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強みは「ステンレス容器の特注品」。大手が参入しない特異なマーケットで競争優位を築く☆日東金属工業株式会社様ー1ー

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強みは「ステンレス容器の特注品」。大手が参入しない特異なマーケットで競争優位を築く☆日東金属工業株式会社様ー1ー

 人と組織が自然とイキイキしてくる独自の取り組みや人事施策について紹介する本連載第19回からは、シリーズ第7社目となる日東金属工業株式会社の工夫を紹介していきます。
 今回は、ステンレス製品部部長の大山氏への取材をもとに、中小企業としての強みが活きる同社の「ニッチなマーケット」についてお伝えしていきます。(編集部)

日東金属工業株式会社の工夫(1)

数千社の顧客を相手にする超ロングテールモデル

 ステンレス加工といえば、新潟県燕市が有名ですが、埼玉県八潮市にも、創業以来60年一度も赤字なしという超優良企業があります。日東金属工業株式会社です。ステンレス加工のなかでも、「ステンレス容器の特注品」というニッチなマーケットで実績を積み、競争優位を築いています。

 日東金属工業を紹介する記事の初回は、その「ニッチなマーケット」に焦点を当てたいと思います。

 創業当初は、ステンレスの鍋や釜など、ごく一般的な厨房器具を作っていた日東金属工業。しかし、それこそ新潟の燕が有名なマーケット。また中国製の安い製品にも押され始めたところで目を向けたのが工業用のステンレス容器でした。

 ここからが同社のユニークなところです。当初は専門商社を通じて、大量生産が可能な標準製品(規格品)のみを販売していました。そのうちに、同社の標準品を購入した顧客企業から「この寸胴にノズルをつけてほしい」といった要望が、個別に寄せられるようになったのです。つまり顧客ごとのカスタマイズです。

 「それを面倒と思わずやってあげたんですね。『わかりました。蛇口一個作るぐらい、できますよ』と」と語るのは、同社ステンレス製品部部長の大山正記さん。「その真面目さが、当社の一番の強みだと思っています。技術自体が優れているというよりも、他の企業が面倒がってやらないことをやる、ということです」。

 同社が、特注品に対応しやすい製造法を採用していたことも幸いしました。他のステンレス容器メーカーの多くはプレス金型で作ります。一方、日東金属工業は1枚のステンレス板を曲げて溶接するという製造法。いわば手作りです。それも「1人が1つの製品を作り切ります」と大山さん。素人目にはこちらのほうが面倒のようにも思えますが、金型代も、金型をセッティングする手間もかかりません。そのため。一点物の特注品を作りやすいのです。

 「手作業の分、量産しにくい、一定以上の技術者がいないとできないといったデメリットもあります。どうして手作業を取り入れたのか、理由は定かではないのです。ただ創業者である父からは『プレスが嫌いだった』と聞いています。プレスには大きな機械が必要で、設備投資もいりますが、それ以上に、どうしても怪我をする人が出てしまうんです。プレス職人といえば、昔は指が1〜2本ない人も当たり前にいました。父はそれが嫌だったと。おかげで当社は、創業以来けが人は出ていません」

 個別オーダーのボリュームは、次第に増えていきました。もっとも、受注するのが一点物では、顧客ごとの売上は限られるはず。

 これをカバーするのが、「お客様は何千社いるかわからない」「2万人に当社のメールマガジンを配信している」というほどのロングテールモデルです。業界も製薬会社、食品メーカー、化学メーカーなど多岐にわたります。特注のステンレス容器など、顧客にとっては一生に一度の買い物かもしれません。しかし、そのような顧客が何千社とあれば、十分に売上を確保できるというわけです。

「面倒な仕事」「美味しくない」が他社にとっての参入障壁に

 大山さんによると、こうしたビジネスモデルにおいて、競合になるのは地場の鉄工所だとか。大企業の工場が近隣にあれば、そうした鉄工所に特注品を作らせるケースがあるからです。しかし品質や生産量においては、ステンレス容器を専門とする同社に一日の長があります。

 それに同社の強みは特注品だけではありません。特注品に注力する以前に標準品のマーケットを押さえていたことが、有利に働きました。

 「日本の製造業60万社を支える専門商社のカタログに、標準品を載せてもらっています。そうして標準品のお客様からの信頼があるからこそ、『これもお願いします』と特注品を注文していただけるのです。本当のゼロから始めようと思っても、できないビジネスだと思いますね。また特注品といっても、イチから作るものもあれば、標準品の図面をカスタマイズして作るものもあります。そうなると、何万という図面を持っている当社は強い」

 それでは、大手企業は競合にはならないのでしょうか。 「第一に、大手が参入するには、市場規模が小さいのです。つまりビジネスとして『美味しくない』。それから......なにしろ面倒な仕事なんです。自分たちでやっていてもそう思いますから(笑)」

 その面倒な仕事の一端を、ご紹介いただきましょう。例えば、ラーメン店で見かける大きな寸胴鍋があるとします。これがスタートです。特注品は、例えばそこに「排水できるよう、蛇口をつける」「水位がわかるよう、窓をつける」「足をつける」「底を傾斜させる」「取っ手をつける」「重ねて積めるようにする」......。これを、1つずつ手作業で行うのですから、「なにしろ面倒」というのも納得です。

 「マーケットの特異性のことなら、いくらでも語れます」と大山さん。ステンレスは腐らない」というのも、その1つです。

 「つまりデッドストックにならないんです。製品のモデルチェンジもなければ、流行もない。ぶっちゃけた話、売れなくてもとっておけるんです。倉庫がなければ、スクラップ業者に買い取ってもらうことができます。いつかは売れると思えば、倉庫において管理しておけばいい。いつか使える時がきます。僕が新商品開発のメンバーに言っているのは、世の中にないものをどんどん作れ、売れなくてもいいからWebに載せろ、と。それが全部、私たちの仕事を生み出す資産になりますから」

 マーケットの特異性が、超優良経営の礎となっていることはわかりました。次回以降は、その環境で育まれた独自の組織運営や人材育成についてご紹介します。

(次回へ続く)

日東金属工業株式会社様のホームページはこちら


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