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米国人材マネジメント協会 年次大会に参加してー5ー

米国人材マネジメント協会 年次大会に参加して(5) 

 こんにちは。コンサルタントの田中博志です。

 前回は、評価フィードバックを「今の時代にふさわしいもの」にするために、次の2つの仮定のうち、仮定1を乗り越えるための「5つのコツ」についてお話しました。

 仮定1:どんな仕事でも、特定の個人にその責任を求めることができる
 仮定2:上司は、部下の仕事について何でも知っていて常にベストな指示ができる

 今回は、仮定2について考えていきます。

1.今、経営に何が必要か?

 現代の経営環境は、市場ニーズの多様化、競争関係のグローバル化などによって目まぐるしく変化しています。
 そのため、一部のエリートによる入念な分析・プランニングに依存した経営では、激しい変化に俊敏かつ柔軟に対応することができません。

 代わりに、一人ひとりの知恵や気づきを重ねあわせた「集合知」を活用し、継続的に改善を積みながら針路を切り拓くことが求められています。

2.「上司が常にベスト」という思いこみの3つの弊害

 このように、集合知が重要であるにも関わらず、上司が「自分が何でも知っていて常にベストな指示ができる(あるいは『できなければならない』)」との信念で部下にフィードバックしたらどうなるでしょうか?  次の3つの悪影響を生じる可能性があります。

 一つ目は「間違った指示」です。どんなに優れた上司でも、仕事の現場を正確に把握することなどできませんので、自説にこだわると指示を間違う可能性があります。

 二つ目は「イノベーションのチャンスを失う」ことです。
 職場の必需品の「ポスト・イット」やノーベル賞をとった田中耕一さんの発明は、実験室での「失敗」がきっかけで生まれました。

 私たちは、当初予定した結果が出ないと「単なる失敗」だと片づけ、切り捨ててしまいがちですが、例えば、営業マンの商談の失敗の中にも、画期的な提案方法の芽が潜んでいるかも知れません。

 三つ目は「部下が受け身になる」ことです。
 上司がいつも自分が正しいという姿勢でいると、部下は、上司と同じ結論を出せるようになろうと考えます。
 また、意見が異なるときに、上司が自説に固執して「部下の間違いを正す」行動ばかりとると、部下は異論を述べる気力を失います。

 結果として部下は上司の思考の枠内で考えたり、上司が「正解」を言うのを待つようになります。

 自分の考えを通すことだけを望んでいる上司にとっては心地良いでしょうが、実は何も新しいものが生まれない危険な状況です。

 危機を感じて、「自主的に考えろ」「創造性を発揮しろ」「失敗を恐れるな」などと言っても、一方で「部下の間違いを正す」姿勢が強すぎると状況は変わりません。
 挑戦には失敗がつきものなのに、それを無くすことばかり考えていると、人材育成の失敗はもとより事業の失敗にもつながりかねません。

3.未来を創る気づきを支援する

 ではどうすれば、仮定2を乗り越えられるのでしょうか?

 ポイントは、フィードバックの主眼を、「結果の是非」ではなく、未来につながる発見におくことです。
 結果が悪くても「貴重な経験」としてさまざまな観点からふり返り、起きたことの意味を見出し、重要な気づきを得るのです。

 一人でもふり返りはできますが、他の人の支援があると、多角的に考えられ、気づきの整理もしやすくなります。
 包容力があり、傾聴と対話ができる上司は最高の支援者になり得ます。

 例えば、重要商談の失敗については、「お客様の状況をどのように把握し、どんな情報が得られ、どのように理解し、どんな提案をつくり、・・・」など、結果の背景を丁寧に見ていきます。
 本人が冷静に整理できるよう、上司は効果的な問いかけをします。
 できれば、そのときの本人の思いや感じたことも共有します。

