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就業規則の役割

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就業規則の役割

著者・米田徹氏のプロフィールはこちら

賢い会社の就業規則・人事規程作成のポイント(1)

皆さん、初めまして! (株)プライムコンサルタントの登録コンサルタント、社会保険労務士・中小企業診断士の米田徹です。

 これから、就業規則を中心とした会社規則の作成・見直しの仕方について、皆様と一緒に考えていきたいと思います。
 就業規則については市販の解説本や労働関係の雑誌等が多数出版され解説されています。しかし数も多いのでどの本を読めばよいのか迷っている方も多いでしょう。
 また、専門書の中には労働基準法はじめ詳しい法律知識がないと読み込むことが難しい場合もあります。

 私のこれからのシリーズでは、メインターゲットの読者を中小・中堅企業の社長さんや最近会社事務を担当しはじめた初級者と想定して、そういう方々が日々疑問に感じておられる内容等をQ&A形式で、できるだけ分かりやすい言葉で解説していきたいと考えています。
 お仕事の合間などに気楽に読んでいただき、「そうか、なるほど」と気付くことがあれば、ぜひ記憶に留めて今後の業務に役立てていただければと思います。

 なお、このシリーズで説明する内容は決して単なる入門のための解説にはとどまりません。就業規則はどのような考え方で作成・見直しすればよいのか、またどうすれば無用な問題を回避しつつ社員も納得できる賢い会社の就業規則になるのかを実務に役立つように説明していきます。
 ぜひ皆様の会社の就業規則をお手元において、どのように見直しをしていけばよいのか、このシリーズを通じて一緒に考えていただければ幸いです。
それでは、早速始めましょう。

Q

就業規則はなぜ必要なのですか?その役割について教えてください。

A

「就業規則」は、職場における雇用管理全般についてのルールを定めたもので「職場の憲法」といった言い方もされます。  憲法や法律の無い国家は秩序が保てず無政府状態になってしまうでしょうが、企業においても職場秩序を保ち労働能率を高め企業経営を発展させるためには一定の職場規律や労働条件を統一的・画一的に定めた就業規則が必要になるのです。

 就業規則がなぜ重要かを考えてみましょう。

 職場においては、使用者(社長だけでなく労働者からみて上司にあたる部長・課長などを含みます)と従業員との間で、労働条件や職場でのルールについて理解がくい違い、その結果、様々なトラブルが発生することがあります(以下は、トラブルの一例)。

・パートタイマーが退職金の支給を要求してきた

・定年後の再雇用を拒んだら社員から抗議された

・勤務態度が悪いので解雇したら、数ヶ月後に解雇無効の訴えがでた

・営業職の職員が多額の残業代未払いを請求してきた

・社員が休職から復帰後すぐにまた休職を要求し、その繰り返しで業務に支障が生じている

 このような問題やトラブルを防ぐためには、労働時間や休日、服務規律、懲戒規定、休職また賃金や退職金等について、会社としてきちんとルールを定め、従業員にもそれを周知させておくことが必要になります。
 使用者と従業員との間で無用な問題を発生させないことが就業規則の重要な役割です。
 また就業規則は従業員に対する待遇や処遇を公平かつ明確にし、会社経営を効率的に行うことにも役立ちます。ルールが成文化されていることで、社員も安心・納得して働くことができ、いきいきとした明るい職場作りが可能になります。

Q

就業規則は10人以上の従業員を雇った場合に作成義務があると聞きました。就業規則は法律上どのような定めと意味づけを持っているのでしょうか?

A

それでは、まず「労働基準法(以下、「労基法」)」や「労働契約法」で就業規則についてどのような定めをしているかお話しましょう。労基法の89条では、常時10人以上の労働者(パートタイマー、アルバイトなどを含みます)を使用する使用者について「就業規則の作成、及び届出の義務」を定めています。さらに就業規則作成の手続き規定(90条)、制裁規定の制限(91条)、法令及び労働協約との関係(92条)、労働契約との関係(93条)等が定められています。

   そして、平成21年3月に施行された新しい法律「労働契約法」の第7条では次のように規定されています。

労働契約法 第7条
 労働者及び使用者が労働契約を締結する場合において、使用者が合理的な労働条件が定められている就業規則を労働者に周知させていた場合には、労働契約の内容は、その就業規則で定める労働条件によるものとする。(以下略)

 これはとても大事な定めですが、簡単にいうと会社が新たな従業員を雇入れる際に、すべての労働条件を詳細に定めて個々に説明することは困難なので、就職するにあたって、

1.合理的な労働条件が定められている、かつ

2.労働者に周知させていた

ということであれば、就業規則に定めた内容(労働条件)が本人との個別の労働契約の内容を補充した形で労働条件になる、すなわち法的な効果が生じるということになるわけです。

Q

まず、定めた内容が「合理的」でなければなりませんね?

A

元来、「労働契約は労働者と使用者が対等の立場における合意に基づいて締結、又は変更すべきもの」(労働契約法3条1項)ですが、就業規則は、使用者が全社員の労働条件について統一的、画一的に定めるものなので内容の合理性が求められます。法律や組合との労働協約に違反したものは無効ですし、必要な内容が盛り込まれていることや労働者代表の意見聴取を行うなどきちんとした手続きが求められます。

Q

それで次の「労働者に周知させる」とはどういう意味ですか。当社では会社の就業規則はありますが、社員一人ひとりに詳しく説明したことはないのですが?

A

就業規則を作成しても従業員への「周知義務」が守られていない事業場は意外に多いので注意しましょう。  ただし、社員説明会のような子細な説明が必要かというと必ずしもそうではありません。就業規則を従業員に「周知させる具体的な方法」ですが、「常時各作業場の見易い場所に掲示し、又は備え付けること、書面を交付すること・・・等の方法」(労基法106条1項)と規定されています。事業場内で従業員がいつでも閲覧できるようにしておけば「周知された」として問題ありませんし、書面で各従業員に交付したり、またイントラネットなどで従業員がパソコンで必要な時に確認できるようになっていればよいわけです。

 以上、このような方法をとれば従業員が実際に就業規則の内容を知っていないとしても法的には「実質的周知」がなされたことにはなるわけですが、従業員の中には外国人の方や身障者の方などがいて、会社が就業規則を閲覧できるようにしただけでは理解が困難なケースもあるでしょう。そのような従業員に対しては個別に説明する機会を作る等して、後にトラブルが起きないようにすることも必要だと考えます。
 いずれにせよ作成・届け出た就業規則をお蔵入りさせていては法的にも効力を持たず重大なトラブルにつながります。職場の見やすい場所に、即刻備え付けるようにしてください。

それでは、今回はここまで。次回は労働契約法や就業規則の不利益変更の問題について解説します(米田)。

今回のポイント

  • 就業規則は、職場の雇用管理全般のルールを定める「職場の憲法」といえるもの
  • トラブルを回避し、社員も納得の明るい職場作りを行うことが就業規則の重要な役割
  • 就業規則は労基法に作成や届出の義務が明記されている
  • 合理的な内容を定め従業員に周知させていれば、就業規則は労働契約上の労働条件として法的効力を持つ
  • 就業規則は従業員に周知して初めて効力を発する。周知の方法は備付、掲示、配布等

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