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2011年度下半期の景気動向と年末賞与を予測する(2011年11月景況トレンド)

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2011年度下半期の景気動向と年末賞与を予測する(2011年11月景況トレンド)

株式会社三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社
調査部 尾畠未輝
(2011年11月2日秋季定例研究会ブックレット「2011年年末一時金関連データ」より)

景況分析と賃金、賞与の動向

景気の現状と2011年度下半期の景気見通し

 東日本大震災によって大きく落ち込んだ日本経済であったが、懸命の努力の甲斐もあって復旧は想定を上回るペースで進み、国内景気は比較的早い段階で回復基調に転じた。震災によって寸断されたサプライチェーンの復旧は夏頃には概ね完了し、懸念されていた電力不足も節電の努力や工夫によって企業の生産活動を大きく押下げる要因にはならなかった。

 国内生産の回復に併せて海外市場における在庫復元の動きもあって、輸出も増加に転じた。また、供給制約の緩和に加え自粛ムードが薄らぐ中で個人消費も持ち直している。さらに、公共投資を中心とした震災後の復興需要が景気の押し上げ要因となっている。このように、震災による日本経済への悪影響は一時的なものにとどまり、国内景気はV字回復を達成している。

 しかし、足下では景気回復の勢いが鈍化する兆しが出始めている。米国ではガソリン価格の上昇を背景に個人消費が伸び悩み、欧州における財政危機は一段と深刻さを増すなど、世界経済は金融危機後の急速な回復ペースが一服し、日本からの輸出を巡る環境が悪化している。海外景気の先行き不透明感も増しており、世界的に株価が下落するなど金融市場は不安定な動きが続いている。

 こうした混乱を受けて、相対的に安全資産とされる日本円への資金流入が進んでおり、為替市場では円が史上最高値圏で推移し、足下では対ドルで70円台半ばの水準が定着しつつある。この先さらに円高が進行すれば、価格競争が激しい製品を輸出している企業や、為替変動への対策が十分ではない中小企業などを中心に輸出数量が減る可能性がある。

 国内需要についても今後は回復ペースが次第に緩やかになるだろう。公共投資は復興需要によって堅調な増加が続くと見込まれる一方、民需は徐々に落ち着いてくるとみられる。供給体制の立て直しとそれに伴う需要の顕在化が一巡してきたこともあって、生産の伸びは既に鈍ってきている。

 さらに、震災後の特需や地デジ化完全移行前の薄型テレビの駆け込み購入などによって押し上げられていた個人消費も、その効果が剥落し回復の勢いは徐々に乏しくなった。設備投資については、震災で毀損した設備ストックの復旧や更新投資を中心に増加基調が維持されるものの、企業の投資姿勢は慎重なままであり、今後も大幅な増加は見込みがたい。2011年度中の日本経済は震災からの再生を目指す中で復興需要に支えられた成長となるだろう。

2011年年末賞与を取り巻く環境

 震災後、売上高が減少した影響で企業の経常利益は大幅に悪化した。法人企業統計でみると、2011年4~6月期の経常利益(全産業)は前年比-14.6%と、7四半期ぶりに減少した。とくに、震災によってサプライチェーンが寸断され生産活動が大きく落ち込んだ製造業では同-15.3%と2四半期連続で前年を下回り、減少幅は大きい。

 今後は、生産の回復に伴って製造業を中心に売上高は増加すると見込まれる。また、これまで上昇傾向が続いていた国際商品市況は調整局面に入るとみられ、原材料価格の低下を通じて企業収益を押し上げる効果がある。しかし、震災による年度初めの落ち込みの影響は大きく、また海外景気の減速を背景に輸出の伸びが鈍化することが予想されるため、2011年度の経常利益は前年比-9.4%と減益に転じるとみられる。

 雇用情勢については、東日本大震災の発生前までは国内景気の回復を背景に改善が続くと期待されていた。人的、物的被害の大きさと比べると、震災による雇用環境への悪影響は、少なくとも被災地以外においてはそれほど深刻な事態には陥っていないように伺える。しかし、被災地では企業の求人と求職者の希望との間で様々なミスマッチが発生しており、離職者の再就職は必ずしも円滑に進んでいない。

 震災から半年以上が過ぎた今でも現地は過酷な状態が続いており、雇用環境も非常に厳しい状況であるとみられる。日本全体でみても、供給体制の回復に伴って生産は増加しているが、雇用環境が大幅に改善するまでには至っていない。国内景気の回復を背景に雇用情勢の改善基調は維持されるとみられるものの、企業は雇用に対して慎重な姿勢を崩しておらず、雇用環境の改善ペースは緩やかなものにとどまるだろう。

