株式会社プライムコンサルタント

フレックスタイム制の導入について

Q

当社はWeb広告制作の中小企業ですが、効率的な働き方により社員の創造性を十分発揮してもらうためにフレックスタイム制の導入を検討しています。
この制度のメリットや実施する際の手順や注意事項について教えてください。

A

フレックスタイム制は、労働基準法(32条の3)に定められた変形労働時間制の一種です。1カ月以内の一定の期間の総労働時間(以下、「所定勤務時間」)を定めておき、労働者がその範囲内で各日の始業と終業時刻を選択して働くことができます。労働者の生活と業務との調和(ワーク・ライフ・バランス)を図りながら効率的に働くことが可能になり、労働時間の短縮にもつながるという趣旨で設けられた制度です。
同制度導入で以下のようなメリットが考えられます。

  • 職務の繁閑等に合わせることで勤務時間を有効に活用でき残業の軽減につながる
  • 通勤時間がシフトできるので通勤ラッシュなどを避けて出退社することができる
  • 時間的にも精神的にもゆとりが生まれワーク・ライフ・バランスの向上につながる
  • 優秀な人材の採用や定着の向上につながる

フレックスタイム制で定めるべき事項

フレックスタイム制を導入する場合には、まず、就業規則に、「始業・終業時刻の決定を従業員に委ねる」旨の定めをします。

そして、次の事項を定めた労使協定を締結します(労基署への届出は不要)。

①フレックスタイム対象労働者の範囲

②清算期間(1カ月以内の単位期間)と起算日 → 例:毎月21日~翌月20日までの1カ月

③清算期間における総労働時間 → 例:8時間×清算期間の所定労働日数

④標準となる1日の労働時間 → 例:8時間

⑤コアタイム時間(設ける場合)→ 例:午前10時から午後3時

⑥フレキシブルタイム(設ける場合)→ 例:始業は7時から10時、終業は午後3時から午後7時

なお、⑤のコアタイムとは必ず勤務すべき時間帯、⑥のフレキシブルタイムは、その時間帯の中であればいつ出社または退社してもよい時間帯です(図参照)

実務上の留意事項

税の壁には「配偶者控除・配偶者特別控除」の段階的な区切りと、所得税の課税最低限があります。

1. 労働時間の貸借制
フレックスタイム制を実施する上で実務上問題になるのは清算期間における労働時間の過不足の調整です。清算期間中の実際の勤務時間と決められた所定勤務時間にずれがあった場合は次のように扱う必要があります。

  • (ケース1)実勤務時間 > 所定勤務時間

この場合には、この過剰時間分を翌月にくり越すことはできず(賃金全額払いの原則)、会社は実勤務時間に応じた「残業手当」を支払わなければなりません。

  • (ケース2)実勤務時間 < 所定勤務時間

この場合には、次の2通りの扱い方法があります。

①不足時間分の賃金カットを行う
②(賃金カットはせず)不足時間分を翌月に繰越す

例:1カ月の所定勤務時間が160時間の場合

・  実労働時間が163時間→3時間分の残業代を支払う

・  実労働時間が157時間→①3時間分を月給からカットする、又は②3時間分を翌月に繰越して清算

2. 休日の扱い
フレックスタイム制は休日労働には適用されませんが法定休日(週に1日又は4週に4日)が確保されていれば、それ以外の(法定外)休日の労働については労働者の自主選択にして弾力的な勤務を認め、休日もフレックスにすることが可能です。その場合は通常の実労働時間として計算し、決められた所定勤務時間を超えた場合には超えた時間について残業手当を支払うことになります。

なお、フレックスタイム制の下で休日の振替(事前に休日と労働日を入れ替える)を行うことも可能です。

3. 欠勤、遅刻、有休の扱い
欠勤や遅刻があった場合には、勤怠記録上は欠勤や遅刻になりますが、清算期間内の実労働時間が決められた所定勤務時間に不足していなければ月給制における賃金カットは発生しません。但し、精皆勤手当がある場合の支給基準や人事考課のマイナス要素にすることは可能です。

なお、年次有給休暇を取得した日は標準となる1日の労働時間分を勤務したものとして扱います。

フレックスタイム制の適用除外

良かれと思ってフレックスタイム制を実施しても、実際に運用すると、時間に対してルーズになり好きな時間にだらだらと業務を行ったり、必要な会議に遅れて来るなど問題になる労働者のケースも考えられます。
労働時間の管理を適正に行えない社員については、フレックスタイム制の適用から除外し通常の勤務時間に戻す等の処置が必要になるでしょう。そこでその旨を就業規則や労使協定で定めておきます。

例:適用の解除

第〇条 社員が特別の理由なく、次のいずれかに該当するときは、フレックスタイム制度の適用を解除し、通常の勤務時間による勤務を命ずる。

1.       しばしば遅刻、早退又は欠勤を繰り返すとき

2.       実労働時間数と所定勤務時間数の間に過不足が度々発生するとき

まとめ

現在、政府主導の「働き方改革」の議論の中でもフレックスタイム制を、より使いやすい制度にするための検討が行われています。労働基準法改正案では、見直し案として「清算期間」の上限を現行の1カ月から3カ月に延長するとしています(目的は使い勝手の向上)。

フレックスタイム制は裁量の広い個人のペースでできる業務や、日によって働く時間の長さを整調できる業務などに向いていると考えられます。合理的な運用をすれば、社員の創造性の発揮や残業時間の軽減につながる働き方となり得ます。会社としてフレックスタイム制の導入を検討する価値がありそうです。

 

 著者プロフィール

米田徹

特定社会保険労務士/中小企業診断士。

東京都出身。東京大学理学部卒業後、富士通株式会社に入社。
コンピュータの基本OSの企画・開発に携わったのち、事業改革、人事労務管理、企業年金業務など幅広い分野を担当。平成17年に同社を退職し独立、米田経営労務研究所を開設。
現在は、経営全般・人事賃金制度・退職金制度設計を得意分野とし、「キラリと輝く会社づくり・人づくり」をモットーに中小企業のコンサルティングを中心に活動中。

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