q

そうですか、それで少し安心しました。ただ、配転が認められない場合もあると思いますがいかがでしょうか?

A

配転が認められない場合というのは、1)業務上の必要がない場合、また、2)必要性はあっても、その命令が他の不当な動機や目的を伴っている場合が考えられます。

 例えば退職を迫るために故意に本人が望まない業務に追いやるような行為は「不当な動機や目的」となるので認められません。

 さらに、3)労働者に対し「通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせる場合」も、権利の濫用として無効とされます。
 いろいろなケースが考えられますが、例えば両親の介護が必要な社員で、本人が転勤等してしまうとその家庭の生活を維持することが困難になってしまうような場合は、著しい不利益と判断され、転勤命令が無効となりかねないので会社としても十分配慮しなければなりません。

 会社の配転命令は以上のような場合を除き原則可能と思われますが、配転は本人としてみれば、影響が大きい場合も多いので十分な趣旨説明をした上で、気持ちよく新たな仕事に取り組める環境を作ってあげるべきでしょう。

Q

そうですね。ところで、社員によっては職種やエリアが限定されて雇用されているような場合があると思います。一定の職種や一定のエリアの中での勤務を約束している場合、配転させることは難しいのではありませんか?

A

それはおっしゃるとおりですね。個別の労働契約で職種や勤務地を限定して採用するような場合は、たとえ就業規則に「配転(転勤)を命ずることがある。」と書かれていても、個別の契約が優先されます。

 業務の都合でどうしても配転が必要になる場合には本人とよく話をした上で同意があれば可能でしょうが、そうでなければ職種を変更したり転勤させることは困難になるでしょう。
 そんなことにならないためにも、新入社員の採用時に職種の変更や転勤がありえるのかをきちんと本人と話し合っておくべきです。

Q

最近ではアジア地区に工場を設立する企業も多いですね。海外への転勤という場合は国内の転勤と同一に考えることはできない気がしますが、その点何か留意事項はありますか?

A

海外での勤務には「海外出張」と「海外転勤」があると思います。

 海外出張といえども数か月とかある程度長期間の出張の場合には労働者にはかなりの負担になる場合があるので、比較的長期の海外出張が予想される企業の就業規則には「海外出張を命じることがある」等の規定をしておくことが望ましいでしょう。

 さらに、海外転勤ともなれば通常は数年間の長期にわたり社員を慣れない海外での環境に置くわけですから、国内での転勤とは意味合いが変わってくると考えられます。
 海外転勤用の規程を作成して、会社の海外転勤命令権を規定した上で、転勤期間は3年程度に制限し、延長の場合は本人同意を必要とするなど労働者のこうむる不利益を緩和する配慮が必要だと考えます。

 なお、海外の事業所で勤務する場合には業務災害における労災の適用がないので、海外転勤者には労災の海外派遣者特別加入制度に加入させる等実務上の扱いにも配慮してください。

今回のポイント

  • 人事異動には「配転」と「出向」がある。勤務場所が変る配転を「転勤」という
  • 就業規則に「配転」させることがある旨の定めがあれば、原則的には本人の個別同意がなくても配転命令を出すことは可能
  • 業務上の必要がない場合、また必要性はあっても不当な動機や目的を伴っている場合、配転命令は無効になる
  • 個別の労働契約で職種や勤務地を限定して採用するような場合は、個別の契約が優先されるため「配転」は本人の同意等がなければ困難
  • 「海外転勤」(及び長期の「海外出張」)が予想される場合は、就業規則などに規定すると共に「海外転勤規程」などを作成し労働者への十分な配慮を行なう

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