第209回 定額残業代制度の変更について -1-
中川恒彦の人事労務相談コーナー
Q
当社では、本社事務職について定額残業代制度を適用していますが、最近、景気の停滞や、在宅勤務の増加等に伴い、残業時間が減少傾向にあり、実際の残業時間が定額残業代の対象となる残業時間に満たなくなって来ています。そこで、
① 社員の実際の残業時間が定額残業代の対象となる残業時間に満たない場合は法定額を支払う。
② 定額残業代の対象となる残業時間を実際の残業時間に合わせて見直す。
といった対策を考えています。このようなことは可能でしょうか。
場合によっては、定額残業代制度を廃止することも考えていますが、その場合は、どのようなことに注意すべきでしょうか。
A
①実際の残業時間が定額残業代の対象となる残業時間に満たないときの減額
定額残業代制度は、「実際の残業時間が定額残業代が想定している時間に満たなくても定額残業代を支払う」というものですから、残業時間に合わせて減額したのでは定額残業代制度ではなくなってしまいます。
②定額残業代の対象となる残業時間の引き下げ
「定額残業代の対象となる残業時間を実際の残業時間に合わせて見直す」ということは、結局、これまで支払っていた賃金を減額するということですから、「労働条件の不利益変更」に該当し、変更内容に合理性が認められない限り、労働者の合意なく変更することはできません。
③定額残業代制度の廃止定額
定額残業代制度の廃止は、多くの場合、「労働条件の不利益変更」に該当すると思われますから、単に廃止するのでなく、労働者への丁寧な説明、代償措置の提供等の措置を講ずる必要があります。
〔解説〕