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「景気は回復基調を取り戻せるのか?~2013年度日本経済ならびに春季賃金改定の見通し」(2013年2月景況トレンド)

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「景気は回復基調を取り戻せるのか?~2013年度日本経済ならびに春季賃金改定の見通し」(2013年2月景況トレンド)

株式会社三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社
調査部 尾畠未輝
(2013年2月19日、21日・春季定例研究会ブックレット「最新の経済予測と春季賃金改定  資料」より)

景況分析と賃金、賞与の動向(5)

景気の現状と2013年度日本経済の見通し

 景気は12年春先をピークに後退局面に入ったとみられる。
 まず、中国の景気減速や欧州情勢の混迷を受けて世界経済の回復ペースが鈍化し、輸出の低迷が続いている。
 さらに内需の弱さも加わって、生産は減少傾向で推移しており、景気は弱含みの動きが続いている。

 もっとも、足元では景気は下げ止まっており、景気後退期は比較的短期間で終了した可能性が高い。

 12月の鉱工業生産指数は前月比+2.5%と堅調に増加しており、経済産業省「製造工業生産予測調査」によると、生産は12月に前月比+6.7%と急増した後、13年1月、2月も同+2.4%と自動車などを中心にで増産が続く計画となっていることからであり、生産は持ち直しに転じたと考えられる底打ちが見込まれている。
 また、足元で世界経済はに再加速の動き兆しがみ見られており、今後は輸出も下げ止まってくると見込まれる可能性がある。

 さらに、景気にとってプラスとなる材料も出てきた。
 2012年12月16日、衆議院総選挙で自民党が圧勝し、同月26日に安倍内閣が発足した。
 そして、2013年1月15日には過去2番目の規模の13.1兆円となる2012年度補正予算案が、29日には2013年度予算案がそれぞれ閣議決定された。

 先立って決定した「日本経済再生に向けた緊急経済対策」の内容に沿い"景気の底割れを回避する"ことが目指され、公共事業が中心の歳出となっている。
 金融市場では、当時の首相だった民主党・野田氏が突然の衆議院解散を宣言した11月14日頃から、安倍新政権が誕生し一段と金融緩和が進むという予想が強くなっていた。

 さらに、米国の景気回復期待の高まりや欧州の財政金融危機の落ち着きといった海外要因が加わったこともあって、為替相場は急速に円安が進み、株価はほぼ一本調子で上昇している。

 足元では、こうした円安株高の"アベノミクス景気"に国内の雰囲気が沸いているようだ。
 しかし、現時点までの金融市場は思惑や期待によって動いている部分が大きく、今後も円安や株高が定着、進行するかどうかは不確実性が高い。
 国内景気の自律的な回復力が増すまでには、しばらく時間を要するだろう。

 底打ちした後も国内景気の回復ペースは緩やかなものにとどまるとみられる。
 個人消費は、エコカー補助金制度終了に伴う自動車販売の落ち込みが一巡しても、所得の低迷が続くとみられることから順調な増加は期待し難い。
 また、企業の設備投資も業績が伸び悩む中、勢いはなかなか強まってこないだろう。

 12年度の実質GDP成長率は+1%を下回ると予測する。
 さらに下期に限ると、成長率は季調済前期比でマイナスとなる見込みだ。

 13年度になると、内需の底堅さに加え、外需が徐々に回復することから、景気の持ち直しの動きが確かなものになってくるため、実質GDP成長率は+1%を上回ると見込まれる。
 とくに、年度末にかけては消費税率引き上げ(14年4月)前の駆け込み需要が発生し、景気は回復の勢いが増すと期待される。

 

賃金を取り巻く環境

[企業収益]
 財務省「法人企業統計」によると、12年度上期は季調済前期比でみて、製造業では減収減益、非製造業では減収増益となった。
 製造業では輸出の不振を受けて生産の低迷が続いたため売上高が大きく落ち込み、人件費などのコスト削減効果が一巡し経常利益も減少した。
 一方、非製造業では、内需の弱さから売上高は減少したものの、遅れていたコスト削減が進んだこともあって経常利益は増加した。

 こうした企業収益の低迷もあって、製造業では企業マインドも悪化している。
   日本銀行「企業短期経済観測調査(短観)」の12年12月調査によると、大企業製造業の業況判断DI(「良い」-「悪い」)は前回(9月)調査から-9 ポイントと大幅に低下した。

