第10回 報酬システム(2)

第9回では、給料の持つ意味と給料を支払ううえでの原則ついて述べました。
第10回では、報酬システムの中でも、賃金表と評価基準の持つ意味について取り上げていきます。
組織編制(2)
(1)給料決定のためのツール
みなさんの会社では、従業員の給料はどのようにして決まっているでしょうか。労働基準法の時間外手当などの一部の規定を除いて、給料の決め方自体に法的な決まりはなく、会社によって実にさまざまな方法で決められています。
中小企業の中には、毎年、経営者自ら鉛筆をなめながら決定されている会社もあるでしょう。この場合、多くの経営者は頭を悩ませながら、個々の給料を細かく調整されているはずです。
従業員のことを考え、苦労しながら決めている給料ですから、できれば、従業員が気持ち良く働くことを後押しするものであって欲しいと思います。
しかし、従業員の立場からすると、給料決定のプロセスが全く見えないため、なぜ自分の給料がこれだけ上がった(または上がらなかった)のか、疑問を持たれても仕方がありません。
経営者にとっても、従業員の顔や名前と業務内容が一致するような小規模のうちはまだなんとかなるかもしれませんが、数十人、数百人、数千人となるともう鉛筆をなめながらというわけにはいきません。
ここで、鉛筆をなめて給料を決定する状態から、組織の成果基準や行動基準にそって各人の仕事ぶりを評価し、支給する側も支給される側も納得できる客観的なルールに基づいて給料を決める段階へ移行することが求められます。そのためには、賃金表や評価基準といった具体的なツールが必要になります。
(2)賃金表と評価基準
賃金表は、各人の基本給を決めるうえでの重要な物差しとなるものです。経営者側から見ると、各人の給料のバランスがわかり、毎年どれだけ昇給させることができるか(もしくは昇給させられないか)がわかるようになります。
従業員の側からすると、今の自分の基本給の高さや、将来どれくらいまで基本給があがるのかを確認し思い描くことができるようになります。
一方の評価基準は、従業員一人ひとりの働きを、求められる成果の基準や行動の基準に照らして評価するためのものです。この評価によって、賞与の額や昇給の額が決まります。
給料に直接的に影響のあるものですから、評価の基準が納得性の高いものであればあるほど、評価する方もされる方も仕事に集中して取り組むことができるようになります。
賃金表と評価基準に共通して言える大事なことは、どちらも客観的に目に見えるものであるということです。
経営者の頭の中にしかない基準やルールでは他の人に任せることはできませんが、客観的な賃金表と評価基準というツールがあれば、管理職や人事担当者にも評価や給料の決定を任せることができます。経営者はその内容を精査し、調整、承認するという流れを構築できれば、経営者自身の負担は劇的に改善されます。
管理職も人材マネジメントに力量を発揮できるようになり、幹部人材育成につながります。人事担当者も専門分野を通して組織に貢献できるようになり、自分の仕事にやりがいが持てるようになります。
賃金表や評価基準があるからと言って、従業員が動機づけされるわけではありません。ですが、これらがないと従業員は不満を持つようになります。
従業員にとって給料は、生計を立て家族を養うために欠かすことのできないものですから、そこに不満や不安を覚えると、働くことに集中できなくなります。
そのような状態では、いかに経営者が立派なことを言っても従業員の心には響かないでしょう。賃金表や評価基準は、従業員が安心して働くための最低限の制度環境として必要なものなのです。
(3)独自の制度
では、賃金表や評価基準はどのようにして手に入れればよいのでしょうか。
今はインターネットや書籍などで調べれば、簡単に雛型や他社事例を手に入れることができます。ですがそれをそのまま真似して使うことでは意味がありません。
賃金表や評価基準は、会社にとっては限られた人件費を効果的に配分し、従業員を成果に向かって貢献させるための大事なツールであり、従業員にとっても自分の働きや給料を知るための手がかり・尺度となるものです。
これらは、それぞれの会社が独自に開発し、マネジメント構造の一部として作りこむことで初めて効果を発揮します。
そして、賃金表や評価基準がその効果を最大限に発揮するためには、従業員は自分にどのような組織上の役割・責任があり、どのような具体的な貢献が求められているのかをきちんと理解しておく必要があります。理解していなければ、求められる成果をあげることも正しい行動をとることもできません。
また、その理解は従業員に任せきりにして、ただ「理解しろ」とお尻を叩くだけでは深めることはできません。従業員が自分の果たすべき責任、求められる行動を理解できるためには、まずは仕事の足場となる組織編成を明瞭なものにし、組織における位置と役割を明確にしておく必要があります。
この組織における役割責任については、次回(第11回)で詳しく述べたいと思います。
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