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Unit 7: 高齢者雇用を取り巻く現状と動向、今後の課題-駆け出しコンサルタントの学習成長ブログ(人事管理・労働経済編)

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Unit 7: 高齢者雇用を取り巻く現状と動向、今後の課題-駆け出しコンサルタントの学習成長ブログ(人事管理・労働経済編)
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みなさんこんにちは。人事コンサルタント(社会保険労務士・中小企業診断士)の古川賢治です。

前回は、「若者雇用を取り巻く現状と仕組み、今後の課題」について学習しました。
今回は、「高齢者雇用を取り巻く現状と動向、今後の課題」と題し、日本の高齢化の3つのポイント、高齢者の労働力率の推移と国際比較等について学習します。また、将来労働力人口が減少していくと予測されるなか、それを克服するための今後の課題についても触れます。超高齢社会の日本が、今後も世界に存在感を示し続けていくうえで欠かせない高齢者雇用の未来について一緒に考えていきましょう。

高齢者雇用を取り巻く現状と動向

日本の高齢化3つのポイント

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今回は、高齢者雇用を取り巻く現状と動向、今後の課題について学習します。突然ですが、日本の高齢化率※がどの程度の水準にあるか知っていますか?
※高齢化率(%)=65歳以上人口÷総人口×100

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報道などで、しばしば「4人に1人は65歳以上」と言われていますので、25%ぐらいでしょうか?

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おおむねそのとおりです。2018年4月に公表された、総務省「人口推計(2017年10月1日現在)」によれば、日本の高齢化率は過去最高の27.7%を記録しました。今回のメインテーマである高齢者雇用を考える前に、日本の高齢化が世界に類を見ない状況であることを次の3つのポイントで確認しておきましょう。

  1. 高齢化の水準の高さ
  2. 高齢化の進行の速さ
  3. 高齢化の奥行の深さ
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具体的には、それぞれどのようなことを意味するのでしょうか?

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それを理解するために次の図表1を見てみましょう。これは、世界各国の高齢化率の推移を、将来予測を含めて示したものです。左側は欧米諸国と日本、右側はアジア諸国と日本を比べた場合のグラフです。

図表1 世界の高齢化率の推移
 世界の高齢化率の推移

資料:内閣府「2017年版高齢社会白書」より

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2014年時点で比べると、日本の高齢化率は26.6%で世界トップなのですね。アメリカの14.8%と比較すると約1.8倍であり、先進諸国の中でも特に高い水準にあるということが分かります。

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はい。前述の「1.高齢化の水準の高さ」はまさにそのことを意味していて、日本の高齢化率は世界のどの国よりも高くなっているのです。さらに、2035年に32.8%、2060年には38.1%にまで上昇すると予測されています。 次に、「2.高齢化の進行の速さ」に関して何か言えることはありそうですか?

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欧米諸国と日本を比べた左側のグラフを見ると、日本の曲線の傾きが大きい気がします。

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そうですね。高齢化の進行の速さは、高齢化率7%から14%に達するまで※にどれだけの時間がかかったかで計られます。日本の場合、7%になったのが1970年で、その後14%に達したのが1994年ですから、24年を要したことになります。フランスの場合、7%から14%に変化するまで114年かかったことから、日本の高齢化のスピードが明らかに速いことが分かります。
※高齢化率7%を超えた社会を高齢化社会(Aging Society)、14%を超えた社会を高齢社会(Aged Society)と言う。なお、高齢化率21%を超えた社会を超高齢社会(Super-Aged Society)と言う

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前述の「3.高齢化の奥行きの深さ」についても教えてください。

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奥行きの深さというのは、65歳以上の高齢人口の中に占める、もう一段階上の高齢の人の割合を指し、具体的には、65~74歳人口と75歳以上人口の比率で考えます。日本では、現在はちょうど1対1ぐらいですが、2060年ごろには1対2になると予測されていて、今よりもさらに奥行きが深くなっていくのです。

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なるほど。日本の高齢化を語る際には、水準の高さ・進行の速さ・奥行きの深さがポイントになるのですね。ところで、高齢者の就業についてはどのような状況にあるのでしょうか?

