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ブラック企業問題と企業を取り巻く環境の変化ー11ー

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ブラック企業問題と企業を取り巻く環境の変化ー11ー

ブラック企業問題と企業を取り巻く環境の変化(11) 

 皆さんこんにちは。コンサルタント・社会保険労務士の津留慶幸です。
 「ブラック企業問題と企業を取り巻く環境の変化」というテーマで、10回にわたり法律や裁判例、経営に与える影響等をご紹介してきましたが、今回がこのテーマの最終回になります。

 最後は、労働法の改正を2つご紹介したいと思います。

 どちらも一見、ブラック企業問題と関係なさそうですが、対応に一定程度の手間やコストがかかるものであり、経営や労働環境に与える影響は少なくありません。
 法改正に対応したために、そのしわ寄せで別の部分の労働環境が悪化したということのないように注意していただきたいと思います。

6.最近の法改正とこれからの課題

(1)パートタイム労働法の改正

 平成27年4月1日、改正パートタイム労働法が施行されます。
 主な改正ポイントは、次の通りです。

i)  正社員と差別的取り扱いが禁止されるパートタイム労働者の対象範囲の拡大
ii)  「短時間労働者の待遇の原則」の新設
iii) パートタイム労働者を雇入れたときの事業主による説明義務の新設
iv) パートタイム労働者からの相談に対応するための事業主による体制整備義務の新設

 これだけでは、何のことかわかりにくいので、簡単に1つ1つ説明していきたいと思います。

i) 正社員と差別的取り扱いが禁止されるパートタイム労働者の対象範囲の拡大

 これまでにも「正社員と差別的取り扱いが禁止されるパートタイム労働者」については次のような規定がありました。

a.職務の内容が正社員と同一
b.人材の活用の仕組みが正社員と同一
c.無期労働契約を締結している

 これら3つの条件を満たしている場合は差別的な取り扱いが禁止され、逆に、正社員より

  • 仕事の範囲が狭く、責任が軽い
  • 異動・転勤などがない、あるいは範囲が狭い
  • 有期契約の社員
    は差別的取扱い禁止の対象ではありませんでした。

 しかし、今度の法改正で規定が変更され、

a.職務の内容が正社員と同一
b.人材の活用の仕組みが正社員と同一

となり、「c.無期労働契約を締結している」の要件が削除されます。

 この改正には次のような背景があります。

  • 非正規労働者が雇用者の3分の1を占めるようになったが、依然として正規社員との待遇差は大きい。社会の安定・経済の発展のためにも、非正規社員の多数を占めるパートタイム労働者の待遇改善が求められているが、差別が禁止される3つの要件(上記a、b、c)を満たす人は極めて少なく、このままでは改善が進む可能性が低い。
  • 人口・労働力が減少するなかでは、女性、高齢者等の就業を促進し、高い意欲を持って働き続けてもらう必要がある。また、多様な働き方を促進するためにも、このような層の受け皿となっているパートタイム労働者の待遇改善が求められている。
  • 平成25年4月に施行された改正労働契約法において、「期間の定めがあることを理由とした不合理な労働条件の相違が禁止された」ことへの対応(労働契約法とのバランスを取る)。

 この改正(「c.無期労働契約を締結している」の削除)により、対象となる労働者が10万人程度増えるとも言われています。

 ただ、増えると言っても実際には、パートタイム労働者を相当数雇用している一部のサービス業以外は「a.職務の内容が正社員と同一」「b.人材の活用の仕組みが正社員と同一」というパートタイム労働者は少なく、「c.無期労働契約を締結している」の要件があってもなくてもあまり変わらない企業が多いと思います。

 もし、この改正の影響を考える場面があるとすれば、ひところ話題になった「限定正社員」を導入しようとする場合ではないでしょうか。

 限定正社員とは、まだ明確な定義はありませんが、勤務地や職種、労働時間などを限定した雇用形態のことで、多様な正社員・ジョブ型正社員とも呼ばれており、女性の就労の促進や多様な働き方の新たな受け皿として期待されています。

 一般的に、勤務地や職種、勤務時間を限定する代わりに正社員より賃金は低くなりますが、正社員と同程度の福利厚生等が受けられ、雇用期間にも定めがないとされています。

 国を挙げて検討が図られていることは、皆さんも報道等でお聞きになったことがあるのではないでしょうか。
 会社側としても、限定正社員制度があれば採用競争や社員の定着にメリットがあると考えられます。

 これから限定正社員の制度を作る場合、その制度内容にもよりますが、パートタイム労働者よりやや高待遇であることが想定されます。
 しかし、勤務時間を限定し業務負担も軽減した限定正社員が、実質的に従来のパート社員とあまり違いがないという会社もでてくるのではないでしょうか。そうなると、限定正社員とパートタイム労働者の処遇を同じにする必要があるか、同じにするとしたらパートタイム労働者の処遇を引き上げるのか、あるいはパートタイム労働者を限定正社員に転換させるのかということを検討する必要があります。
 処遇の引き上げはパートタイム労働法の改正主旨に沿ったものであり素晴らしいことですが、会社の負担は増加することになります。

