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中堅・中小企業におけるこれからの管理職のあり方ー8ー

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中堅・中小企業におけるこれからの管理職のあり方ー8ー

第8回 『マネジャーの実像』にみる管理者の役割・仕事(3)

 こんにちは。人事コンサルタント・CDA・中小企業診断士の渡辺俊です。
 前回は、H.ミンツバーグが提唱している「マネジメントのモデル」の1つ目の切り口、「『情報の次元』でのマネジメント」について考えました。
 今回は、その2つ目、「『人間の次元』でのマネジメント」について考えていきます。

1.組織内の人々を導く

 ミンツバーグは、「『人間の次元』のマネジメントには、大きく次の2つの役割がある」と言っています。
 1)組織内の人々を導く
 2)組織外の人々と関わる
 これらは、人との関係やつながりにまつわるマネジャーの日常を、明快に表しているように思います。

 まず、「組織内の人々を導く」について考えてみましょう。
 ミンツバーグは、「『人間の次元』では、マネジャーがメンバーの背中を押し、ものごとを成し遂げさせる。実際に行動するのは組織のメンバーである」と言っています。

 これを、「組織のメンバーに動いてもらい、仕事をしてもらう」という点だけでとらえると、前回取り上げた『情報の次元』の役割である「コミュニケーションを通じた組織内部のコントロール」と同じような内容に聞こえます。

 では、両者は一体どこが違うのでしょうか。
 ミンツバーグが言っている「組織内の人々を導く」の内容を読み解いていくと、下記のように整理できます。

 これを見ると、『情報の次元』の役割とは、大きくニュアンスが違うことがわかります。

 もう少し理解を深めるために、私たちの身近な目標管理でその違いを見てみましょう。

 (1)は、目標管理の原理原則的なプロセスを表しています。しかし実際には、(2)のプロセスを丁寧にたどっていないかないと目標管理が機能しないことを、多くのマネジャーが実感していることでしょう。
 『情報の次元』のマネジメントが「必要な情報を提供し、権威や権限により、上司が部下をコントロールすること」だとするならば、『人間の次元』は「メンバーが自ら動き出し、やり遂げるよう、マネジャーが多様な影響を及ぼすこと」と言えるように思います。

 人間は、単に合理性だけに基づいて行動するわけではありません。マネジメントには、メンバーの論理的な思考に対してだけではなく、その心・思いに届く影響力が求められるのです。
 このことをミンツバーグは、「『人間の次元』のマネジメントを、意味のマネジメントと呼ぶ論者もいる」と言っています。

2.組織外の人と関わる

 『人間の次元』のマネジメントの根源は、20世紀初頭にフレデリック・テイラーが提唱した「科学的管理法」に対して、工場作業員の作業効率について調べた「ホーソン実験」の結果わかった、「働き手には人間としての感情があるので、コントロールするだけのマネジメントでは不十分」という考え方にあります。

 そして、この実験以来、20世紀半ばに盛んに研究が進められる中、次々と登場した、「人間関係論(メーヨー、レスリスバーガー)」、「欲求5段階説(マズロー)」、「Y理論(マクレガー)」、「モチベーション理論(ハーズバーグ)」などのマネジメント論が、『人間の次元』のマネジメントの基盤をなしています。

 これらのマネジメント論では、マネジメントの対象を「部下だけ」として論じられています。
 しかし、マネジャーの実務・具体的な日常の活動に焦点を当てた研究が進むと、マネジャーは、組織の外部との関わりに対しても、自組織や部下に向き合うことに匹敵する時間とパワーを使っていることがわかってきました。

 そこでミンツバーグは、『人間の次元』のマネジメントに、冒頭に示した2つ目の役割=「外部の人々と関わる」を含めたのです。
 これも、前回考察した『情報の次元』のマネジメントの「外部とのコミュニケーション」と、重なる面があるように思います。今度はその違いについて考えてみましょう。

 ミンツバーグは、「外部の人と関わる」ことを、具体的には下記のように言っています。

 その目的は、これらの活動の組み合わせによって対外的な関係を処理し、内部の環境や状況をよりよく保つことにあると考えられます。

 たとえば、異業種交流会に参加したり、業界団体、地域の商工会、専門領域の学会などに所属したり、勉強会や研究会のようなサークルの一員になるなどによって、利害関係にあるさまざまな人とコミュニケーションを取り、情報を仕入れ、提供するのは、『情報の次元』。

 一方、そこで人脈を形成し、何らかの役割を担い、自分の立ち位置を確立し、将来に渡って継続的にそれを活かしていくというのが、『人間の次元』と言えると思います。

 『情報の次元』が「客観的な情報」に焦点を当てているのに対して、『人間の次元』は、マネジャー個人が持つ膨大なネットワークを基盤とした「その人ならではの関わり」に焦点を当てているということではないでしょうか。

3.『人間の次元』のマネジメントに大切なものは・・・

 マネジャーの活動は、突き詰めれば、組織の成果、会社全体の成果につながらなくては意味がありません。しかし、やみくもに成果だけを追求すればいいというものでもありません。

 組織の成果を究極の目的として見据えつつ、組織の内と外に、自社の事業や自組織の活動への参加者・賛同者・共感者・協力者を創り、保ち、増やしていくことが、『人間の次元』における日々の実践ではないでしょうか。

 前回、A社とB社の管理職研修についてご紹介しましたが、その場でマネジャーの方々が語る意見や感想をあらためて思い起こしてみると、「年上の部下にどう対応すればよいのか」「どのように言えば、わかってもらえるのか」「そもそも深く話す機会が持てない」など、人との関係性に関する発言がかなりのウェイトを占めていると感じます。

 もちろん、方針、戦略、目標、計画、業務、問題、課題、解決策そのものに関する発言もあります。しかし、これらの事柄を「組織とメンバーにどう伝え、共有し、メンバーをどう巻き込んでいくか」ということの方が、多くのマネジャーの共通の悩みであり、最大の関心時なのだと思います。

 巷には昔から、部下指導、コミュニケーション、リーダーシップ、コーチングなど、関わりに関するノウハウがあふれています。もちろんそういった知識や技能の習得も大切ですが、本当の意味で人が主体的に動くためのマネジメントを行うには、これらの方法論では限界があるように思います。

 『人間の次元』のマネジメントの質を高めるためのカギは、「人と関わる」ことへの真摯な姿勢と、対話と振り返りの継続しかないと私は思っています。そしてここに、これからの管理者のあり方や、管理者育成のヒントがあると思うのです。
 さて、次回は、『行動の次元』について考えていきましょう。

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