株式会社プライムコンサルタント

テレワークの場合の労働時間の把握方法 

Q

テレワークの場合、労働者が事業場内にいるわけではないので、具体的な労働時間を把握することは、なかなか難しいのですが、労働者からの申し出がない限り、1日の所定労働時間働いたものとして取り扱って差し支えないでしょうか。

A

テレワークの場合の労働時間の把握については、その労働時間のほとんどが会社とのやりとりである場合、自宅等で一定の作業をしてその成果をまとめて会社にメール等により送付する場合等いろいろな形態があると思われますが、「テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン(令和3.3.25 厚生労働省)」(以下テレワークガイドライン」といいます。)では、

①客観的な記録により把握する場合には、

・労働者がテレワークに使用する情報通信機器の使用時間の記録をもとに労働時間を把握する

・サテライト・オフィス等を使用する場合は、入退場の記録等により把握する

②自己申告により把握する場合には、「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」(平成29.1.20 基発0120第3号)(以下「適正把握ガイドライン」といいます。)を踏まえ、適正に把握することを求めています。

テレワークは、労働者の自宅等労働時間を管理する者がいない場所で労働するものであるところから、労働時間の把握には一定の困難が伴います。

労働基準法第38条の2第1項は、

労働者が労働時間の全部又は一部について事業場外で業務に従事した場合において、労働時間を算定し難いときは、所定労働時間労働したものとみなす。

と定めており、この規定によれば、所定労働時間労働したものとみなすことができるのではないかとも考えられますが、この規定は、セールスマン、記者等事業場外において連絡が断絶する等労働時間の算定がし難いときには、「所定労働時間労働したものとみなす」としているのであり、「テレワークガイドライン」は、労働の場所も特定され、情報通信機器の使用時間、サテライトオフィスへの入退場時間等等により把握できる場合には、それらの方法により把握することを求めています。

以下、「テレワークガイドライン」がテレワークの場合の労働時間の把握について求めている部分を紹介します。

労働時間の把握に関するテレワークガイドラインの記述(前半)

「テレワークにおける労働時間の把握」

テレワークにおける労働時間の把握については、「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」(平成29.1.20 基発0120第3号。以下「適正把握ガイドライン」という。)も踏まえた使用者の対応として、次の方法によることが考えられる。

 ア 客観的な記録による把握

適正把握ガイドラインにおいては、使用者が労働時間を把握する原則的な方法として、パソコンの使用時間の記録等の客観的な記録を基礎として、始業及び終業の時刻を確認すること等が挙げられている。情報通信機器やサテライトオフィスを使用しており、その記録が労働者の始業及び終業の時刻を反映している場合には、客観性を確保しつつ、労務管理を簡便に行う方法として、次の対応が考えられる。

①労働者がテレワークに使用する情報通信機器の使用時間の記録等により、労働時間を把握すること。

②使用者が労働者の入退場の記録を把握することができるサテライトオフィスにおいてテレワークを行う場合には、サテライトオフィスへの入退場の記録等により労働時間を把握すること

書いてあるとおりですが、情報通信機器やサテライトオフィスの記録が労働者の始業及び終業の時刻を反映している場合には、それらの記録により労働時間を把握することとしています。

労働時間の把握に関するテレワークガイドラインの記述(後半)

 イ 労働者の自己申告による把握

テレワークにおいて、情報通信機器を使用していたとしても、その使用時間の記録が労働者の始業及び終業の時刻を反映できないような場合も考えられる。

このような場合に、労働者の自己申告により労働時間を把握することが考えられるが、その場合、使用者は、

①労働者に対して労働時間の実態を記録し、適正に自己申告を行うことなどについて十分な説明を行うことや、実際に労働時間を管理する者に対して、自己申告制の適正な運用等について十分な説明を行うこと。

②労働者からの自己申告により把握した労働時間が実際の労働時間と合致しているか否かについて、パソコンの使用状況など客観的な事実と、自己申告された始業・終業時刻との間に著しい乖離があることを把握した場合

(※)には、所要の労働時間の補正をすること。

③自己申告できる時間外労働の時間数に上限を設けるなど、労働者による労働時間の適正な申告を阻害する措置を講じてはならないことなどの措置を講ずる必要がある。

※例えば、申告された時間以外の時間にメールが送信されている、申告された始業・終業時刻の外で長時間パソコンが起動していた記録がある等の事実がある場合。

なお、申告された労働時間が実際の労働時間と異なることをこのような事実により使用者が認識していない場合には、当該申告された労働時間に基づき時間外労働の上限規制を遵守し、かつ、同労働時間を基に賃金の支払等を行っていれば足りる。

労働者の自己申告により労働時間を簡便に把握する方法としては、例えば一日の終業時に、始業時刻及び終業時刻をメール等にて報告させるといった方法を用いることが考えられる。

労働者が使用する情報通信機器の記録が労働者の始業及び終業の時刻を反映できないような場合は、労働者の自己申告により労働時間を把握することが考えられるとしています。

自己申告による場合の措置について列挙された上記①~③の事項は、「適正把握ガイドライン」で求められている事項とほぼ同じです。

しかし、「テレワークガイドライン」の上記※に書かれた部分は、「適正把握ガイドライン」が求めている措置とは異なっています。

すなわち、 「適正把握ガイドライン」は、

自己申告により把握した労働時間が実際の労働時間と合致しているか否かについて、必要に応じて実態調査を実施し、所要の労働時間の補正をすること。

としているのに対して、「テレワークガイドライン」は、

申告された労働時間が実際の労働時間と異なることをこのような事実により使用者が認識していない場合には、当該申告された労働時間に基づき時間外労働の上限規制を遵守し、かつ、同労働時間を基に賃金の支払等を行っていれば足りる。

といっており、「必要に応じた実態調査と労働時間の補正」については触れず、逆に、「申告時間と実際の時間が異なることを使用者が認識していない場合には、申告された時間に基づき賃金を支払っておればそれで足りる。」といっています。

つまり、「乖離を把握した場合には」所要の補正が必要であるが、余計な実態調査をせずに、「労働者の申告どおり取り扱っていればそれでいい。」といっており、「テレワークガイドライン」の上記1において「「適正把握ガイドライン」も踏まえた使用者の対応として、次の方法による」としている姿勢とはズレがあるような気がします。

いずれにせよ、テレワークの場合の労働時間の把握についての「テレワークガイドライン」の基本的な考え方は、以上のとおりです。

 

 著者プロフィール

中川恒彦

昭和43年(1968年)、労働基準監督官、以降、労働省労働基準局監督課中央労働基準監察監督官、同賃金課主任中央賃金指導官、静岡労働基準局次長、滋賀労働基準局長などを歴任し、平成10年(1998年)6月退職。

その後も、主に労働法制を中心とした労働問題の第一人者として活躍。

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