採用面接で精神疾患の有無を聞いてもよいか
Q
当社はグループホームなどを営む介護事業所です。スタッフの多くはシフト制の契約になっていて、毎月の勤務状況にはバラツキがあります。
一部のスタッフから毎月の労働日数・時間や給与が変動するので生活設計が立てにくいとの苦情が出ています。シフト勤務について労働トラブルにならないように、会社としてどのような配慮をすれば良いでしょうか。
A
パートやアルバイトなどを中心に、シフト制で働く労働者は多いと思います。介護事業以外にも、コンビニ、ファミレス、ホテルのフロント、工事現場など様々な業種でシフト制勤務が行われています。シフト制はその時々の事情に応じて柔軟に労働日・労働時間を設定出来る点で労使双方にメリットがある場合がありますが、一方、所定労働日が曖昧であることなどにより労働トラブルに発展するリスクもあります。厚生労働省は、需要の繁閑に対応したシフト制労働者が拡大しているとして、現行の労働法関係諸法令などに照らして、適切な雇用管理に向けた「留意事項」を明らかにしました(令和4年1月)。以下では、その内容も踏まえつつ、シフト制勤務についての留意点について検討します。
「シフト制」とは、労働契約の締結時点では労働日や労働日数を確定的に定めず、一定期間(1週間、1カ月など)ごとに作成される勤務シフトなどで、初めて具体的な労働日や労働時間が確定するような勤務形態を指します。
法律では、雇用契約書に所定労働日を明記することを求めていないので、「所定労働日はシフトによる。」とした労働契約は原則として適法といえます。
一方、労働契約では、「契約期間、始業・終業時刻、休憩、休日、賃金の決定方法、支払時期・・・」など必ず書面で明示しなければならない事項が決められていて、シフト制労働契約の場合も同様です。
例えば、「始業・終業の時刻」については、雇用する時点で確定している労働日については、労働条件通知書などに「シフトによる」と記載するだけでは不十分であり、労働日毎の始業・終業時刻を明記するか、原則的な始業・終業時刻を記載した上で、雇用契約時点で定める一定期間分のシフト表などを併せて労働者に交付するのが適切な明示方法となります。
また「休日」について具体的な曜日が確定しない場合であっても、休日の設定に関する基本的な考え方(例えば、休日は週〇日以上等)を明示しなければなりません。

シフトの作成・変更やその他の設定については、以下のような事項について労使で話し合ってルールを定めておくことことがトラブル回避のために役立つと考えられます。
| (設定例) ・毎週、月、水、金曜日から勤務する日をシフトで指定する ⇒労働日が設定される日が明確になる ・1カ月〇日程度勤務、1週間あたり平均〇時間勤務 ⇒目安になる労働日数や労働時間数が明確になる ・1カ月〇日以上勤務、少なくとも毎週月曜日はシフトに入る ⇒最低限労働する日数、時間数などが明確になる。 |
コロナ禍において飲食業などで突然顧客数が減って、シフト制社員の労働日数が減らされるケースが増加しました。シフト制はシフトにより所定労働日が決まるので、使用者の都合で労働日数が減ってもシフト設定以外の日は休業にはあたらず休業手当を支払わない、とする企業が多くでたことで、日本中でトラブルが発生しました。
厚生労働省は「新型コロナ対応休業支援金・給付金」などで、これら休業手当の支払いを受けることが出来なかった労働者の救済を行っていますが、制度を知らずに生活に苦しんでいる人も多いと考えられます。
コロナ関連ではありませんが、介護事業所で働く労働者が、ある時期から(勤務態度に問題があるとして)シフトを大幅に減らされたことは違法であるとして、賃金等を請求した事件があります。雇用契約書には勤務日数の記載はなく、「シフトによる」となっていました。裁判では合理的な理由がなく、シフトを大幅に減らしたのはシフト決定権限の濫用にあたるとして、シフトの削減がなければ得られた賃金の支払いを事業者に命じました(シルバーハート事件:東京地裁令和2.11.25)。
シフト制勤務は労働日数・時間などが曖昧になりがちですが、雇用する際には、労働条件をできるだけ具体的かつ詳細に明示することで、労働トラブルの発生を未然に防ぐことが可能です。
今回明らかにされた厚生労働省の留意事項では、シフト制労働者の解雇・雇止めや募集・採用、待遇、保険関係などについての留意点も記載されています。
これらの資料などを参考にして、シフト制労働者の適正な雇用管理を行ってください。

著者プロフィール
特定社会保険労務士/中小企業診断士。
東京都出身。東京大学理学部卒業後、富士通株式会社に入社。
コンピュータの基本OSの企画・開発に携わったのち、事業改革、人事労務管理、企業年金業務など幅広い分野を担当。平成17年に同社を退職し独立、米田経営労務研究所を開設。
現在は、経営全般・人事賃金制度・退職金制度設計を得意分野とし、「キラリと輝く会社づくり・人づくり」をモットーに中小企業のコンサルティングを中心に活動中。