子ども・子育て支援金制度とは
Q
当店は、24時間営業を行っており、午後10時から翌朝7時(労働時間8時間 休憩1時間)までの夜間営業専従の従業員を使用しています。
この従業員には、深夜勤務であることを考慮して、日勤であれば月額20万円程度のところを、月額24万円を支払っています。
ところが、この従業員が、24万円は基本給であり、これを基礎に深夜割増賃金を支払うよう請求してきました。
当社としては、深夜割増賃金を含めて24万円であることは説明していたつもりですが、明確に区分はしていませんでした。24万円を基礎にさらに深夜割増賃金を支払わなければならないのでしょうか。
A
所定労働時間中に深夜時間が含まれている場合は、月間の深夜時間がおおむね一定することから、基本給に深夜割増賃金を含むという取扱いをすることは可能であり、そのような取扱いを認めた裁判例もあります。
ただ、明確に区分しておく方が、問題を生じる余地は減少します。
基本給、手当等に割増賃金を含むというのであれば、その基本給、手当のうちどれだけが割増賃金に相当する部分であるのか、明確に区分されていることが必要です。
その理由は、時間外労働の割増賃金を例にとって説明すれば、ただ「割増賃金を含む」というだけでは、ある月の時間外労働が10時間であっても、50時間であっても、結局支払われる賃金は同じで、時間外労働に従事した時間に応じて支払われるべきであるという割増賃金の趣旨にまったく対応していないからです。割増賃金を支払わないと宣言しているのと同じです。
これに対し、割増賃金部分を区分した場合、たとえば、25万円の月額賃金のうち5万円は時間外割増賃金部分であるとした場合は、時間外労働に対し、20万円を基礎として法律上必要な割増賃金額を計算し、その法律上必要な割増賃金が5万円を下回るときは、25万円という月額賃金をそのまま支給し、法律上必要な割増賃金が5万円を上回るときは、25万円のほか、5万円との差額を追加支給することによって、労働基準法の要求する割増賃金の支払いをすることができます。
そのようなことから、所定賃金に割増賃金を含むというのであれば、その割増賃金部分を明確に区分することが必要であり、ただ「含む」というだけでは割増賃金を支払っているとは認められないとされているわけです。
ところが、所定労働時間中に深夜時間帯が含まれる場合の深夜割増賃金については、若干様相を異にする面があります。

質問の夜間専従従業員のように、所定労働時間が深夜時間帯と重なっている場合、月間の深夜労働時間数はほぼ一定しています。時間外労働のように月によって長くなったり短くなったりすることはありません。
月間の深夜労働時間数がほぼ一定しているということは、支払うべき深夜割増賃金もほぼ一定しているということです。
そうすると、仮に深夜割増賃金部分を明確に区分していなくても、逆算すれば深夜割増賃金部分がどの程度であるかを算出することが可能です。
質問の場合、深夜割増賃金部分を明確に区分してはいませんが、単に「含む」というのでなく、昼間の勤務であれば20万円程度のところ24万円払っているということですから、逆算するよりも、一応その考え方に従って、深夜割増賃金が支払われていると見ることができるかどうかについて考えてみましょう。
1日の所定労働時間を8時間とし、1年を平均した月間所定労働時間を168時間とした場合、時間当たり賃金は、
| 200,000円÷168時間=1,191円 |
深夜割増賃金の1時間単価は、
| 1,191円×0.25=297円75銭 |
となります。
質問の場合、1勤務における深夜時間は休憩時間を除き6時間ですから、1ヶ月の勤務日数が21日の場合、1ヶ月の深夜割増賃金は、
| 297円75銭×6時間×21日=37,516円50銭 |
となります。
つまり、20万円を基礎賃金とした場合、法律上支払うべき深夜割増賃金は37,516円50銭ですが、実際にはこれを上回る4万円を支払っているということになります(なお、1カ月の勤務日数が22日を上回ることがなければ、深夜割増賃金の額が4万円を上回ることはありません。)。
