米国人材マネジメント協会 年次大会に参加してー4ー

米国人材マネジメント協会 年次大会に参加して(4)
こんにちは。コンサルタントの田中博志です。
前回は、評価フィードバックを「今の時代にふさわしいもの」にするために、次の2つの仮定のうち、仮定1を乗り越える視点についてお話しました。
仮定1:どんな仕事でも、特定の個人にその責任を求めることができる
仮定2:上司は、部下の仕事について何でも知っていて常にベストな指示ができる
ポイントは、「システム全体に目を向け、未来を創るためのふり返りをすること」でしたね。
今回は、それを実現するための「5つのコツ」について説明します。
具体的にするために、前回取り上げた、「台車で運搬中の荷崩れによる製品破損」を例にして話を進めます。
なお、一連のストーリーのにように見ていきますが、実践では5つ全てを話す必要はありません。相手や問題の状況に応じて臨機応変に使い分けてください。
【ふり返りのコツ-1】心配を表す
「いつも一生懸命な○○さんに、荷崩れが起きていることを心配しています。何か組織的な理由があるのではないかと思っています。それについて一緒に考えていきましょう」
――基本スタンスで大切なことは、 本人の「前向きな気持ち」を認めることです(不十分かもしれませんが、誰にも「前向きな気持ち」があるはずですから)。
その上で、本人の責任を追求したいわけではない、むしろ心配しているのだ、という姿勢を示します。
【ふり返りのコツ-2】協力を求める
「今後の荷崩れ防止に必要なことを考えたいのです。それには状況をよく知っている○○さんの協力が不可欠です。ひょっとすると現場だけでなく、他のところでも改善点が見つかるかもしれません。何も恐れなくていいです。見たこと、聞いたこと、感じたことを安心して話してください」
――未来をよくするために協力してほしい、最も協力できるのは○○さんだ、と期待を表します。
これで本人の視点が未来に向きます。
もう一つ重要なことは、「精神的な安全の確保」です。そのために、話した内容によって責めたりしないことを伝えます。
【ふり返りのコツ-3】事実を確認する
「では、荷崩れの状況を確認しましょう。
まずは、ドラマのシーンを外から見ているようにふり返ってみましょう。・・・次に、○○さんがその時に感じたこと、考えたことを教えてください。なお、『今思えば、こうすれば良かった』と思うことは言わなくてもいいです。事実をふり返ってからの方が考えやすいので」
――事実をしっかり確認します。できれば、外面的な出来事と内面的な思い・感情を分けてふり返ります。
なお、個人的な思いや感情もシステム的なつながりの影響を受けていますので無視してはなりません。
ただし、反省点を言ってもらう必要はありません。ここで大切なことは、「その時、何が起きて、何を感じたか」を把握することです。
【ふり返りのコツ-4】周りの状況を話し合う
「○○さん、今確認したような状況が起きた要因として、他に思いあたることはありますか? 現場のことでもそれ以外のことでもいいです。違っていても構いません。何でも思ったことを教えてください。」
――周辺の状況を確認します。本人の視野には限りがあるので、上司から、「作業のしにくさはありませんか?」「忙しい背景は何ですか?」など、必要に応じて視点を提供するといろんな要素が出やすくなります。
【ふり返りのコツ-5】合意する
「ありがとうございました。○○さんの協力のお蔭で、荷崩れの状況とその背景がよくわかりました。・・・施設管理部や営業部に連絡して改善点がないか話し合い、その結果を改めてお伝えしようと思いますが、それでよいですか?
ところで、このふり返りで気づいたこと、話し合っておきたいことや、○○さん自身が今後心がけたいことはありますか?・・・ 今回の問題に関係して、○○さんにぜひ改善してほしい点は・・・」
――ふり返りで得られたことと活かし方について提案し、合意します。
同時に本人の気づきや今後の心がけについて耳を傾けます。
ここまでくれば、「私も細心の注意を払います」と、本人にできる改善策が自発的に出てくるでしょう。また、上司の視点から改善を促したいことがあればしっかりアドバイスし、今後の取り組み方について合意します。
なお、ふり返りの結果、上司自身にも改めるべき点が見えてくることがあります。
そのときは、上司自身の改善点を率直に表すことがとても重要です。
メンツにこだわってはなりません。未来を創るために自分ができることに真摯に向き合う姿勢を身をもって教えるチャンスです。
それこそが「上司の品格」であり、部下からの信頼と尊敬につながります。
シカゴ・マコーミックプレイス(会場)よりハイウェイを臨む
TOC(制約理論)の提唱者であるゴールドラット博士は、「人はそもそも善良である(People are good.)」と言い、人の善意を前提にして深く考えることの大切さを教えてくれました。
何か問題が起きた時、当事者の怠慢や悪気が原因だと決めつけて「ちゃんとやれ!」と叱責することは簡単です。
しかし、そこから得られるものは殆どありません。
そうではなく、当事者の「良かれと思う心」を信じ、善意が結果に結びつかない原因をシステム全体に目を向けて考えると全く逆の展開になります。
組織的な学習が進んで生産性を高める改善策が得られ、上司と部下の信頼関係が深まり、本人はヤル気をいっそう強くし、自らの改善点にも真剣に取り組むようになります。
以上、仮定1の克服方法について詳しく見てきました。ぜひ、実践で活用してみてください。
次回は、仮定2「上司は、部下の仕事について何でも知っていて常にベストな指示ができる」という思いこみを乗り越える方法について考えたいと思います。
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