大切な昇給を売り上げアップにつなぐ仕組みづくりー13ー

大切な昇給を売り上げアップにつなぐ仕組みづくり(13)
皆さんこんにちは。コンサルタント・社会保険労務士の津留慶幸です。
前回は、賃金の中心である基本給を効果的に運用するために当社が独自に考案・開発した「ランク型賃金表®」と「段階接近法®」について、その考え方を中心にご紹介しました。
今回は、これら2つのツールを使った基本給の決め方(号俸改定)について解説していきます。
19.号俸改定ルールを使ってみる
(1)号俸改定基準(段階接近法®)
下の図1は、前回ご説明した、段階接近法の考え方を表すイメージ図です。
図1 段階的な基本給改定のイメージ
段階接近法を使うと、
- 現在のランクより評価の点数が高ければ号俸が上がり昇給
- 現在のランクと評価の点数が同じなら1号だけ昇給(ただしランクの上限まで)
- 現在のランクより評価の点数が低ければ号俸が下がり降給
となります。
このイメージ図をきちんとルール化したのが、次の図2の号俸改定基準です。
横軸の1点~15点という表記は「評価レート」と呼んでいるもので、各等級の評価記号(SABCD)と対応しています(図2の水色の部分)。
例えば、R1のB評価は評価レート3点、A評価は同4点、R2のB評価は同5点、A評価は同6点となります。
縦軸の1~15Tという表記は基本給表上の「ランク」を表しています。数字が大きいほど基本給が高いことを意味します。
図2 号俸改定基準の例
(3)ランク型賃金表®
ところで、実際の基本給表は図3-1のような形でした。
この賃金表の見方は図3-2の通りです。一番左の数字は号俸を表しており、1番から始まる連番になっています。
この例では120号まであり、その号俸と対応する形で基本給の金額が設定されています(1.)。
号俸と基本給金額の間の数字は「ランク」と言い、基本給金額の高さを、いくつかの号俸ごとに大まかに区分したものです(2.)。
各ランクの最高金額(上限)には「T」(Topの頭文字)をつけて表します(3.)。
一番右側の数字は号差金額を表しています。ランクごとに号差金額は異なり、ランクが高くなるほど号差金額も高くなるように設定します。
図3-1 ランク型賃金表の例
図3-2 ランク型賃金表の見方
(3)基本給の決め方(号俸改定の方法)
ではここから、段階接近法(図2)、ランク型賃金表(図3-1)を使ってどのように号俸改定を行うかを具体的に説明していきます。
わかりやすくするために、R1等級に注目することにします。図4は、図2(号俸改定基準)のR1の部分を抜粋したものです。
図4 図2の抜粋(R1部分)
例えば、R1等級の社員の基本給が2ランクの高さにあり、評価がA評価(評価レート4点)の場合どうなるでしょうか。
図4で両者の交点をたどると「+3号」と書いてあります。
これが改定号数であり、この社員は、現在の基本給の位置(号数・金額)から3号分昇給できるということを意味しています。
この例を実際の賃金表の上で見てみましょう。この社員の基本給が図3の賃金表で10号・2ランク・177,060円だったとします。
すると、A評価(評価レート4点)をとって「+3号」なので、新しい基本給は10号+3号=13号・184,770円になります。
(2)号俸改定演習1
号俸改定の方法がわかったところで、簡単な演習をしてみたいと思います。
演習は、図3のランク型賃金表を使い、赤さんと青さんという2人の社員が「同じ評価をとった」いう設定で進めていきます。
図5 演習1
1)Q1 評価レートが「A評価・4点」の場合
青さんの現在の号数・基本給は12号・182,200円です。青さんがA評価(4点)をとると、基本給はどのように改定されるでしょうか。
改定号数を知るためには、まず現在のランクを確認する必要があります。図3の賃金表では12号は2ランクですので、「現ランク」の欄は「2ランク」です。
次にランクと評価レートの交点を図5を使って調べます。
2ランクとA評価4点の交点は「+3」ですので、「改定号数」の欄は「+3号」になります。
「新号数」の欄は、現在の12号+3号=「15号」で、「新基本給」は「189,910円」です。
「改定額」は「新基本給189,910円-現基本給182,200円=7,710円」です。
赤さんの場合も同じように考えます。
赤さんの現在の号数・基本給は20号・203,300円です。
図3の賃金表で20号は3ランクですので、「現ランク」の欄は「3ランク」です。
次にランクと評価の交点を調べます。
3ランクとA評価4点の交点は「+2」なので、「改定号数」の欄は「+2号」となります。
「新号数」の欄は、現在の20号+2号=「22号」で、「新基本給」は「208,800円」です。
「改定額」は「新基本給208,800円-現基本給203,300円=5,500円」です。
赤さんと青さんは同じA評価ですが、昇給額はランクの低い青さんの方が大きくなります。
2)Q2 評価レートが「B評価・3点」の場合
現ランクは1)の場合と同じです。12号の青さんは「2ランク」です。
今度は評価レートがB評価・3点ですので、図5で交点を調べると「+2」となっています。「改定号数」の欄は「+2号」です。
「新号数」の欄は、現在の12号+2号=「14号」で、「新基本給」は「187,340円」です。
「改定額」は「新基本給187,340円-現基本給182,200円=5,140円」です。
赤さんの場合も同様に、現ランクは1)と同じ「3ランク」です。
「改定号数」の欄はB評価・3点との交点ですので「+1号」になります。
「新号数」の欄は、現在の20号+1号=「21号」で、「新基本給」は「206,050円」です。
「改定額」は「新基本給206,050円-現基本給203,300円=2,750円」です。
評価レートが低くなると昇給額も小さくなります。
3)Q2 評価レートが「C評価・2点」の場合
現ランクは1)・2)の場合と同じですので、12号の青さんは「2ランク」です。
今度は評価レートがC評価・2点ですので、図5で交点を調べると「+1」となっています。「改定号数」の欄は「+1号」になります。
「新号数」の欄は、現在の12号+1号=「13号」で、「新基本給」は「184,770円」です。
「改定額」は「新基本給184,770円-現基本給182,200円=2,570円」です。
赤さんの場合も同様に、現ランクは1)・2)と同じ「3ランク」です。
「改定号数」の欄はC評価・2点との交点ですので「-1号」になります。
「新号数」の欄は、現在の20号-1号=「19号」で、「新基本給」は「200,550円」です。
「改定額」は「新基本給200,550円-現基本給203,300円=-2,750円」です。
このように、評価レートがランクより低いときは、昇給額はマイナス(降給)になります(※)。
※ご紹介している例は原則的な考え方です。降給を実施するかどうかは各社の判断によります。降給を実施しない、または緩和する場合の考え方は、次回ご紹介します。
図6 演習1の解題
図6は演習1の解題です。
演習1から言えることは、ランクの高い人ほど高い評価をとらないと基本給が上がらない(上がりにくい)ということです。
ランクが高いということは基本給が高いということであり、その分だけ高い評価が求められることになります。
いかがでしょうか? この基本給改定の方法は、「賃金が高い人にはそれにふさわしい働きをして良い評価をとってください」という、自然な感覚を形にしているのです。
次回は、号俸改定の演習をもう一つしたうえで、昇給額のマイナス(降給)を緩和する方法をご紹介していきます。
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