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ブラック企業問題と企業を取り巻く環境の変化ー6ー

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ブラック企業問題と企業を取り巻く環境の変化ー6ー

ブラック企業問題と企業を取り巻く環境の変化(6)

 皆さんこんにちは。コンサルタント・社会保険労務士の津留慶幸です。
 前回、「サービス残業問題」について考える上での基礎知識として、残業代の算定基礎やみなし労働時間制の要件等について解説しました。
 今回も引き続きこの問題について解説していきたいと思います。

3.サービス残業問題

(4)監督指導による賃金不払い残業(サービス残業)の是正結果

(1)~(3)はこちら

 皆さんは、1年間でどのくらいの企業がサービス残業を指摘され、どれくらいの金額を支払っているかご存知でしょうか。
 厚生労働省が公表しているデータによると、平成24年度に労働基準監督署が是正を指導した賃金不払い残業(サービス残業)は次のとおりです(支払額が100万円以上のみ集計)。

 業種別に見ると、次のようになります。

 この結果を見て、どのような感想を持たれたでしょうか。

 1年間で約1200社という数字は、日本全体の企業数からするとそれほど多くないように感じられるかもしれません。
 しかし、過去10年間、毎年1000社以上が是正指導を受けており、10年間で合計1万5千社以上と相当な数になります。

 また、この1200社は割増賃金の支払額が100万円以上での集計ですので、100万円未満を含めると、かなりの企業が支払いを命じられたと推測されます。

 業種も多岐にわたっており、昨今「ブラック企業」対策が強化されているという状況を考えると、「わが社の業種に限って指導されることはない」などと考えることはできません。
 支払額は平均819万円、中には1社で億単位のケースもあり、万一指導を受けた場合、経営に与える影響も甚大です。

(5)間違った対応事例

 これまでも述べてきたとおり、厚生労働省の「ブラック企業」対策の強化やインターネットで知識・情報が容易に手に入るようになったことにより、急速に世間や従業員の目が厳しくなっています。また、前述したように労働基準監督署から指導を受けると財務面でも大きな負担が生じます。

 そのため、トラブル回避や会社負担抑制のために対策を打つ会社も増えてきました。
 しかし、とられた対策をよく見てみると、中には間違った知識・認識に基づく不適切な内容から、逆に事態を悪化させかねないものもあります。

 ここからは、よくある間違った対応の事例をご紹介したいと思います。

i)残業代は支払うが、残業時間に上限を設け上限以上の申告を認めない
 これまでは残業代を支払っていなかったが、これからは残業代を支払うことにする。ただし、残業時間に上限を設けるという方法です。
 残業時間が長ければ残業代の負担も大きくなるので、残業時間を減らそうという考えは間違っていませんし、残業時間の削減は積極的に行うべきです。

 そのために、わかりやすい削減目標(目安)として残業時間の上限を設定することも悪くはないでしょう。
 しかし、残業時間の削減を現場の管理職任せにし、管理職の責任を厳しく問うだけでは、残業時間を実質的に減らすことは難しいでしょう。

 そればかりか、管理職が表面的に自部門の残業が減ったように見せようとして、仕事の量はそのままで、単に上限以上の残業申告を認めないという対応をとりかねません。
 このような行動は、結局、サービス残業を生むことにつながります。

 もし、残業時間の目標(目安)を設けるのなら、同時に会社を挙げた残業時間削減の取り組みを実行し、それでも上限を超えたら超過時間分もきちんと支払うという態勢が必要です。

ii)本来、「みなし労働時間制」を適用できない人にも適用する
  「みなし労働時間制」については前回解説しましたので、詳しくはそちらを見ていただきたいと思いますが、「みなし労働時間制」は適用できる業務や職種が限られています。また、場合によっては労使協定等の手続きが必要になります。

 それらを無視して「わが社はみなし労働時間制です」と主張しても認めてはもらえず、実態としてサービス残業をさせている、と判断されてしまいます。 

iii)従業員の大半を管理職として扱う
 本当に管理職として任せる仕事があり、適切な権限の付与、賃金等の処遇が行われるのなら管理職として扱っても構いません。
 しかし、サービス残業問題を解消する目的で管理職扱いの対象者を増やす会社は、多くの場合、新たに「名ばかり管理職」の問題を引き起こしているように思われます。

 また、「名ばかり管理職」という言葉は広く知られていますので、不自然な管理職の増加は従業員の会社不信を生む恐れもあります。管理職を安易に増やすことは避けなければなりません。(「名ばかり管理職」については回を改めて解説したいと思います。)

iv)年俸制を導入して残業代を支払わない
 時折、「年俸制=残業代不要」と思っている方にお会いしますが、これは間違いです。
 年俸制であっても残業代は支払わなければなりません(管理職を除く)。

 「年俸制」というとスポーツ選手のように、「労働時間ではなく成果に応じて賃金を支払えばよい」と思いがちですが、従業員と会社の関係は業務請負契約ではなく労働契約です。
労働契約である以上、成果に関わらず、残業代は適切に支払う必要があります。

vi)手当の数を増やして残業代の算定基礎給を下げる
 残業代の算定基礎給についても、前回ご紹介しました。
 残業代の算定基礎に含めなくてよい手当は法で定められており、それ以外の手当は全て算定基礎に含める必要があります。

 手当を設定すること自体は会社の自由ですが、それで残業代が抑えられるとは限らず、かえって手当項目が増えたために管理が煩雑で事務処理の残業が増えてしまうかもしれません。

v)現在の賃金総額の中に固定時間外手当100時間分を含んでいることにする
 現在支払っている賃金に残業代を含んでいる(含んでいた)ことにして、人件費負担を増やすことなくトラブルを回避しようとする方法です。
 現在の賃金総額が十分に高く、従業員にもきちんと説明し納得してもらっているのであれば、一定程度は残業代を含んでいることにすることはできると思います。

 しかし、この例のように100時間も含んでいるという考え方は問題です。
 本シリーズの第30回で、36協定の限度基準および過労死の認定基準(目安)となる残業時間について解説しました。

 36協定の上限時間は「原則、1カ月45時間」、過労死の認定基準は「発症前1カ月間におおむね100時間、または発症前2カ月間ないし6カ月間にわたって1カ月あたりおおむね80時間を超える時間外労働」とされています。

 現在の賃金に100時間分の残業代を含んでいるということは、36協定の基準も過労死認定の基準も無視しているということであり、トラブルになった場合、会社側の主張が認められない可能性があります。

 ここで挙げたものはほんの一例ですが、いずれもせっかくの対策が効果がなかったり、逆に悪影響を及ぼしかねないものです。
 このように、安易な方法でサービス残業問題を解決することはできません。的確に解決するためには正しい知識・認識と、地道な取り組みが不可欠であり、全社を挙げた対策が打てる環境づくりも重要になります。

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