子ども・子育て支援金制度とは
Q
当社はIT関連の中小企業ですが、納期の切迫等で深夜まで長時間残業する社員もいて健康への悪影響を心配しています。最近、新しい過重労働対策として「勤務間インターバル」という制度があることを知りました。制度の特徴や実施する上での留意事項などについて教えてください。
A
過重労働による健康への影響は社会的に深刻な問題になっています。労働者が十分な休息をとり、必要な睡眠時間を確保できるように配慮することが重要なのは言うまでもありません。「勤務間インターバル制度」は「従業員がオフィスを退社してから翌日出社するまでの時間を一定以上空ける制度」のことで、長時間労働・過重労働の抑制対策として注目されています。
EU(欧州連合)では、2003年に労働時間に関する規制として「1日(24時間)において、連続11時間以上の休息を付与しなければならない」とする指令が出され、加盟国(英、独、仏、伊、他)では国内法により、この規制が実施されています。
近年、日本の与党・政府においても勤務間インターバル制度の導入を推進する動きがあり、厚生労働省は中小企業を対象に勤務間インターバル制度を導入する企業に対し、その費用の一部を助成する制度を今年(平成29年)2月から開始しています。
また、今後の国会で審議が予定される「働き方改革」関連法案の中にも勤務間インターバルの設定を事業主の努力義務とするといった内容が盛り込まれる見込みです。
れまで、労働基準法など日本の法律は「1日8時間週40時間」など「労働時間の長さ」を規制の対象としてきました。
しかし、1日の法定労働時間は8時間ですが、36協定による時間外労働が可能で、法律上1日の労働時間の限度は定められておらず規制の緩い状態になっています(「時間外労働の限度に関する基準」(平成10年労働省告示第154号)では1週15時間、1カ月45時間、1年360時間などの限度時間はありますが1日の限度時間の定めはありません)。
「勤務間インターバル」は、労働者が仕事をする時間(労働時間)そのものを規制するのではなく、夜遅くまで働いた場合には、その翌日の仕事開始まで、一定の「休息(オフ)時間)」を確保しなければならないという、これまでの規制とは異なる発想による制度になっています。「働く時間」ではなく一日単位の「休む時間」を設ける仕組みを作り、これを厳格に運用することで、労働者の疲労回復、働き過ぎ防止につなげる点に特徴があります。
現在、勤務間インターバルを実施する上で労働法上の定めは特にありません。制度設計は各企業の自主的な取組みに任されており、各企業が自由に制度を設計することが可能です。
実施する場合の留意事項として始業時刻及び終業時刻の繰下げの扱いがあります。前日の退社時刻から一定の時間(インターバル)を空けなければ翌日の勤務が開始できないので、この勤務禁止時間が翌日の始業時刻にかかる場合には、始業時刻を繰下げる必要が生じます。
例えば、始業時刻が午前9時、終業時刻が午後6時の会社がインターバル時間を11時間に設定したと仮定しましょう。当日夜12時まで勤務した労働者については、翌日の始業時刻を変更する必要が生じます(下図の場合、始業時刻が2時間繰下げ)。

この際、始業時刻を繰下げた分、その日の終業時刻も繰下げるか否かという点が問題になり、方法としては以下が考えられます。

それでは、インターバル制度を実施する際、実際のインターバル(休息)時間は何時間にするのが適当でしょうか。既に実施している企業の場合、7~8時間程度から、11~12時間、12時間超まで様々な事例があるようです。
前述した厚労省の「職場意識改善助成金(勤務間インターバル導入コース)」の支給要件では、休息時間が「9時間以上」からを支給対象としています。とりあえず、9時間程度のインターバル時間を設定して試行実施してみるのもよいでしょう。またEU(欧州連合)の休息時間の最低基準が連続11時間であることから、最初から11時間以上のインターバル時間を設定して実施することも考えられます。
いずれにせよ、自社の実態に最も適した形で、他の改善策も併せて検討し制度設計することが重要です。
厚生労働省の有識者会議における資料によれば、「勤務間インターバル制度」をすでに導入している企業および導入検討中の企業は10%程度とのことで、普及はまだまだこれからのようです。しかし、労働者が健康な社会生活を送る上で意義があると思われるので、今後、多くの企業で導入が進んでいく可能性がある注目すべき制度と言えるのではないでしょうか。
著者プロフィール
特定社会保険労務士/中小企業診断士。
東京都出身。東京大学理学部卒業後、富士通株式会社に入社。
コンピュータの基本OSの企画・開発に携わったのち、事業改革、人事労務管理、企業年金業務など幅広い分野を担当。平成17年に同社を退職し独立、米田経営労務研究所を開設。
現在は、経営全般・人事賃金制度・退職金制度設計を得意分野とし、「キラリと輝く会社づくり・人づくり」をモットーに中小企業のコンサルティングを中心に活動中。