 客観的にふり返ると、良かったことや改善点が自然と浮かび上がり、部下は多くの気づきを得ます。
 上司は、本人が気づかなかった点について、追加のアドバイスをしたり、より高い視点から意味づけをしてあげれば良いでしょう。

 改善点には、アクション面だけでなく、本人の心構えなど、内面的なことも出てくるかも知れません。
 例えば、「他人に協力を求めることは恥ずかしいと思い込んでいた」などです。

 内面的な気づきは非常にパワフルです。
 本人は内面的な成長を実感して意欲が増し、上司は部下への理解が深まります。

 また、ふり返った事実から新たな提案方法のアイディアが生まれるかも知れません。
 これは組織的な学習につながります。

今年のテーマ「BECOMING MORE」。広い会場内を各国の参加者が行き交っています。

4.上司が留意すべきこと・・・「焦点」と「保留」

 上司が、気づきの支援者になる上で留意すべきことが2つあります。

 一つは、結果の是非や責任追求を焦点に「しない」ことです。指示・命令をする立場でもある上司が、ここに焦点をあてると部下は心を閉ざしてしまいます。

 もう一つは、上司の意見や考えをすぐに出さずに、いったん心に留めておくことです(専門用語で「保留」と言います)。

 上司にとってはジレンマです。
 常日ごろ、管理者・経験者として、状況を瞬時に理解して的確な答えを出すことや、部下の仕事を素早く解釈して正しく導くことが上司の使命だと心得ているからです。

 しかしその使命感のために、自分の意見をいち早く表明すると、「一つの意見」という位置を超越して「ベストな意見」になってしまい、結局、仮定2の思いこみにとらわれているのと同じ結果が引き起こされます。

5.上司の本当の役割・・・「部下の成長」「組織力の向上」「成果の創出」

 そうならないように「保留」が大事なのですが、実践するには上司の役割を掘り下げる必要があります。
 上司には、人材を育てながら組織力を高め、成果を出す責務があります。
 人が育つには、外部からの矯正・指導では限界があり、本人の気づきに基づく自律的な成長力が必要です。
 組織力を高めるには、上層部のプランによるコントロールでは限界があり、組織的な学習が欠かせません。

 そして組織力によってイノベーションが起き、全体の成果を生みだします。この構造を理解すると、「保留」の重要性がよく分かります。

6.イチローから学ぶ「ふり返り」の大切さ

 2013年8月21日、ヤンキースのイチロー選手が日米通算4000本安打を記録したことは記憶に新しいことです。

 その会見で彼は次のように言いました。
 「誇れることがあるとすると、4000のヒットを打つには、僕の数字で言うと、8000回以上は悔しい思いをしてきているんですよね。それと常に、自分なりに向き合ってきたことの事実はあるので、誇れるとしたらそこじゃないかと思いますね」

 これぞ「ふり返り」の威力です。
 一生懸命働いている部下が悔しい結果を真摯にふり返ることを上司がしっかりサポートし、それを糧に本人が成長できたら、と考えるとフィードバックが楽しみにもなってきますね。

7.フィードバックを「未来を創る場」にする

 4回にわたり「怖れ知らずのフィードバック」というテーマで考えてきましたが、評価フィードバックが個人と組織の成長にきわめて重要であることが見えてきました。

 大事なことは、部下の仕事を「貴重な経験」と位置づけ、本人と組織の未来の可能性を探求し、大事な発見を得る「場」にしていくことです。
 上司・部下双方が、未来のために過去を真摯にふり返り、そこから学ぼうという姿勢で臨めば、今まで怖かったフィードバックが、「未来を創る場」となります。

 経営の課題が「予定調和」から「未来探索」にシフトしている今日、このようなフィードバックは会社の成長の原動力になっていくでしょう。

 次回は別の講演をもとに、報酬について考えていきたいと思います。

全米で2番目に高いウィリスタワーの展望台(地上412メートル)から望むマコーミックプレイス(大会会場,中央の平らな建物)

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