 今後、国がどのような方針を示すのか、通常の労働者(いわゆる正社員)・限定正社員・パートタイム労働者の関係は法的・実務的にどのように整理されていくのかなど、まだ定かではないことも多くあります。
 今回はパートタイム労働法の改正ですが、関連する法律を含め、これからどのような影響がでてくるのかを注視し、自社への影響を見極めて対応する必要があります。

ii) 「短時間労働者の待遇の原則」の新設

 パートタイム労働者と正社員の待遇に差を設ける場合、「その待遇差が、職務の内容、人材活用の仕組み、その他事情を考慮して不合理と認められるものであってはならない」という規定が創設されます。
 この規定は全てのパートタイム労働者を対象としています。

 「不合理」という言葉は労働法関連の法律や裁判例をご紹介するときによく出てくる言葉ですが、今回の改正法について、どのような状況が「不合理」に該当するのかは現段階ではわかりません。こちらも、今後の推移を注視しておく必要があります。

iii) パートタイム労働者を雇入れたときの事業主による説明義務の新設

 パートタイム労働者を雇入れたときは、実施する雇用管理の改善措置の内容について説明する義務が課せられます。
 厚生労働省では、説明義務の具体例として、

・賃金制度はどうなっているか
 (どの要素を勘案して賃金を決定したか)
・どのような教育訓練があるか、どのような福利厚生施設があるか
 (どの教育訓練や福利厚生施設がなぜ使えるか、あるいはなぜ使えないか)
・どのような正社員転換推進措置があるか
 (正社員への転換推進措置の決定にあたり何を考慮したか)
など

を挙げています。
 また、説明を求めたことによる不利益な取り扱いは禁止されています。

iv) パートタイム労働者からの相談に対応するための事業主による体制整備義務の新設

 この他に、パートタイム労働者からの相談に対応するための体制整備が義務づけられました。
 相談対応者(事業主も可)を決めるだけでなく、相談窓口は文書の交付などにより周知する義務もあります。

 これらは、パートタイム労働者に関する法改正ですが、実際の対応のために、正社員の人事・総務担当者の負担は増えるでしょう。
 また、パートタイム労働者の待遇改善によって正社員に配分する人件費が少なくなることも考えられます。

 しかし、その結果として正社員にサービス残業を強いるようになっては意味がありません。法改正に適切に対応しつつ、会社全体が良い方向へ向かうための環境・制度作りが求められます。

(2)ストレスチェック制度の導入

 平成27年12月1日、労働安全衛生法が改正され、「ストレスチェック制度」が導入されます。
 これは、いわゆるうつ病等のメンタルヘルス対策の強化を目的として、

・従業員50人以上の会社に医師または保健師による検査(ストレスチェック)を義務づける
・検査結果を通知された労働者の求めに応じて医師による面接指導を実施し、その結果、医師の意見を聴いたうえで、必要な場合には作業の転換、労働時間の短縮、その他の適切な措置を講じなければならない

というものです。

 具体的な流れは次の通りです(厚生労働省HPより)。

 メンタルヘルスの問題は増加していますが、対応が難しく、また会社によって対応も千差万別であるため、法律により一定の規制と方向付けがされたものと思われます。
 しかし、会社の経営者、人事担当者の立場からすると、ストレスがあるということをどのように判断するのか、そのストレスの原因がプライベートではなく仕事であると言い切れるのか、など気になる点が多いと思います。

 この点について、まだ詳細は確定していませんが、「職業性ストレス簡易調査票」をベースにチェック項目が作られるのではないかと言われています。

 「職業性ストレス簡易調査票」は東京医科大学のHPで公開されていますので、興味のある方はご覧になってみてください(http://www.tmu-ph.ac/topics/stress_table.php)。

 また、チェック項目・方法の妥当性以外にも、

・労働者側に受診義務はないため、診断を受ける人と受けない人にばらつきが出る
・「労働者から申し出があった場合は医師による面接指導を実施する」とあるが、メンタルヘルスはデリケートな問題なので、労働者が申し出にくいのではないか
・会社は面談する医師を確保できるのか。会社の費用負担が重くなるのではないか
・作業の転換、労働時間の短縮を求める社員が多数出た場合、他の労働者の負担が増加するのではないか
・メンタルヘルスというわかりにくい問題であるため、この制度を悪用しようとする人を防止できるのか

といったことが懸念されています。
 施行は1年以上先であり、これからより詳細なことが決まっていくと思われますので、厚生労働省からの発表を注目して見ていく必要があります。

 メンタルヘルスの問題はコストだけでなく、社員一人一人の働き方、仕事に対する考え方とも密接に関わることですので、社員を巻き込んだ全社一体的な改善を検討・実施してください。

 今回で全11回にわたる「ブラック企業問題と企業を取り巻く環境の変化」のご紹介を終わります。
 「ブラック企業」という言葉は良くも悪くも広く知られるようになりました。言葉だけが独り歩きしている面もあり、会社側も対応に苦慮する場面があると思います。

 しかし、会社を取り巻く環境は確実に変化しており、以前は問題にならなかったことが、大きなトラブルに発展する可能性は高くなっています。

 また、そのトラブルが経営全体に影響を与えることにもなりかねません。
 「問題になってから、部分的に対処する」ではなく、日ごろから社員の声に耳を傾け、全体への影響も配慮した対応を心掛けていただければと思います。

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