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「2013年度下半期の景気動向と年末賞与を予測する」(2013年11月景況トレンド)

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「2013年度下半期の景気動向と年末賞与を予測する」(2013年11月景況トレンド)

株式会社三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社
調査部 尾畠未輝
(2013年11月12日・秋季定例研究会ブックレット「年末一時金関連データ」より)

景況分析と賃金、賞与の動向(7)

景気の現状と2013年度下半期日本経済の見通し

 10月1日、安倍首相が2014年4月に消費税率を現行の5%から8%へと引上げることを正式に表明した。

 同日に発表された日本銀行「全国企業短期経済観測調査(短観)」(9月調査)では、大企業製造業を中心に景況感が改善しており、景気は持ち直していることが改めて示された中での増税表明であった。

 消費税率が引き上げられる目的は、「社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うため」と法律に明記しており、その使途も明確化されている。
 政府債務残高が名目GDPの2倍を超えるようなわが国の財政状況を鑑みると、財政再建のためにはいずれ増税はやむを得ないという見方が広まる中、増税決断はおおむね既定路線だった。

 12年末の安倍政権発足以降、金融市場では円安株高が進み、同時に、実体経済も持ち直してきた。
 4~6月期の実質GDPは前期比+0.9%(年率+3.8%)と、3四半期連続のプラス成長となった。

 個人消費や公共投資などの内需が好調な上、海外経済の回復を背景に輸出が増加し、外需も押上げに寄与した。
 もっとも、夏場には円安株高の動きが一服したことを受けて、消費者マインドの改善は頭打ちとなった。

 日経平均株価は5月22日に15,627円と直近の最高値を付けたが、その動きに合わせ、消費者マインドも5月をピークにその後は3カ月連続で悪化が続いた。
 また、依然として所得の伸び悩みが続く中、消費にはやや弱い動きがみられた。

 しかし、消費税率引き上げが決定されたことによって、年度末にかけては駆け込み需要が発生し、消費は再び大きく増加することになるだろう。
 2013年度の実質成長率は前年比+2%程度と予測する 。

 また、企業業績の改善を背景に設備投資も増加基調が維持されるとみられる上、世界経済も緩やかな成長が続く中で日本からの輸出も増加が続き、季調済前期比でみた成長率は年度末にかけて徐々に伸び率が拡大していく見込みだ。

 一方、デフレーターは低下が続くものの、GDPギャップは縮小しデフレ圧力は徐々に緩和するとみられる。
 名目GDP成長率も前年比+2%近くまで上昇することになるだろう。

2013年年末賞与を取り巻く環境 ~収益、雇用は改善するも、賃金は低迷

 景気の持ち直しを受けて、企業業績や雇用環境は改善が進んでいる。
 財務省「法人企業統計」によると、2013 年度4~6月期は製造業、非製造業とも経常利益は増加した。

 世界経済の回復を背景に輸出数量が緩やかながらも増加傾向にあることに加え、円安の進行によって採算改善が進んだことで、とくに輸出型の企業を中心に製造業の経常利益は大幅に伸びている。

 さらに、日銀短観でみても、2013年年末一時金の原資となる2013年度上期の経常利益は、大企業製造業では事業計画の前提に円安が徐々に織り込まれたこともあって、前回調査(6月調査)から1割以上上方修正され、前年比+44.4%となる見込みだ。

 大企業非製造業の経常利益も前年比+7.2%と、売上高とともに上方修正され、増収増益が見込まれている。
 もっとも、国際商品市況の上昇に加え円安による輸入価格の押上げによってコストが増加しており、伸び率は製造業と比べて小幅である。

 さらに、中小企業については、製造業では2013年度上期は減収減益が見込まれているなど、依然として収益状況の厳しい状態が続いている。

 一方、2009年半ば以降、均してみると緩やかな持ち直し傾向が続く雇用情勢は、ここにきて改善が大きく進んでいる。
 総務省「労働力調査」によると、7月の完全失業率は3.8%(季節調整値)と、4年9ヶ月ぶりの水準にまで低下した。

 その後、8、9月は4%台で推移したものの、有効求人倍率の改善が続くなど、雇用環境は改善が続いている。
 とくに、中小企業では、収益状況は厳しい反面、非製造業を中心に雇用の不足感が強い。

