子ども・子育て支援金制度とは
Q
今回改正された労働基準法では、月45時間、年360時間という時間外労働の限度時間を超えることができる場合について、「当該事業場における通常予見することのできない業務量の大幅な増加等に伴い、臨時的に限度時間を超えて労働させる必要がある場合」といっています。
「通常予見することのできない業務量の大幅な増加等があった場合に限り、月45時間、年360時間を超えることができる」ということだと思いますが、「通常予見することのできない業務量の大幅な増加」とは、どれぐらい増加する場合をいうのでしょうか。
また、そのような増加は、1年に何回ぐらい認められるのでしょうか。
A
通常予見することのできない業務量の大幅な増加等に伴い、臨時的に限度時間を超えて労働させる必要がある場合」について、厚生労働省は、
全体として1年の半分を超えない一定の限られた時期において一時的・突発的に業務量が増える状況等により限度時間を超えて労働させる必要がある場合をいう
といっています。
まず、時間外労働に関するこれまでの規制について簡単に説明し、改正後の労働基準法における時間外労働の限度、その限度を超える時間外労働について説明することとします。
これまで、時間外労働については、
| ① 労働時間は、1週につき40時間、1日につき8時間と定め(これらについては現在も同じ)、これに違反して時間外労働を行わせた使用者には罰則を適用する。 ただし、 ② 時間外労働に関する労使協定を締結し、労働基準監督署長に届け出た場合は、その協定に定めた範囲内で時間外労働を認め、これを逸脱した場合は、罰則を適用する。 ③ ②の協定における時間外労働時間は、月45時間以内、年360時間以内(1年単位の変形労働時間制によって労働する労働者については、月42時間以内、年320時間以内)とする。ただし、 ④ 臨時的に特別の事情が生じたときに限り一定の時間まで時間外労働を延長することができるという協定(これを「特別条項付き協定」という。)をした場合は、月45時間、年360時間(1年単位の変形労働時間制の場合は月42時間、年32 0時間)という制限を超えてその一定の時間まで延長することができる。 |
という組立てになっていました。
どのような場合に月45時間(42時間)、年360時間(320時間という限度時間を超えることができるかについては、
| 特別の事情(臨時的なものに限る。)が生じたときに限り(平成10年労働省告示第154号) |
というのみで、具体的な条件設定はされていませんでした。
また、上記④の「特別条項付き協定」において、「月45時間(42時間)、年360時間(320時間)を超える一定の時間」については、何時間まで協定できるかについては、定められていませんでした。
したがって、「月100時間」でも「月120時間」でも、また「年800時間」でも、労働基準法上は制限されていませんでした。
このことにつき、厚生労働省は、
| 「特別延長時間」については、限度となる時間は示されておらず、労使当事者の自主的協議に委ねられていること。(平成21.5.29 基発第0529001号) |
といっていました。
しかし、2019年4月1日に施行された改正労働基準法によって、「特別条項付き協定」において限度時間を超えることのできるケースについて一応の条件が加えられるとともに、時間外労働時間、休日労働時間の合計時間に上限が設けられることとなりました。

2019年4月1日から施行された改正労働基準法においては、労使協定による時間外労働時間の限度時間について、従来と同様、
| 協定における時間外労働時間は、月45時間以内、年360時間以内(1年単位の変形労働時間制によって労働する労働者については、月42時間以内、年320時間以内)とする。 (法第36条第3項、第4項) |
ことを原則としつつ、例外的にこの限度時間を超えて労働させる必要がある場合について、次のように規定しました(労働基準法第36条第5項)。
| 第1項の協定においては、第2項各号に掲げるもののほか、当該事業場における通常予見することのできない業務量の大幅な増加等に伴い、臨時的に第3項の限度時間を超えて労働させる必要がある場合において、1箇月について労働時間を延長して労働させ、及び休日において労働させることができる時間(第2項第4号に関して協定した時間を含め100時間未満の範囲内に限る。)並びに1年について労働時間を延長して労働させることができる時間(同号に関して協定した時間を含め720時間を 超えない範囲内に限る。)を定めることができる。この場合において、第1項の協定 に、併せて第2項第2号の対象期間において労働時間を延長して労働させる時間が1 箇月について45時間(第32条の4第1項第2号の対象期間として3箇月を超える 期間を定めて同条の規定により労働させる場合にあっては、1箇月について42時 間)を超えることができる月数(1年について6箇月以内に限る。)を定めなければ ならない。 |