このように考えてくると、1で説明した時間外労働割増賃金のように、割増賃金額が大幅に変動する可能性がある場合と違い、A社の夜間専従従業員のように、支払うべき割増賃金がほぼ一定している場合は、必ずしも割増賃金部分を明確に区分していなくても、「深夜割増賃金を含め24万円」という示し方でも足りるのではないかということがいえそうです。
実は、裁判例においても、所定労働時間中に深夜時間帯が含まれる場合の深夜割増賃金について、明確に区分されていなくても所定賃金に含まれていると判断したものがあります。
すなわち、勤務時間22時から翌6時までという清掃従事者に対し、基本給日額4,500円、職務手当日額3,000円、合計日額7,500円を支払っていたものについて、
| 原告は、22:00から6:00までの間の就労の対価として7500円が支払わ れることを理解した上で本件契約を締結したことが認められる。
そうだとすると、特 段の事情がない限り、前記7500円の中に深夜割増賃金は含まれていると解するのが相当である。 なぜなら、契約の当事者の認識として、使用者側としては、7500円に加え深夜割増賃金を支払う意思はないであろうし、労働者側としても、7500円に加え、深夜割増賃金がもらえるものと思って契約することは通常はないからである。 (千代田ビル管財事件 平18.7.26 東京地裁判決) |
としたものがあります。
また、夜間の廃棄物収集業務に従事していた労働者に対する深夜割増賃金について
| 賃金台帳によれば、被告において月例基本給の金額は明記されているものの、基本給の中の深夜労働割増賃金分の特定は特になされていなかったものと認められる。
廃棄物収集処理に従事する勤務の大部分が夜から明け方にかけての作業であることは原告自身の勤務状況からも明らかであり、必然的に深夜労働時間帯にわたるものであることを原告は知悉していたはずであること、これに本件就業規則及び同賃金規程には基本給に深夜労働割増賃金が含まれることが明記されていることを併せ考えると原告において基本給の額から自己の本来的な深夜労働割増分を除いた基本給がおおよそいくらで、深夜労働した場合にそこからどれだけの割増賃金が加算されることになるのかはある程度は給与明細の原告の基本給が定額となっていることから逆算すれば推認できるものというべきである。 それゆえ、基本給に深夜割増賃金が実際に含まれていないという原告の主張は採用できない。(藤ビルメンテナンス事件 平成20.3.21 東京地裁判決) |
としたものもあります。
これらの裁判例は、時間外と異なり、所定の勤務時間中に一定の深夜時間帯が含まれることを承知の上で労働契約を締結した以上、明確な区分はなくとも深夜割増賃金は所定賃金の中に含まれていると判断しているものです。
したがって、質問の場合、2で述べた考え方、3で紹介した裁判例からして、基本給24万円の中に深夜割増賃金が含まれているものとして取り扱うことができると考えられます。
ただ、状況は少し違いますが、夜勤シフト中に深夜時間帯が含まれていても「深夜時間中に休憩時間が含まれる場合と含まれない場合があり、深夜労働時間が変動することからすると所定賃金中に深夜割増分が当然に含まれているとはいえない」とする判決(ライジングサンセキュリティサービス事件 平21.9.15 東京地裁判決)もあります。
したがって、できれば、単に「含む」とするだけでなく、深夜割増賃金部分を明確に区分して示しておくほうが、問題発生予防の観点からは賢明ではないかと思われます。
時間外労働と異なり、所定時間に含まれる深夜時間帯の長さはほぼ一定しており、区分も容易ですから、できるだけ区分するようにすべきでしょう。

著者プロフィール
昭和43年(1968年)、労働基準監督官、以降、労働省労働基準局監督課中央労働基準監察監督官、同賃金課主任中央賃金指導官、静岡労働基準局次長、滋賀労働基準局長などを歴任し、平成10年(1998年)6月退職。
その後も、主に労働法制を中心とした労働問題の第一人者として活躍。