 また、厚生労働省「毎月勤労統計」によると、パートタイム労働者の求人倍率はここ1年半以上にわたって1倍を超えており、常に人手不足の状態だ。
 これまで、非製造業では人件費を抑えながら業容を拡大するために、低コストのメリットが得られる雇用の非正規化を進めてきた。

 今後も非製造業を中心としたパートタイム労働者に対する需要は強いとみられ、需給はひっ迫した状態が続くことになるだろう。

 一見すると、景気回復を背景とした利益の増加と労働需給のひっ迫という、賃金が上がるために必要な条件が整い始めたようにみられる。

 しかし、企業の景気先行きに対する見方は慎重であり、人件費抑制姿勢は依然として根強い。
 短観における業況判断DIの先行きは、規模や業種によってバラつきがある中、これまで企業業績の改善をけん引してきた大企業製造業では悪化が見込まれている。

 さらに、足元では消費者物価に上昇圧力がかかっている。
 9月の消費者物価は、「生鮮食品を除く総合」では前年比+0.7%、「総合」は同+1.1%と、どちらも4ヶ月連続でプラスとなり上昇幅は徐々に拡大している。

 円安の進行が輸入価格の上昇を通じてコストを増加させ、先行して上昇してきた国内企業物価の動きが徐々に消費者物価にも波及している。
 家計の低価格指向は依然として根強いものの、ガソリン価格や電気料金は大きく上がっており、消費者物価が押し上げられている。

 今後、消費税率が+3%ポイント引き上げられれば、家賃や医療費などの非課税品目の影響を除くと、消費者物価は+2.2%ポイント程度上昇すると見込まれる。
 物価の上昇に見合った分だけ名目賃金が上がらなければ、実質賃金は減少することになってしまう。

2013年年末賞与の動向 ~5年ぶりに増加に転じるも、伸び率は小幅にとどまる見込み

 厚生労働省「毎月勤労統計調査」によると、2013年夏季賞与の一人当たり平均支給額(調査産業計・事業所規模5人以上)は359,317 円(前年比+0.3%)と3年ぶりに増加に転じたが、伸び率はわずかであり、ほぼ横ばいだったといえる。

 年末賞与についても前年の水準を上回り、5年ぶりに増加に転じる可能性が高い 。
 一人当たり平均支給額は367,500円(前年比+0.5%)と、増加幅は夏季賞与と比べるとやや拡大するものの伸び率は小幅にとどまり、リーマン・ショック後に大きく切り下がった水準から十分に回復することはないだろう。

 製造業、非製造業とも小幅ながらも増加に転じる見込みだ。

 今年3月に行われた13年春季労使交渉(春闘)では、大企業で一時金(賞与)の要求に対する満額回答がみられた。

 対象が大企業に限定された日本経済団体連合会の調査 では、13年夏季賞与の総平均妥結額は前年比+4.99%と大幅に増加しているが、これらの企業では夏季と年末の賞与をあわせて決定している場合が多く、年末賞与も増加する可能性が高い。

 とくに、賞与に反映されるであろう2013年度上期の経常利益は、「自動車」など輸出型の企業を中心に大企業製造業で大幅な増加が見込まれており、中には年末賞与が大きく増加する企業もあるだろう。

 もっとも、賞与の算定のベースとなる所定内給与は依然として低迷が続いている上、収益環境の厳しい中小企業などでは引き続きボーナスが減少するところもあるとみられ、全体の伸びを抑制するだろう。

 加えて、雇用の非正規化が進んでいることで賞与水準の低い労働者が増えたことも、全体でみた一人当たり平均支給額を押し下げる要因となる。

 もっとも、賞与の支給が中小企業にも徐々に広がることで、支給事業所数割合や支給労働者割合は上昇が見込まれる。
 さらに、雇用環境の改善もあって支給労働者数は増加し、全体でみた支給総額(=一人当たり平均支給額×支給労働者数)も増加するとみられる。

 なお、2014年4月の消費税率引き上げ後は、個人消費を中心に景気が一時的に落ち込む可能性がある。
 企業の収益環境は厳しくなるとみられ、2014年夏季賞与は再び伸び悩む懸念もある。

【景況分析と賃金、賞与の動向】は、プライムコンサルタントが主宰する
「成果人事研究会」の研究会資料「プライムブックレット」の内容の一部をご紹介するものです。

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