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社員の成長支援で業績も向上。ものづくりは人づくりからー1ー

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社員の成長支援で業績も向上。ものづくりは人づくりからー1ー

 人と組織が自然とイキイキしてくる独自の取り組みや人事施策について紹介する本連載は、今回から、シリーズ第3社目となる株式会社狭山金型製作所についてお伝えしていきます。
 今回は、同社のこれまでの歴史を大まかに振り返ります。1990年代以降に外部環境が劇的に変化していくなか、独自の競争優位を築くことで同業他社との差別化に成功したそのわけを、社長に直接語っていただきました。(編集部)

株式会社狭山金型製作所の工夫(1)

仕事なし、借金あり、マイナスから第二創業

 最寄駅から徒歩50分。目の前は狭山名産のお茶畑。
 こんなところに?と思う立地に狭山金型製作所はあります。「精密・微細な金型を作ろうと思ったら、車の振動は敵なんです。私たちの金型に必要な、サブミクロンの精度に影響が出てしまう」。

 この日、会社を案内してくれたのは、同社2代目の大場治社長。「この裏は『となりのトトロ』の舞台になった自然公園ですよ」。

 緑豊かなこの地を拠点に、狭山金型製作所のものづくりが世界へと羽ばたいていると言ったら、驚かれるでしょうか。2012年にはシンガポールに子会社を設立し、海外の販路を開拓。

 同社が得意とする超精密な金型は、アメリカ、ドイツ、フランス、スイスからも依頼が舞い込んでいます。それでも、従業員はわずかに20数名。狭山金型製作所は、多くの中小企業が見習うべき「小さくても強い」企業の姿そのものです。

 しかし、1964年の創業当時は「プレスも、プラも、ガラスも、ダイキャスも」と、金型と言われるものは何でも扱う町工場でした。入間市内に有名なオーディオメーカーが点在することから、オーディオパーツの受注が多かったそうです。

 「先代である父は板橋の金型屋で修行をし、入間市で創業しました。当時はまだ武蔵町と言われていたころですね。でも父は北海道出身、武蔵町と親戚に話してもわからない。お茶どころの狭山ならということで、狭山金型製作所と名付けたようです」。

 その先代が急逝したのは、大場社長が高校2年のとき。しばらくは叔父が会社を支えていましたが、9年後、その叔父が突然独立。「お客さんを全部、社員を2人連れて、しかも製造機械を退職金がわりに持っていった」というから、穏やかではありません。会社に残されたのは、社員8人と借金だけ。

 大場社長はとうに就職し、家を出ていました。叔父がいれば安心、自分が家業を継ぐ必要はないと考えていたのです。「しかし、社員たちに『俺たちが残るから、戻ってきてくれ」と言われたんです。ゼロからどころか、マイナスからのスタートですよ(笑)」。
 こうして、期せずして第二創業期を迎えた狭山金型工製作所。1987年、大場社長が25歳のときでした。

ハイテクはお金で買えても、ローテクは買えない

 マイナスからのスタートという大場社長の言葉は、決して大げさではありません。それまで付き合いのあった顧客に頭を下げて回っても、新しい仕事は受注できませんでした。怪訝に思った大場社長が尋ねると「前の社長が「狭山金型は潰れる」とふれ回ってるよ。仕事は出せない」。

 それでも、実績を積み重ねるしか会社再生の道はありません。「僕自身、25歳で『経営者です』といっても信用されないので『32歳です』と逆サバを読んで、必死で仕事をとってきました。能力はなくても、人の3倍働けばなんとかなる。ある意味、お客さんを騙して仕事をとったわけですから、納期遅れは絶対に出さないと心に決めていました。

 その頃は、二徹なんて当たり前。年間10日も休まなかったですね」。幸いだったのは、金型職人が会社に残ってくれていたこと。それに大場社長は前職で金型の設計を経験していました。とにかく仕事をとり、設計しさえすれば、会社は続いていく。そんなガムシャラな5年間が、あっというまに過ぎていきました。

 しかしその間、金型をとりまく環境も大きく変わろうとしていました。金型製作の世界にもハイテク機器が導入され、CAD/CAMによる設計・開発が浸透していきました。「極論すれば、データがありボタンを押しさえすれば金型が作れてしまう」時代の到来です。また高い精度が不要で、大量生産できる金型ならば、儲けも出しやすいとあって、多くの金型工場が設備を導入していきました。

 ところがです。大場社長は、この流れに背を向けるようにして、精密小物に特化する決断を下しました。これは、設備ではなく「手」による技術の追求を意味しています。「例えば、自動車のコネクタの金型です。機械も使いますが、最終的には手の仕事による精度がものをいう」。

 大場社長は続けます。「ハイテクはお金で買えても、ローテクはお金では買えません。現在の日本を見てわかる通り、半導体、ソーラーセル、液晶パネルといったハイテクは海外に負けています。

 製造装置に材料を投入してボタンを押せば、出来上がる。ここには人間の手を入れる余地がない。だから設備を買える資本力のあるところが勝つのです。東芝が負け、シャープが負ける。より大きな資本力を持った、中国、台湾、韓国といった"国"に負けるんです」。

 大場社長は、その動きをいち早く予見し、もっとも難しいとされるコネクタの金型に注力したのです。「要するに、儲からないけど、腕で勝負。他が真似できない、参入障壁の高い技術で勝負です」。果たして、町の金型工場はどんどん淘汰されていく傍で、狭山金型製作所は右肩上がりの成長を続けていくことになります。

 現在、狭山金型製作所が作る金型は、1万分の1ミリ、サブミクロンの精度を誇っています。当然ながら、ハンドメイドで金型をいちから作り上げているわけではありません。CADによる設計や研磨、放電加工など、全体のプロセスのおよそ9割を、最新設備が担っています。ですがそれも、人の技術、経験、想像力を具現化するために他なりません。細部は、人間の手に頼るのです。

 「僕がいつも言うのは、機械はメーカーが作ってくれるから、僕たちはそのリードユーザーになろう、ということです」と大場社長。料理に例えて、その心を説明してくれました。

 「私たちがお客さんから受け取る図面は、『こういう材料で作ってください』というレシピみたいなものです。レシピは公開されていて、誰でも、一流の料理人とまったく同じレシピで料理ができます。でも料理する人次第で、まるで別物。素材の吟味、下ごしらえ、火の入れ方、お皿への盛り付け、全部違うからです。

 われわれも職人として一流を目指しています。これは常に危機意識を持つということでもあります。10年前にすごかった技術が、10年後もすごいとは言えない。楽をしたら真似される。技術革新は、この先ずっと続けていくものなんです」。

(次回へ続く)

株式会社狭山金型製作所様のホームページはこちら 


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