子ども・子育て支援金制度とは
Q
中途採用の社員を募集したところ、応募者から提出された履歴書の性別欄には男女の記載がありませんでした。
従来の様式にあった家族構成の記入欄などもなく、履歴書の記載だけでは応募者のプロフィールが良く分からず、人事部門としては不便を感じるのですが、いつからこのような履歴書が使われるようになったのでしょうか?
A
履歴書は採用の際の選考用の参考資料として会社が必ず応募者に提出を求める書類です。海外では履歴書の様式例を定めている国はほとんどないようですが、我が国では昭和28年にJISが履歴書の様式例を制定し、その後も幾度かの改定が行われてきました。
厚生労働省は、これまで公正な採用選考を確保する観点から、JIS規格の様式例に沿った履歴書の使用を推奨してきました。
しかし、2020年7月にJIS規格の様式例から履歴書が削除されたため(LGBTを支援する団体から性別欄を廃止すべきとの要請があった事等が理由)、厚生労働省において検討を行い、参考となる新様式例が2021年4月に公表されました。
以下では、従来の履歴書様式例と異なる変更点、変更にいたった背景や、企業活動における留意事項について考えてみます。
新様式の履歴書の変更点は次の2点です。
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新たな様式では、性別欄が「男・女」のいずれかを○で囲う従来の選択式から、任意で記載する項目へと変更されています。応募者は「男」または「女」のいずれかを記載することになりますが、任意記載欄であることが注釈明記されているので、記載を希望しない場合は、未記入のままとなる場合があります。
性別欄が任意記載となった背景には、従来の履歴書の性別選択式については、トランスジェンダーの応募者が自認する性別と異なる性を記載することに苦痛を感じるなどの問題点がLGBT当事者を支援する団体などから指摘されていたことが挙げられます。性自認の多様なあり方に対応するため、性別欄の任意記載への変更が行われました。

様式変更にともない、採用選考段階では性別が不明になるケースの発生が予想されます。その際、採用の段階で性別の確認が必要な場合(例えば、警備員、助産師、坑内業務の一部等、性別の確認ができないと採用判断ができない)を除き、不用意に応募者に対して性別の質問を行うことはできないと考えるべきでしょう。採用においては一部の例外を除き、性別を理由に採用可否を決定することは法律で禁止されています(雇用機会均等法5条:募集・採用についての性別を理由とする差別の禁止)。
他方、応募者が入社した後は、健康保険・雇用保険などの手続きにおいて、性別の登録が必要になります。その際の性別は、身体的性(いわゆる「戸籍性」等)になりますが、性別には身体的性とは別に性自認上の性別があります。
企業としては採用の段階で事前に性自認上の性別や性的指向(SOGI: Sexual Orientation and Gender identity)が把握できていれば入社後のスムーズな対応が可能な場合がありえます。そこで、面接時に「当社で就業するにあたって、何か配慮が必要なことはありませんか?」等の質問をすることは、特段問題はないと考えられます。その質問がきっかけになりカミングアウトを受け、具体的な希望が把握できれば入社後の適切な対応につながります。例えば、トイレの問題については、近年関心が高まっていて、性別を問わないトイレの設置等の対応策や、無理のない職場配置等を判断する材料になります。
新様式では、JISの従来の履歴書様式例にあった「通勤時間」「扶養家族数(配偶者除く)」「配偶者」「配偶者の扶養義務」の欄が削除されました。

従来あったこれらの欄は、応募者のプライバシーの要素が非常に高い情報であるなどを踏まえ削除されたものです。しかし、これらの事情を一切把握せずに採用を決定することは、入社後、働き方をめぐって労使間でトラブルが生じるリスクがあります。そこで、面接においては、理由を述べつつ、以下に示すような質問に変えることで対応することが望ましいと考えられます。
| 【面接での質問例】 ①残業・休日出勤・・・当社では時期によっては○○時間程度の残業や休日勤務をお願いする場合がありますが可能ですか? ②緊急対応・・・当番制でオンコール対応(○○分以内の出勤)がありますが対応可能ですか? ③配置先・転勤関係・・・配置先店舗は複数ありますが、勤務可能ですか? ご家庭の事情などで何か配慮して欲しいことはありますか? 転勤をお願いする場合がありますが、対応は可能ですか? |
また、家族手当や通勤手当の費用把握のために、扶養家族や通勤経路について確認したい場合も考えられます。その場合は、理由を示すことなく質問するのではなく、採用通知を出す段階で詳細な労働条件(手当等含む)を提示するためといった理由を述べた上で、応募者に必要な質問をするような配慮が望ましいと考えます。

著者プロフィール
特定社会保険労務士/中小企業診断士。
東京都出身。東京大学理学部卒業後、富士通株式会社に入社。
コンピュータの基本OSの企画・開発に携わったのち、事業改革、人事労務管理、企業年金業務など幅広い分野を担当。平成17年に同社を退職し独立、米田経営労務研究所を開設。
現在は、経営全般・人事賃金制度・退職金制度設計を得意分野とし、「キラリと輝く会社づくり・人づくり」をモットーに中小企業のコンサルティングを中心に活動中。