 一方、大企業非製造業では、製造業と比べ輸出の減少による悪影響を受けにくい分、低下幅は-4 ポイントと小幅にとどまった。
 もっとも、先行きについては、大企業製造業では生産の持ち直し期待から改善が見込まれている一方、非製造業では悪化を予想しており、景気の不透明感が強い中、先行きに対して慎重な姿勢を強めている。
 さらに、中小企業では製造業、非製造業とも先行きの景況感は大幅な悪化を見込んでおり、警戒感が強いことがうかがえる。

 全体でみると、12年度の経常利益は震災の影響で大きく落ち込んだ前年度とほぼ同水準にとどまる見込みだ。
 製造業では2年連続で減益となる一方、非製造業では増益に転じるとみられる。
 足元では為替相場で円安が進んでおり、今後も80円台後半程度の水準が続けば、輸出企業では収益が上振れてくる可能性がある。

 しかし、実際に輸出数量の増加に繋がるには時間がかかるため、経常利益の押し上げ効果は為替レートの換算分にとどまると考えられる。
 さらに、国際商品市況は下げ止まりつつあり、円安の進行が輸入価格のさらなる上昇を通じて原材料費などのコストを押し上げる懸念もある。

 13年度になると、景気の回復が進むことに加え、消費税率引き上げ前の駆け込み需要による押し上げ効果もあって売上高が増加し、経常利益は前年比+3.4%と増加する見込みだ。

[雇用]
 通常、雇用環境は景気動向に遅行する。
 このため、足元までの景気の弱さを反映して、今後、雇用情勢が一時的に厳しさを増す可能性がある。
 実際、求人数や求人倍率はリーマン・ショックによる急激な落ち込みから改善傾向が続いていたが、既に頭打ちとなっている。

 12年夏頃から新規求人数は製造業を中心に減少傾向が続いており、12年9月、有効求人倍率(季節調整値)は3年2カ月ぶりに低下に転じた。
 一方、完全失業率(季節調整値)については、リーマン・ショックを受けて大きく上昇した水準から、足元でも緩やかな低下基調を維持している。
 しかし、就業者数の動きを見ると一進一退が続いており、労働市場からの退出が増えたことが失業者数を押し下げている側面が強い。

 13年度になると、国内景気の持ち直しが見込まれるため雇用環境の改善が見込まれるものの、ペースは緩やかにとどまるだろう。

2013年春闘賃金改定の見通し

 厚生労働省がまとめた2012年の民間主要企業(資本金10億円以上かつ従業員規模1000人以上の労働組合のある企業)の賃上げ率は1.78%と、震災の影響により2011年度の企業収益が悪化したことなどを受けて2年ぶりに前年(1.83%)を下回った。

 日本労働組合総連合会(連合)が2012年末にまとめた「2013春季生活闘争方針」では、2011年に打ち出した「給与総額の1%引き上げ」が今回も示されている。
 もっとも、定期昇給(定昇)等による賃金カーブの維持は求めるものの、ベースアップ(ベア、賃金改善)については求めていない。

 一方、日本経済団体連合会(経団連)の指針を示す「経営労働政策委員会報告」では、ベアは「実施する余地はない」とされている。
 原案の段階では、ベアは「協議の余地はない」上、定昇についても「制度の見直しを聖域にすべきではない」との考えであり、文言はやや和らげられたものの、企業の経営環境は厳しいままとの認識だ。

 2013年の春闘も引き続き難航が予想される。
 物価の下落が続く中、2012年度の企業収益は製造業を中心に低迷が見込まれており、賃上げを取り巻く環境は厳しい。
 内外景気の先行き不透明感は強く、企業は景気の先行きに慎重な見方を続けており、人件費抑制姿勢を緩和させるには時間を要する。

 一方、2000年代に入って以降、春闘における賃上げのほとんどが定昇によるものとなっている。
 一部の業績が厳しい企業では、経団連が主張するような定昇見直しが進められる可能性もあるが、全体でみると2013年も例年通り定期昇給程度の賃上げになるだろう。
 2013年の民間主要企業(同)の賃上げ率は1.80%と前年とほぼ同水準の伸び率にとどまる見込みだ。

 同一規模や同一業種の中でも個別企業ごとに優勝劣敗が分かれる中、経営環境や企業業績によって賃上げ率の格差はさらに広がるだろう。
 中には賃上げに関する交渉を行う余裕さえないといった企業もあるとみられる。

【景況分析と賃金、賞与の動向】は、プライムコンサルタントが主宰する
「成果人事研究会」の研究会資料「プライムブックレット」の内容の一部をご紹介するものです。

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