分かりにくいですが、以下説明します。
法第36条第5項は、
当該事業場における通常予見することのできない業務量の大幅な増加等に伴い、臨 時的に第3項の限度時間を超えて労働させる必要がある場合
に、「限度時間を超える時間外労働時間等について協定できる」といっています(これを「特別条項付き協定」といいます)。
「通常予見することのできない業務量の大幅な増加に伴い、臨時的に限度時間を超えて労働させる必要がある場合」とは、具体的にどのような状態をいうのかについて、厚生労働省は、
| 全体として1年の半分を超えない一定の限られた時期において一時的・突発的に業務量が増える状況等により限度時間を超えて労働させる必要がある場合をいう(平成 30.12.28 基発第1228第15号) |
と説明しています。
法律の条文で、限度時間を超えて労働させることができるのは、「通常予見することのできない業務量の大幅な増加等に伴い、臨時的に限度時間を超えて労働させる必要がある場合」と限定的に規定した割には、「1年の半分を超えない」つまり1年(12か月)のうち6か月については限度時間を超えてもいいという説明は、かなり違和感があります。
1年のうち6か月も起こり得ることを「通常予見することができない」というのは、いかがなものでしょうか。
「予見することができない」というより予見できるのではないか、「一時的・突発的」というより半ば恒常的ともいえるのではないでしょうか。
これぐらい印象として懸隔のあるものを同列に置くというのは、日本語の表現としても疑問があります。
法の表現を重視すれば、もっと厳しい取扱いであるべきであるし、上記通達の考え方によるのであれば、法律の表現をもっと柔軟なものにしておくべきでしょう。
さらに、同通達は、どのような場合に限度時間を超える協定をするかについて、
| 具体的にどのような場合を協定するかについては、労使当事者が事業又は業務の態様等に即して自主的に協議し、可能な限り具体的に定める必要があること。(平成 30.12.28 基発第1228第15号) |
としています。
「通常予見することのできない業務量の大幅な増加等があった場合に限って限度時間を超える協定を認めようとするのならば、法または通達等でそのようなケースを限定的に示すべきであると思われますが、どのような場合に限度時間を超える協定をするかについては「当事者が自主的に協議」せよというのでは、労使任せで「通常予見することができない」とか「臨時的」といった法律の効き目はほとんどなくなってしまうのではないでしょうか。
とはいえ、限度時間を超えることができる要件について、担当行政官庁がそういっているのですから、協定当事者としてはその解釈に即して協定しておけば足りるといえます。
疑問は残りますが、とりあえず、その見解に沿っておくことにしましょう。

特別条項付き協定を締結する場合の上限時間は、すでに協定済みの時間外労働時間(多くの場合45時間)、休日労働時間を含め全部で「100時間未満」の範囲内に限られます。
この制限を超える協定は、労働基準法違反の協定として全体として無効になります。
無効となる結果、仮に1時間でも時間外労働を行わせた場合、時間外労働協定なく時間外労働を行わせたことになり、40時間労働、8時間労働を定めた労働基準法第32条違反として罰則の対象となります。
特別条項付き協定を締結する場合の上限時間は、すでに協定した限度時間(多くの場合360時間)を含め全部で「720時間」の範囲内に限られます。
1か月の上限時間である「100時間未満の範囲内」には休日労働を含んでいますが、1年についての上限時間である「720時間」については、休日労働は含まれません。
この制限を超える協定は全体として無効になり、その結果、協定なしの時間外労働が第32条違反になることは、上記(1)の場合と同じです。
すでに3でも触れましたが、特別条項付き協定によって月45時間という限度時間を超えることができるのは、1年のうち6か月以内に限られます。
1か月45時間を超える月数が6か月を超える協定は、上記(1)、(2)と同様、法違反として無効となります。
著者プロフィール
昭和43年(1968年)、労働基準監督官、以降、労働省労働基準局監督課中央労働基準監察監督官、同賃金課主任中央賃金指導官、静岡労働基準局次長、滋賀労働基準局長などを歴任し、平成10年(1998年)6月退職。
その後も、主に労働法制を中心とした労働問題の第一人者として活躍。