 震災や津波による被害に加えてサプライチェーンの寸断や原発問題による電力不足を背景に、工場では操業が停止したり飲食店や百貨店では営業時間が短縮されたりしたことで、残業が大きく減った。所定外労働時間の減少に伴って所定外給与も大幅に落ち込んだ。もっとも、最近では国内景気の回復に伴って製造業を中心に所定外労働時間は増加し、所定外給与も持ち直しに転じつつある。

 しかし、昨年末にかけて下げ止まりの兆しが見えかけていた所定内給与は、2011年に入ってから直近まで前年比で減少が続いている。この結果、賃金全体も伸び悩み、一人当たり現金給与総額は3月に前年比-0.1%と13ヶ月ぶりに減少に転じた後も低迷が続いている。当面、所定外給与の持ち直しと所定内給与の低迷という傾向は続くと見込まれる。企業の人件費抑制姿勢が維持され、雇用環境が厳しい中では、賃金の大幅な改善は期待し難い。

夏季賞与の動向~大手企業では増加するも、中小企業では減額

 日本経済団体連合会によると、2011年夏季賞与の総平均妥結額(最終集計)は前年比+4.42%と2年連続で前年を上回り、増加幅も拡大した。ただし、水準は79.1万円と金融危機前と比べると非常に低いままであるため、雇用者にとって回復の実感は乏しいだろう。製造業では同+6.96%と比較的大きく増加した一方、非製造業では同-2.45%と4年連続で前年を下回り減少幅も拡大した。

 ただし、この調査の対象は、東証一部上場で従業員500人以上といった、いわゆる大手企業の248社に限られている。一方、常用労働者が5人以上の事業所を対象とした厚生労働省「毎月勤労統計」をみると、夏季賞与が含まれる6~8月の一人当たり特別給与は前年比-1.0%と減少した。

 とくに、常用労働者が5~29人の事業所については同-4.0%と減少幅が大きい。現時点では厚労省による夏季賞与の結果は未公表であるが、中小企業では今夏のボーナスが減少し、全規模ベースでみても前年を下回る可能性がある。

 夏のボーナスが支払われた時点では、震災の影響により製造業を中心に企業の経常利益も大きく落ち込んでいたとみられるが、2011年夏のボーナスの支給原資の対象であったとみられる2010年下期の企業収益は改善していた。つまり、震災の影響は今夏のボーナスにはまだ本格的に表れていないといえるわけだが、中小企業では、大企業と比べて収益環境が厳しく、経営者の判断がボーナスに反映されやすいため、減少に繋がったと考えられる。

年末賞与の見通し~震災の影響が本格的に表れ、3年連続で減少する可能性

 2011年度上期の企業収益の大幅な減少の影響は、2011年年末賞与に大きく表われる可能性が高い。厚労省によると、2010年年末賞与の一人当たり平均支給額(調査産業計・事業所規模5人以上)は前年比-0.3%と2年連続で減少し、冬のボーナスとしては比較可能な1990年以降で過去最低の水準となったが、今年はさらに最低額を更新することになるだろう。

 今冬のボーナスに反映されるであろう2011年度上期の企業収益は、震災の影響によって大きく落ち込んだ。2011年9月調査の日本銀行「短観」によると、2011年度上期の経常利益の計画(全規模・全産業)は前年比-12.3%と減少している。景気の先行きに慎重な見方が強まる中、企業は人件費をはじめとするコスト削減姿勢は崩さないだろう。

 また、賞与算定のベースとなる所定内給与も依然として低迷が続いている。この結果、2011年冬のボーナスは3年連続で前年を下回り、減少幅は2010年冬と比べて拡大する見込みである。自動車や電機など大手製造業などでは、震災による企業収益への悪影響を反映させる間もなく、震災直後に実施された2011年春季労使交渉で今夏のボーナスの支給額が決定された。このため、冬のボーナスに減額のしわ寄せがくることも考えられる。

 なお、震災の影響もあって、企業規模や業種、個別企業でボーナスの支給状況および支給額の格差はより広がることになるだろう。大企業と比べて中小企業では企業収益の改善が遅れており、前年冬や今夏に続き大幅に減少するところもあるとみられる。リーマン・ショック後に大きく落ち込んだボーナスは十分に持ち直す前に、震災の影響によっていっそう落ち込んでしまう可能性が高い。


 「景況分析と賃金、賞与の動向」は、プライムコンサルタントが主宰する「成果人事研究会」の研究会資料「プライムブックレット」の内容の一部をご紹介するものです。

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