 高齢者の就業状況

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前置きが少し長くなりましたが、これから高齢者の就業状況について解説していきます。まず、60~64歳の男性の労働力率の推移を図表2で確認してみましょう。

図表2 60~64歳男性の労働力率の推移

資料:総務省「2017年労働力調査」より作成

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60代前半男性の労働力率は、自営業の多かった1970年前後では80%を超えていました。1973年には、当時の政府が推し進めた「福祉元年」政策により、年金で引退生活を送ることができるようになったために労働力率が低下し始めました。1990年前後はバブル経済の影響で一旦上昇しましたが、バブル崩壊とともに再び低下していきました。ところが、2006年の「高年齢者雇用安定法※」改正によって再び上昇に転じ、人手不足も相まって現在も上昇し続けています。
※正式名称は「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」

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高年齢者雇用安定法の改正で65歳までの雇用確保措置が企業に義務化※されたので、60代前半男性の就業者が増加したのですね。約8割の労働力率は高い水準にあると考えますが、国際的に見た場合、日本の高齢者の労働力率はどのような水準にあるのでしょうか?
※①65歳までの定年年齢引き上げ、②65歳までの継続雇用制度、③定年制の廃止の3つのうち、いずれかを実施する義務がある

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それについては次の図表3を見てみましょう。これは、男女別に高齢者の労働力率を国際比較したものです。

図表3 高齢者の労働力率の国際比較
(単位:%) 日本 アメリカ ドイツ フランス 韓国
60~64歳男性 78.9 61.5 62.7 30.4 74.7
60~64歳女性 50.6 49.8 50.2 29.0 48.2
65歳以上男性 31.1 23.4 8.6 3.6 42.2
65歳以上女性 15.3 15.3 4.1 1.9 23.4

資料:総務省「2017年労働力調査」および「OECD Data」より作成

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60~64歳男性の労働力率に関して、日本は世界の中で非常に高い水準にあるのですね。65歳以上男性でも、韓国には劣りますが、欧米諸国に比べて高い水準にあります。女性の労働力についても同様のことが言えそうです。これは、何を意味しているのでしょうか?

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高齢者の労働力率が高いということは、高齢人口に占める就業者の割合が大きいということですから、「日本は就労意欲が高い国である」ということが言えます。

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なるほど、そういうことですか。ところで、高齢者雇用に関する問題点や今後の課題等があれば教えてください。

 高齢者雇用の今後の課題

労働力率の向上

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この先、少子高齢化の影響で日本の労働力人口は減少していきます。現在の労働力人口は約6,600万人ですが、2030年にはこれが5,800万人にまで減ると予測されています。

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そんなに減ってしまうのですか!なんとかして労働力人口を増やすことはできないのでしょうか?

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残念ながら、人口減少社会の日本では、移民政策にシフトするなど大胆な政策転換がないかぎり、この先労働力人口が増えていくというシナリオは望めそうにありません。しかし、今後の取り組み次第では、労働力人口の大幅な減少を食い止め、今と大差ない水準で保っていくことは可能だと考えています。

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労働力人口が増えないのは残念ですが、なんとか今のまま維持することはできそうなのですね。その取り組みとは、どのようなものなのですか?

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それは、経済成長と労働参加を適切に進めていくという取り組みです。次の図表4は、経済成長と労働参加が適切に進む場合とそうでない場合の労働力人口と労働力の見通しを比較したものです。これによると、両者が適切に進むケースでは、2030年の労働力人口は6,362万人になると予測されています。

図表4 労働力人口と労働力率の見通し
60~64歳男性の労働力率の推移

資料:労働政策研究・研修機構推計より

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さすがに現在よりも多少は減少しますが、6,000万人を超える水準をキープできるのですね。これを見て少し安心しました。少子高齢社会においてもまだ希望は残されているのですね。 ところで、労働力率の向上について具体的に教えてください。

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ここでは詳細なデータは示しませんが、人口を年齢層別に見ていくと、労働力率には高低のばらつきがあることが分かります。労働力人口を増やすには、労働力率が低い層の労働参加を促して労働力率を高めることが有効であると考えられます。労働力率を高める余地が残されているのは、大きく分けて女性の30代と60代の高齢者の2つのグループです。

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逆に言うと、その2グループはまだ労働参加が進んでいないのですね。労働力人口を6,000万人以上にキープするシナリオを実現するためには労働力率をどれくらい高めていけばよいのでしょうか?

