株式会社プライムコンサルタント

10月から義務化される「就活等セクハラ」対策

Q

令和8年10月から、就職活動中の学生や転職希望者などに対するセクハラ対策が義務化されると聞きました。
企業としては、どのような対応をする必要があるのか、またその際の留意点を教えてください。

A

令和8年10月1日から、カスタマーハラスメント対策とともに、「求職者等に対するセクシュアルハラスメント対策」が事業主の義務となります。改正男女雇用機会均等法によるもので、事業主が適切かつ有効な実施を図るために必要な事項を定めた、「求職者等セクハラ防止指針」も公表されました。
これまで、セクシュアルハラスメント対策といえば、主に社内の労働者を対象とするものと考えられてきました。しかし、採用面接、会社説明会、インターンシップ、OB・OG訪問などでは、応募者や学生が企業側の担当者に対して弱い立場になりやすく、性的な発言や行動があっても、採用への影響を恐れて声を上げにくいという問題がありました。
実際、過去3年間に勤務先でセクハラを経験した労働者は6.3%でした。一方、2020~2022年度に卒業し、就職活動またはインターンシップを経験した者のうち、インターンシップ以外の就職活動中にセクハラを経験した者は31.9%、インターンシップ中に経験した者は30.1%(令和5年度厚生労働省調査)に上っており、看過できない状況です。
今回の改正は、こうした採用・就職活動の場面におけるセクハラを防止するため、企業に必要な措置を求めるものです。

採用活動のさまざまな場面が対象に

求職者等に対するセクシュアルハラスメント(以下、「求職者等セクハラ」)とは、以下のように定義されます。

事業主が雇用する労働者による「性的な言動」により求職者等による求職活動等が阻害されるもの

また、対象となる「求職者等」とは、企業の求人に応募する求職者だけでなく、就職説明会、インターンシップ、OB・OG訪問など、企業の採用に資する活動に参加する者や、教育実習・看護実習その他の実習を受ける者も含まれます。

活動の場所も、会社内に限られません。飲食店で行われるOB・OG訪問、学校のキャンパスでの説明会、オンライン面談、SNS等を介したやり取りも対象となり得ます。

求職者等セクハラにおける性的な発言には、性的な事実関係を尋ねることや、性的な内容の情報を流布することなどが含まれます。また、性的な行動には、性的関係の強要、必要なく身体に触ること、わいせつな図画を見せることなどが含まれます。同性に対するものや、性的指向・ジェンダーアイデンティティにかかわるものも対象となります。

例えば、面接中に面接官が恋人の有無や交際経験など、性的な事実に関する質問をすること、インターンシップ中に性的な冗談やからかいを繰り返すこと、OB・OG訪問で私的な食事に執拗に誘うこと、SNSで性的な内容を含む個人的な連絡を重ねることなどは問題となり得ます。企業側にそのつもりがなくても、相手が断りにくい立場にあることを十分意識する必要があります。

企業が講ずべき措置

以下の就活セクハラ対策は事業主の法的義務です。防止措置義務そのものに直接の罰則はありませんが、助言・指導・勧告の対象となり、勧告に従わない場合には企業名が公表されることがあります。また、厚生労働大臣による報告の求めに応じなかった場合や虚偽の報告をした場合には、20万円以下の過料の対象となります。

1.事業主の方針等の明確化及びその周知・啓発

求職者等セクハラを行ってはならないという方針と求職活動に関するルールを明確にし、労働者及び求職者等に周知・啓発することが求められます。

具体的には、求職者等に対するセクハラを行ってはならない旨の方針を明確にし、行為者には厳正に対処する旨の方針や対処内容を就業規則その他の服務規律等を定めた文書に規定して、労働者に周知・啓発する必要があります。

また、採用活動に関する具体的なルールを定めることが重要です。たとえば、面談は会社が指定した時間・場所で行う、原則として一対一の密室面談を避ける、夜間や飲酒を伴う面談は行わない、個人のSNSや私用メールで不用意に連絡しない、オンライン面談の方法を明確にする、といったルールです。

採用担当者だけでなく、現場社員が学生や応募者と接触する場合にも、同じルールを適用する必要があります。

2.相談体制の整備

求職者等が相談できる窓口を設け、その存在を周知することが求められます。既存の窓口を含め、応募者やインターンシップ参加者も利用できる窓口を明示しておく必要があります。

採用ページ、募集要項、インターンシップ案内、説明会資料などに、相談先や連絡方法を記載しておくことが考えられます。人事担当者に直接相談しにくい場合もあるため、担当者を複数置く、外部窓口を活用するなどの工夫も有効です。

あわせて、相談窓口担当者が相談内容や状況に応じて適切に対応できるよう、対応マニュアルの整備や研修を行うことも重要です。

3.事後の迅速かつ適切な対応

相談があった場合には、事実関係を迅速かつ正確に確認し、被害を受けた求職者等への配慮、行為者への適正な対処、再発防止措置を行う必要があります。事実確認の際には、相談者の心身の状況や受け止め方にも配慮し、相談内容や関係者のプライバシーを保護するために必要な措置を講じ、その内容を労働者及び求職者等に周知しなければなりません。また、事実確認に協力した労働者に対し、不利益な取扱いを行わないことを定め、労働者に周知・啓発することも必要です。

施行までに、就業規則、採用活動に関するルール、相談体制の3点を確認し、採用担当者だけでなく、求職者等と接触する可能性のある現場の労働者にも周知しておくことが重要です。

 

 著者プロフィール

米田徹

特定社会保険労務士/中小企業診断士。

東京都出身。東京大学理学部卒業後、富士通株式会社に入社。
コンピュータの基本OSの企画・開発に携わったのち、事業改革、人事労務管理、企業年金業務など幅広い分野を担当。平成17年に同社を退職し独立、米田経営労務研究所を開設。
現在は、経営全般・人事賃金制度・退職金制度設計を得意分野とし、「キラリと輝く会社づくり・人づくり」をモットーに中小企業のコンサルティングを中心に活動中。

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