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第9回 報酬システム(1)

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第9回 報酬システム(1)

第8回では、組織が自分自身の全体性を維持するための評価基準を取り上げ、どのような視点で評価すべきかについて述べました。

第9回からは、報酬システムについて取り上げていきます。

組織編制(1)

(1)給料はコストではなく、会社のエネルギー

 企業は社員に給料を毎月払っています。人を雇っているのであれば給料を払わなければなりません。社員はその給料と引き換えに労働力を提供し、生産・販売を行います。

 また一方で、社員は受け取った給料で消費を行います。消費者に商品・サービスを購入してもらわなければ企業は利益が出せず、給料を払うこともできません。

 このように、労働力と消費には密接な相互依存関係があり、それらを媒介するものが給料なのです。
 そして、この相互依存関係がうまくいくかどうかは、社会・経済の発展に大きな影響を与えます。

 かつて、高度成長、安定成長の頃の日本は、生産性の向上・雇用の拡大・賃金の上昇、それに伴う消費の拡大と好循環が続いていました。

 しかし、今の日本は経済の低迷・縮小均衡の状態にあることは明らかです。少子高齢化、財政赤字、経済のグローバル化、世界的な金融問題など原因はさまざまありますが、企業自身にも原因がないわけではありません。

 給料を経済活動に必要不可欠な投入としてではなく、必要以上のコストとみなし、コストカットによって利益をあげる企業がかつてより増えたように感じます。

 どこの企業も最初は、自社の利益をなんとか確保したいという思いだったはずです。しかし、その波は一気に日本中に広がり、気が付いてみたら給与所得者である消費者は疲弊し、社会の活力が失われていました。

 給料を減らす、低く抑えるという手法は一時的に企業の利益を生み出してくれたかもしれませんが、 それが社会全体の大きなうねりになったとき、最終的には企業自身の首を絞める結果となったことは明らかです。

 これは個々の企業だけの力でどうこうできる問題ではないように見えますが、どこかの誰かが頑張れば(自分はなにもしなくても)解決するという問題でもありません。

 消費を支える必要経費を企業が出さないのであれば、巡りめぐって今度は、企業自身が社会から退場を迫られることになりかねません。 

(2)給料を支払ううえでの原則

 給料を支払い、消費を活発にしなければ、経済全体が縮小していくということは共感していたける方も多いと思います。

 しかし一方で、むやみに給料を払い、その水準を上げ続けるわけにはいかないこともわかっています。

 では企業が給料を支払っていく際に、どのようなことに注意を払うべきでしょうか。

 まず第一は、生活給として十分であるかということです。戦後、高度成長から安定成長期には、世代ごとにかかる生計費に十分注意して賃金の最低水準を決めることが当然の配慮とされていました。今はどうでしょうか、この考えは見失われ、結果として、結婚できない独身者や子どもを作れない共働き世帯を多く生み出す要因の一つとなっています。

 結婚しないことや子ども作らないことは本人の自由ですが、経済的理由によりそれしか選択できない人ばかりだとすれば、社会の先行きは暗いものです。

 そうならないためにも、経験や世代相応の給料を払えるように、世代間で賃金を配分する仕組みが必要です。

 次に、その給料が人材を引きつけるものでなければなりません。

 仕事を選ぶ基準は給料の額だけではありませんが、よい人材を引きつけるためには世間相場を下回るよりは上回る方がいいのです。よい人材はどこの企業も欲しいですから、自社の賃金が世間相場を下回っていると他社に後れを取ることになります。

 今は世間相場並みの給料を払いたくても払えないこともあるでしょうが、その状態から脱却するシナリオは用意しておきたいものです。

 ただし、賃金は高ければ高いだけ良い、というわけでもありません。 世間相場を度外視した高給は、従業員の慢心や既得権意識を呼び起こす場合がありますし、どこまでも上げ続けていればきりがありません。

 経営に余裕があるのであれば、賞与として多く出すほうが賢明でしょう。毎月、固定的に支払う給料を上げすぎてしまうと経営を圧迫します。 毎月の給料は安定的に支払えるようにし、利益の還元は賞与で行わなければなりません。

 現在すでに経営を圧迫するようになってしまっているところは、正しい手順を踏んで、早急に是正される必要があります。

 3つ目に、給料は、組織の成果に対する各人の役割と責任を強化するものでなければなりません。そのためには、組織編制が明瞭なものであること、各人の役割責任が明確になることが前提となります。組織編成が混乱したまま給料の基準を明確にしようというのでは、順序が逆です。

 4つ目に、給料は従業員の動機づけを保証するものである必要があります。少なくとも動機づけを阻害するものであってはなりません。そのためには、給料の基準は公開する必要があります。社員に説明できない決め方は不満を生み、動機づけを不可能にします。

 また、動機づけは短期的ではなく、長期的に持続してこそ意味があります。お金の力で従業員を釣ろうというアメとムチのような使いかたでは明らかに限界があります。むしろ、お金が動機づけに与える影響を中和し、お金のことを気にすることなく仕事に集中させなければいけません。

 5つ目に、給料は柔軟な組織運営と人事配置を阻害しないものでなければなりません。組織内に身分や人的序列を作るような給料の決め方は、組織に歪みや混乱をもたらします。

 最後に、給料は企業の戦略とマネジメントの成長を促す必要があります。

 組織の今後を担う経営幹部候補、ミドルクラス、スペシャリストなどの育成を促し、彼らが安心して仕事に専念し、新たな機会に挑戦できる環境として、それは必要なものです。

次回はさらに、報酬システムの中でも核となる賃金制度について解説を進めていきます。

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