組織編制③(8)「人材マネジメント方程式」
今回から、「人材マネジメント」をテーマに、WEBミニセミナーを連載アップしていきます。顧客に「価値」を提供し、経済的な成果をあげようとする企業にあって、仕事を生産的なものとし、人に成果をあげさせるためには、どのように人や仕事をマネジメントしていけばよいのか? とても大きなテーマですが、皆さんと一緒に考えていきたいと思います。第1回目は、「働くということ」についてです。
人材マネジメントについて考えるとき、「なぜ、何のために働くのか?」について考えることは避けては通れないテーマです。この記事をご覧いただいている皆さまも、「やる気」や「モチベーション」といった言葉を耳にする機会が多いのではないでしょうか。これらの言葉は、「なぜ、何のために働くのか?」と強く結びついています。
しかし、その言葉を耳にする頻度とは裏腹に、「なぜ、何のために働くのか?」という問いに対する答えを持つ人、持たせてあげることのできる人、やる気・モチベーションを高めてあげることのできる人は、まだ少ないように思います。また、答えを持っていたとしても、それは千差万別であり、一個人の中にも複数の答えがあるのではないでしょうか。
その原因の一つとして、「なぜ、何のために」ばかりに目がいってしまい、「働く」こと自体の意味が捉えられていない問題があるように思います。
「働く」ことには、働く人、仕事そのもの、仕事の成果、相手となるユーザーが関わってきます。仕事という原因に対して、労働を集中し、仕事の相手(ユーザー)にとっての成果つまり結果が生まれるという因果関係があるのです。「働く」ことを理解するためには、このような労働にまつわる原因・集中・結果の因果関係を理解しなければなりません。
「働く」ことを、働いている個人の側のみから捉えようとすると、さまざまな思いが入り、多様で複雑なものとなります。しかし、原因・集中・結果の因果関係として捉えると、下図のように整理することができます。

どのような働きをしようとも、共通する目的は、働くことによって得られる成果をユーザーに提供する、あるいはユーザーにとっての成果を実現するということです。「成果」とは、相手にとっての「よりよい変化」と言いかえることもできます。
どのような働きも、それ自体は仕事の手順に基づくプロセスでしかありません。仕事の目的はその成果であり、成果が得られなければそれは徒労に終わるでしょう。働いたことにより成果を実現し、相手に価値をもたらすこと。それが働くことの直接的な目的です。
まとめると、人は他人(ユーザー)のために、具体的な成果をもたらすために働いている、ということです。
もし、「働く」ことを自分の生活のため、とだけ捉えるのであれば、金銭的・物質的な報酬さえ得られれば良いということにもなりかねません。また、売上・利益が全てであり、売上・利益を上げた者にだけ高い報酬を払う、という考え方も同様です。
確かに、売上や利益、金銭的報酬は働いたことに対する評価であり、また、評価の大小を測る共通の尺度として、誰の目から見てもわかりやすいものです。
しかし実際には、多くの人はそれだけでは仕事に対する意欲を長く保つことはできません。金銭的・物質的な報酬だけでは、「働く」ことの向こう側にいるユーザーや、ユーザーにもたらす価値は見えづらく、「働く」ことの意味について考え、感じる力が育たないからです。
ユーザーにとっての価値を考えることのできない個人や組織は、よい仕事を続け、仕事を改善していくことができません。長い目で見れば、市場経済の中で次第に淘汰されていくでしょう。皆さんの周りにいる従業員の中にも、そのことに気づいている人たちがいるかもしれません。
ものや情報が溢れ、競争の激しい時代に身を置く一人の労働者として、また一人の消費者として、自分たちの商品やサービスが本当にユーザーに価値を与えることができているのか? 時折、疑問に思いながら、しかし、考える余裕や術を持たないために、そのまま過ごしている人がいるかもしれません。
マネジメントを担う者、すなわち経営者や管理職の立場にいる人たちは、従業員一人ひとりに、自分の仕事の成果がユーザーにどのような意味や価値をもたらしているかについて、考える力を身につけさせる必要があるのです。
このことは、金銭的報酬だけで従業員を管理することよりも、ずっと手間がかかることだと思います。しかし、実は働く従業員もそれを望んでいるのです。もし彼らに考える術を与えることができたとしたら、彼らは積極的に自ら学習し理解しようとするでしょう。
このように、「働く」ことの「意味」「価値」を考えることが、これから本シリーズのテーマである「人材マネジメント」について考え、解決していくための端緒となり、鍵となっていくのです。
次回は、働くことの対極にある「消費すること」について考えます。