子ども・子育て支援金制度とは
Q
年次有給休暇について、従業員から要望があった場合は、入社3か月後から付与できるようにしたいと考えています。ただ、6か月後でよいものを3か月後からとれるようにするだけなので、2回目の付与は、法定どおり入社から1年6か月後でよいと思いましたが、何か問題があるようなことをいう人もいます。どのように考えるべきでしょうか。
A
年休の付与日を繰り上げた場合、次期の付与日も最初に繰り上げた期間と同じ期間繰り上げる必要がありますが、雇入れから6か月後という基準日を制度的に3か月後とするのでなく、あくまで法定どおりとし、年休を取得せざるを得ない特別の事情のある労働者に例外的に付与するような場合は、次期付与日は法定どおりで差し支えないものと考えられます。
年次有給休暇は、雇入れの日から起算して6か月間継続勤務し全労働日の8割以上出勤した労働者に10日与え、それから1年ごとに(すなわち雇入れ6か月後から起算して1年ごとに)11日、12日、14日というように与えて行き、6年経過以降は毎年20日ずつ与えるべきことになっています(労働基準法第39条第1項、第2項)。つまり、労働基準法に従えば、2回目の付与は雇入れ後から1年6か月後となります。

厚生労働省労働基準局長は、年次有給休暇の繰上げ付与の場合の次期以降の付与日に関して次のような通達を出しています。
【年次有給休暇の斉一的取扱い】
| 年次有給休暇について法律どおり付与すると年次有給休暇の基準日が複数となる等から、その斉一的取扱い(原則として全労働者につき一律の基準日を定めて年次有給休暇を与える取扱いをいう。)や分割付与(初年度において法定の年次有給休暇の付与日数を一括して与えるのではなく、その日数の一部を法定の基準日以前に付与することをいう。)が問題となるが、以下の要件に該当する場合には、そのような取扱いをすることも差し支えないものであること。 イ 斉一的取扱いや分割付与により法定の基準日以前に付与する場合の年次有給休暇の付与要件である8割出勤の算定は、短縮された期間は全期間出勤したものとみなすものであること。 ロ 次年度以降の年次有給休暇の付与日についても、初年度の付与日を法定の基準日から繰り上げた期間と同じ又はそれ以上の期間、法定の基準日より繰り上げること。 (例えば、斉一的取扱いとして、4月1日入社した者に入社時に10日、1年後である翌年の4月1日に11日付与とする場合、また、分割付与として、4月1日入社した者に入社時に5日、法定の基準日である6箇月後の10月1日に5日付与し、次年度の基準日は本来翌年10月1日であるが、初年度に10日のうち5日分について6箇月繰り上げたことから同様に6箇月繰上げ、4月1日に11日付与する場合などが考えられること。) (平成6.1.4 基発第1号) |
上記通達の「イ」は今回の問題にあまり関係がないので説明は省略します。
「ロ」の本文は、
初年度の付与日を法定の基準日から繰り上げた場合、次年度の付与日もそれと同じ期間繰り上げること
といっています。
つまり、労働基準法上、初年度の年休付与日は入社から6か月経過後ですが、
使用者がそれより早く付与する(繰り上げて付与する)こととした場合は、次の(次年度の)年休付与日は、初年度に法定の基準日より付与日を繰り上げた期間と同じ期間繰り上げること。
といっているのです。
さらに、その考え方に合致する例として、通達では次の2つのケースを例示しています。
つまり、上記①、②のような取扱いは差し支えないが、これらの取扱いより労働者に不利になる取扱いは、認められないということをいっています。
この通達の考え方を、質問のケースに当てはめてみると、質問に対する回答は、

となります。
以上の考え方に照らして、年休付与日を3か月繰り上げた場合、次年度の付与日も法定より3か月繰り上げなければならないということになります。
年次有給休暇の繰上げ付与の場合の次年度以降の付与日について真正面から議論した場合、現在の厚生労働省労働基準局の見解は、上記のとおりです。
ただ、年休付与は法定どおりとしたうえで、次のような考え方もあるのではないでしょうか。
入社と同時に年休が取得できるというのは、勤務振りも分からない労働者に対して、会社としてはためらいがあると思われます。
しかし、法定どおりではなく、法定より3か月早く年休を与えるという措置は、従業員福祉の観点から実施してもいいのではないかと考えられます。質問の場合も、そのように考えられたのではないでしょうか。
しかし、それでは、上記のとおり、繰り上げたという措置が長く尾を引くことになります。
1つの措置としては、年休付与を早くはしない、法定どおりである、就業規則の規定も法定どおりである、という制度を維持することが考えられます。その上で、実務上の取扱いとして、入社3か月を経過した労働者が、年次有給休暇を取らざるを得ない事情が発生した場合に、初年度10日(あるいは5日でも)の範囲内で、特例的取扱いとして、年次有給休暇を付与する、ただし、日数は、初年度年休の範囲内である、という取扱いもあり得るのではないでしょうか。
まとめて言えば、
ということです。次のような「解釈例規」もあります。
【6箇月経過前の年休付与】
| 使用者が継続6箇月間の期間満了前に、労働者に対し年次有給休暇を与えることは、何ら差し支えないこと。 (昭和29.6.29 基発第355号) |
少々古い通達ですが、現在も有効な通達です。
令和3年3月1日発行の厚生労働省労働基準局編「労働基準法解釈総覧〔改訂16版〕」に掲載されています。
どういう考え方で臨むかは、使用者の選択です。
労働者が年次有給休暇を取らざるを得ない場合の臨時的、例外的取扱いではなく、繰上げが制度的に確立したものとみられるようになれば、最初の見解に従うべきでしょう。

著者プロフィール
昭和43年(1968年)、労働基準監督官、以降、労働省労働基準局監督課中央労働基準監察監督官、同賃金課主任中央賃金指導官、静岡労働基準局次長、滋賀労働基準局長などを歴任し、平成10年(1998年)6月退職。
その後も、主に労働法制を中心とした労働問題の第一人者として活躍。