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第3回 事業と顧客価値

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第3回 事業と顧客価値
前回までは人材マネジメントを考える端緒となる、「仕事のなりたち」について述べてきました。 「仕事のなり立ち」について理解を深めていただくために、皆さんが身近でイメージしやすい「働くということ」と「消費」についての切り口から話をしました。

今回は少し目線を変え、「事業と顧客価値」について話をしていきたいと思います。
事業を行い、顧客価値(顧客が受け取るメリット)を生み出している主体は企業です。その企業の中で人材マネジメントは行われています。

企業における人材マネジメントを考えるためには、「企業」とはどのようなものか理解しておく必要があります。しかし、企業と一口に言っても様々な形態・段階があります。そこで、話をわかりやすくするために、今回は企業の初期、あるいは前段階である個人事業を取り上げてみましょう。

事業と顧客価値

1.個人事業

(1)個人事業のなりたち

 ここで言う個人事業とは、組織に属さないで一人で稼いでいる人(職業)のことです。例えば、個人で営んでいる農家、商店、税理士、弁護士などが挙げられます。彼らは事業を営んでいるのですから、もちろん顧客がいて、その顧客に価値を提供し、対価を得て生活をしています。

 彼らが個人事業を始めたきっかけは様々でしょうが共通していることは、そこに「仕事がある」、ということだと思います。仕事があるからこそ、事業がなり立っているはずです。「仕事がある」とは、顧客がいて、商品やサービスを提供することで対価を得ることができる、ということです。

 この「仕事がある」という状態は、 大企業で働いていたり、代々受け継いてきたお客さんを持つ人たちにとっては、当たり前のことかもしれません。ある程度の顧客、ある程度の収益、その収益を生む仕組みがすでにある世界では、「仕事がない」ということの本当の意味を理解することは難しいかもしれません。
 
 しかし、そういった人たちも、新しい事業を立ち上げ、一から仕事を始めるときは非常に苦労するはずです。何よりもまず、顧客に評価してもらえる仕事をして、商品サービスを顧客に買ってもらわねばなりません。

 仕事を作り出すときは、成果に集中する必要があります。ただし、成果を急ぐあまりやみくもに商品やサービスを決めることはできません。自分たちが顧客にどのような価値を提供するのかという、しっかりとした見通し、ビジョンを持つ必要があります。顧客が何に価値を感じ、どれくらいの対価を払うのか。それによって自分たちはどのような収支になるのかを、じっくりと考えねばなりません。

 これから始める仕事は顧客によりよい価値をもたらすのかを考え、実行し、検証する。思考錯誤の連続であるはずです。この思考錯誤の繰り返しが、いずれ安定した成果を生む仕事になり、事業をしっかりとしたものにしていきます。

(2)顧客にもたらす価値とマーケティング

 思考錯誤を繰り返した結果、仕事の中身が安定したものになったとしても、顧客が途絶えてしまっては価値を提供することも、収益を得ることもできません。

 事業を営むには顧客を開拓し、獲得するマーケティングが求められます。対象市場を絞り込み、自らの商品・サービスが他とどう違うのかを明確にし、その商品・サービスは顧客にどのような効用・価値をもたらすのかをアピールすることが重要になります。

 もたらされた効用・価値が真に顧客の問題や悩みを解決するものであり、かつ納得のいく価格であることが顧客に伝わっていけば、自然と売れるようになっていくでしょう。夢のような話に聞こえますが、繁盛している個人事業家は実際に、顧客のほうから近寄ってくるようなモデルを作っています。

 ただし、ここで言う、顧客にもたらす(顧客が受け取る)効用・価値は「結果」であり、「原因」となる確かなビジョンと正しいマーケティングがあってこそのものです。確かなビジョン(原因)に基づく意識的なマーケティングに努力を集中しなければ、顧客への効用・価値の提供(結果)も実現できません。

(3)個人事業の収入とリスク

  個人事業の場合、売上からかかった仕入れコストを引いて、残った粗利益がそのまま事業収入になり、自分の報酬にも直結します。

 そのため、個人事業家は組織で働く人よりも売上志向であるはずです。また、売上をもたらしてくれる顧客への志向も強くなります。このことは個人事業家にとって相反する悩ましい問題を引き起こします。

 個人事業家は、個人(つまり一人)で仕事をするため、受注と稼働を両立させる必要があります。売上のために受注を増やせば仕事がこなせなくなり、顧客満足が下がるかもしれません。1つ1つの顧客を大切にして受注が疎かになれば売上が伸びません。

 設備投資をして仕事の効率を上げることも考えられますが、投資をすれば回収するために売上をさらに伸ばす必要があります。

 つまり、事業を拡大したい気持ちがあったとしても、個人事業であるうちはむやみに手を広げることはできません。手を広げることができなければ、少数の顧客に依存するなど不安定な経営を強いられることにもなります。個人事業は良い点もありますが、やはり限界があるのです。 

 (4)企業の果たす機能と役割

 現実的に考えて、誰もが個人事業家になれるわけではありません。アイデア、バイタリティ、財力などが揃っていなければ難しいでしょう。そのため、多くの人は企業に勤めています。

 企業は市場経済における生産活動の主役です。「企業」は、人によって起業され、営まれ、マネジメントされていますが、単なる人の集合体を超えた社会的な存在でもあります。顧客に価値をもたらし、大きな雇用を創出することで社会に貢献しているのです。

 企業で働く人々は、企業を通して社会活動を行い、収入を得て、働きがい・生きがいを見出しています。逆に、企業が生み出す雇用がなければ、多くの人は収入や働きがいを得ることはできず、人が持っている能力を発揮することも難しくなります。

 次回はこのような役割をもつ、企業の価値についてもう少し詳しく考えを述べていきたいと思います。

  

 連載の内容は、『原因×集中×結果の人材マネジメント方程式』(菊谷寛之著)に詳しく書かれています。興味を持たれた方は、当社のホームページからお申込み・ご購入ください。

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