株式会社プライムコンサルタント

企業に設置が求められる相談窓口とは

Q

当社は従業員50名ほどの中小企業です。現在、ハラスメント相談窓口の設置や育児・介護休業制度の相談対応について整備を進めていますが、パート社員や障害のある従業員への対応、メンタルヘルス対策についても相談窓口が必要だと聞きました。
しかし、どの法律で何が求められているのかよく分からず、窓口を設置してもどのように運営すればよいのか不安があります。企業にはどのような相談窓口が必要で、運営上どのような点に注意すればよいのでしょうか

A

近年の労働関係法令では、事業主に対して相談窓口の設置を求める規定が増えています。

パワーハラスメント防止措置、パート・有期雇用労働者への対応、障害者雇用における職場定着支援、育児・介護休業制度への対応、労働安全衛生法に基づくメンタルヘルス対策など、相談窓口は複数の法律にまたがっていて、設置の趣旨も異なるため、運営上の注意点も異なり複雑になっています。
実務上問題になるのは「設置しているかどうか」だけでなく、「適切に運営されているかどうか」がより重要になります。以下では、主な相談窓口ごとに運営上の留意点を整理して解説します。

設置が必要な窓口 関連する法律
1.ハラスメント

(パワハラ、セクハラ、カスハラ等)相談

労働施策総合推進法、男女雇用機会均等法、育児・介護休業法
2.育児・介護相談 育児・介護休業法
3.パート・有期労働者相談 パート・有期雇用労働法
4.障害者雇用に関する相談 障害者雇用促進法
5.健康・メンタルヘルス相談 労働安全衛生法労働者の心の健康の保持増進のための指針

ハラスメント相談窓口の留意点

職場におけるパワーハラスメントなどのハラスメントは、被害者の人格や尊厳を著しく傷つけ、休職や退職、労災申請や損害賠償請求など、企業経営に重大な影響を及ぼす問題になり得ます。ハラスメント被害を未然に防ぐためにも、相談窓口が適切に機能することが極めて重要です。

運営上とくに留意すべき点は、「相談しやすさ」と「秘密保持」です。相談担当者は、人事・総務部門の社員が担うケースが多いと思われますが、担当者が人事部門の男性社員だけの場合、相談者が利用をためらうこともあり得ます。パワハラだけでなくセクハラ、マタハラなどが疑われる相談も多いため、性別の異なる担当者を配置することが有効と考えられます。

また、行為者とされる人物が部長や取締役などの高い職位にある場合には、通常の相談担当者だけでは対応が難しい場面が想定されます。そのため、相談に対応する体制として人事責任者や別の役員が統括しながら調査をすすめたり、弁護士などの外部窓口を併用するなどの対応が考えられます。

ハラスメントへの対応では、相談内容が安易に上司などに伝わるような運用では、制度そのものが機能しなくなります。厚労省のパワハラ防止指針でも、窓口担当者が留意点をまとめたマニュアルに基づいて対応することや、担当者に相談対応の研修を行うことなどが具体例として示されているので参考にするとよいでしょう。

編集注:なお、カスタマーハラスメント対策については、2026101日から事業主の雇用管理上の措置義務となるため、施行に向けた準備が必要です。 

育児・介護休業制度に関する相談窓口

少子高齢化が進む中で、育児や介護を理由とする労働者の離職を未然に防止し、男女ともに希望に応じて仕事と育児・介護を両立できる社会を実現することが重要な課題となっています。

一方、育児・介護休業制度は内容が非常に複雑で、従業員自身が制度を十分に理解していないケースが少なくありません。そのため、相談窓口では制度の説明にとどまらず、申請手続の流れや利用できる制度の組み合わせなどを分かりやすく説明することが求められます。

特に男性の育児休業については、制度があっても利用が進まない企業も多く、相談窓口の対応姿勢が取得率に大きく影響します。

相談窓口の担当者については、制度に詳しい人事・労務部門の社員が担当するのが適切でしょう。制度の利用に関連して、不利益取扱いやハラスメントに関する相談が寄せられる可能性もあるため、必要に応じてハラスメント相談窓口の担当者と連携して対応することが望まれます。

また、介護に関する相談を受けた場合には、企業の規模や業種の特性、社内制度の内容、対象者のニーズや状況はさまざまです。相談者の状況を丁寧に把握し、仕事と介護を両立するための支援プランの検討など、親身になって対応できる体制が重要と考えられます。

パートタイム・有期雇用労働者に関する相談窓口

この分野では、「待遇に関する説明への対応」が中心となります。正社員との待遇差についてパート・有期雇用労働者から質問を受けた場合、会社は待遇の相違の内容や理由などを説明することが法律で義務づけられており、感覚的な説明では不十分です。賃金制度、手当の趣旨、評価制度などを整理したうえで説明できる体制を整えておく必要があります。

担当者が制度の内容を十分に理解していない場合、かえってトラブルにつながることもあります。相談窓口の設置とあわせて、担当者への事前教育も不可欠です。

障害者雇用に関する相談窓口

障害者雇用においては、「採用後の定着支援」が重要な課題となっています。そのため、相談窓口は単発的な対応ではなく、継続的なフォローを前提とした運営が求められます。

業務内容の変更や職場環境の調整が必要になる場面も多いため、窓口担当者には上司や現場との調整役としての役割も求められます。形式的な制度ではなく、実際に機能する窓口となっているかを定期的に確認することが重要です。

健康・メンタルヘルスに関する相談窓口

長時間労働やメンタルヘルス不調に関する問題は、早期対応が極めて重要です。相談を受けた後の対応が遅れると、問題が深刻化するおそれがあります。

相談内容をどの範囲で共有するのか、産業医や上司への報告はどの段階で行うのかなど、対応手順をあらかじめ定めておくことが望まれます。窓口担当者が一人で判断を抱え込まない仕組みづくりが重要です。

相談窓口に共通するポイント

以上説明してきた相談窓口を適切に機能させるためには、次の三点が特に重要となります。

①相談しやすい体制……性別への配慮、外部窓口の活用、相談方法(対面・電話・メール等)の多様化など

②秘密保持の徹底……情報の共有範囲の事前設定など

③対応手順の明確化……マニュアル整備、担当者研修、初動対応から事実確認・是正措置までの流れの整理等

相談窓口は、単なる制度ではなく、企業のリスク管理の重要な仕組みの一つです。また、従業員が安心して働ける職場環境づくりにも欠かせない役割を果たします。今後は就業規則の整備だけでなく、「相談窓口をどのように運営するか」という視点がますます重要になってくるといえるでしょう。

 

 著者プロフィール

米田徹

特定社会保険労務士/中小企業診断士。

東京都出身。東京大学理学部卒業後、富士通株式会社に入社。
コンピュータの基本OSの企画・開発に携わったのち、事業改革、人事労務管理、企業年金業務など幅広い分野を担当。平成17年に同社を退職し独立、米田経営労務研究所を開設。
現在は、経営全般・人事賃金制度・退職金制度設計を得意分野とし、「キラリと輝く会社づくり・人づくり」をモットーに中小企業のコンサルティングを中心に活動中。

著者詳細はこちら