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まず、女性の30代の労働力率は2014年時点で約70%ですが、これを2030年に約85%にまで引き上げることを想定しています。次に、男性の60代の高齢者については、60~64歳は2014年時点の約78%を2030年までに約90%、65~69歳は2014年時点の約62%を2030年までに約68%に引き上げることを想定しています。

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30代の女性と60代前半の高齢者については、おおよそ1年に1%アップさせていく必要があるわけですね。これは、現実的に可能なのでしょうか?

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もちろん決して簡単ではありません。これを実現するためには「生涯現役社会」を作ることが不可欠です。つまり、何歳になっても働き続けられる仕組みが必要だということです。

生涯現役社会の実現と高齢者の就業継続

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生涯現役社会ですか。そうは言っても、定年制という日本企業に特有の仕組みがあるので、難しいのではないでしょうか? 次の図表5のとおり、企業規模にかかわらず定年制を実施している企業は、9割を超えています。また、そのうちの大多数が定年年齢を60歳としています。つまり、高年齢者雇用安定法で義務化された65歳までの雇用確保措置について、大多数の企業が定年年齢の引き上げや廃止ではなく、60歳定年後から65歳までの継続雇用制度を採用していることが分かります。

図表5 定年制の実施状況
(単位:%) 定年制を定めている企業 一律定年年齢が60歳の企業 一律定年年齢が65歳以上の企業
企業規模計 95.5 79.3 17.8
1,000人以上 99.3 90.6 6.7
300~999人 99.7 87.2 9.4
100~299人 98.0 84.1 12.5
30~99人 94.2 76.7 20.5

 資料:厚生労働省「2017年就労条件総合調査」より作成

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そうですね。今指摘いただいたことは世の中の実態を捉えた現実だと思います。なお、図表5において、一律定年年齢が60歳の企業のうち1000人以上では90.6%、30~99人では76.7%と差がありますが、これは人材が不足しがちな小規模企業では、体が元気であるかぎりずっと働き続けてもらいたいという企業側のニーズが表れているのでしょう。

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なるほど。反対に、働く側のニーズとしては何かありますか?働き手は何歳ぐらいまで働き続けたいと思っているのでしょうか?

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それについては図表6を見てみましょう。これによると、現在仕事をしている高齢者の約4割が「働けるうちはいつまでも」働きたいと回答しています。「70歳くらいまで」とそれ以上との回答も合計すると、約8割が高齢期にも高い就業意欲を持っている様子がうかがえます。

図表6 現在仕事をしている高齢者の就業意欲
60~64歳男性の労働力率の推移

資料:内閣府「2017年版高齢社会白書」より

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また、先ほどの定年年齢の指摘について、最近では定年年齢を60歳から65歳以上に変更する企業が増えてきています。2017年「就労条件総合調査」によると、定年年齢を65歳以上としている企業の割合は17.8%となり、10年あまり前の約3倍に増加しています。人出不足を受け若年者の採用が難しくなっている企業が、人材を確保しようと定年延長に乗り出していると考えられています。そして、この動きは今後も続いていくでしょう。

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今はまだ大多数の企業が定年年齢を60歳としていますが、今後は65歳以上に引き上げる動きが広まると考えられるのですね。定年年齢が上がれば、いわゆる正社員としての雇用が確保される期間も延びますので、定年後再雇用時の賃金低下問題などの解消にもつながりますね。定年年齢の引き上げや定年制の廃止により、意欲がある限りいつまでも働き続けられる「生涯現役社会」が近いうちにやってきそうですね。教授、本日はありがとうございました。

今回の連載内容は、2017年5月23日の講義を参考に執筆しました。
東京労働大学講座「高齢労働者の雇用」(清家篤 第18代慶応義塾長)

※東京労働大学講座は、独立行政法人労働政策研究・研修機構が毎年度開催している、労働問題に関する知識の普及や理解の促進を目的とした講座です。今年度で66回目を数え、これまでの修了者は27,000人を超える歴史と伝統を誇る講座です(2018年1月時点)。
 

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