株式会社プライムコンサルタント

業績連動賞与の導入と人事評価に連動した個人別賞与配分

お客様の現状と課題

N社は金属加工業の分野で独自の技術を持つ会社で、新社長への事業承継後、就業規則の改定や工場ごとに運用が異なっていた諸手当や出張旅費の改善・統一など社員の就業環境の整備を進めてきました。
賞与制度の見直しもその一環として評価制度の整備と並行して実施しましたが、当時の状況は下記のようなものでした。

  1. 「前年・前回の支給額±α」をベースに社長判断で個人別の賞与額を決めてきた
  2. 決まった月数以上の賞与支給が定例化して、既得権のようになっている

先代社長の時から経営者が全体バランスを考えながら個人別の賞与額を決めてきましたが、会社として大きな利益が出ても支給額は大きく変わらず、部門業績や人事評価との連動も薄いことから、現場で中心的な役割を担っている社員ほど不満を抱えている現実がありました。

コンサルティングの内容・結果

中小企業ではこうした人事制度改革は社長と担当役員のみで進めるケースも多いのですが、N社には労働組合があり、労使協議での丁寧な説明が必要とされます。そこで「制度改革が社員の不利益にならず、プラス要素をしっかり見せられること」「社員に対して分かりやすい説明ができ、現場の社員でも理解できる仕組みであること」を意識して、賞与制度の見直し作業を進めました。

賞与配分の基本方針

コンサルティングでは、基本方針として下記の4点を定めました。
【機能】賞与の基本は利益の配分である
【目的】賞与は半期の貢献褒賞+次の半期への投資・インセンティブ
【総額決定】会社・部門業績に連動させて都度、会社が決定する
【個人配分】賞与は個人の貢献度に応じて配分する

以前の労使協議では世間相場に沿った賞与支給という要望も労働組合から出ていましたが、同業他社や同規模企業と横並びでの賞与支給は納得感があるように見えて、悪平等の側面も強くあります。世間相場や他社業績と自社の業績には何の関係もなく、特にN社のように独自の技術を持ち、平均年収も他社に見劣りしない企業にとっては、世の中が不景気であっても、優れた経営戦略と従業員のがんばりがあれば高収益を上げることができます。そのような時でも世間相場に倣って賞与を決めることは、従業員の向上心や成長意欲を低下させ、結果的には会社の衰退と組合員の不利益につながるという説明を組合幹部に対して行い、同意を得ました。

賞与の総額決定

N社では営業利益連動型の業績連動賞与を採用しました。

下図のように売上高から仕入・外注費などの原価を差し引いたものが「限界利益(粗付加価値)」であり、そこから従業員の給与・賞与をはじめとする人件費や役員報酬、減価償却費などを含む販売費と一般管理費を引いたものが「営業利益」で、本業の営業活動で得た利益となります。
賞与総額の一部は年間最低保証分として予め人件費に含めておき、「変動賞与を支給する前の営業利益」(表のピンク部分)の一定割合を変動ファンドとして会社業績に応じて賞与原資に上乗せする手法です。

なお、「営業利益のx%」という変動ファンドの配分率については、一定水準を超えたら配分率を少しずつ下げる制度設計にしています。これにより、大きな利益が出た時にはその一部を会社の将来に向けた投資や内部留保にも回し、従業員への利益還元と企業の成長資金確保の両立が可能となります。

評価に連動した個人別賞与の配分

従来は、「各自の基本給の●ヵ月分」をベースに働きぶりや仕事の成果を踏まえた社長判断で個人別の賞与額を決めてきましたが、賞与の算定基礎が基本給に置かれており、勤続が長い社員ほど基本給が高くなりやすいため、次のような状況が生じていました。

Aさん:Ⅲ等級、基本給30万円
Bさん:Ⅲ等級、基本給34万円

2人とも同じ人事評価 ➔ 常にBさんの賞与が高くなる
Aさんの評価 > Bさんの評価 ➡ Aさんは評価は高くても、Bさんと同じ程度 or Bさんより低い賞与

こうした問題は社長による個別調整で対応していましたが、「Aさんを調整すると、CさんやDさんも調整しないとバランスが崩れる」といったように適切に対応できる範囲を超えており、公平性や妥当性に欠ける賞与配分となっていました。
そこで「年功要素の撤廃」「同じ等級で同じ評価なら同じ賞与」という機会均等の原則を掲げ、各社員の等級と評価に応じた配分点数分の賞与が支給されるする仕組みを整えました。

■賞与配分点数表(イメージ)

1点あたりの単価は「賞与総額 ÷ 全社員の点数合計」で算出できますから、配分点数の大きさが各社員の貢献度の大きさを表すと考えれば、すべての社員が自分の役割責任と貢献度の大きさに見合った賞与額がもらえることになります。

労働組合への説明

配分点数表を用いた個人別賞与配分法で試算を行った結果、一部には従来の賞与との金額差が大きくなる社員も出ることが明らかであったため、労働組合に対しては下記の申し入れをして合意を得ています。

  1. 移行措置として、数年間は安定賞与(=各自の基本給の●ヵ月分)と貢献賞与(=配分点数表による個人別配分)を併用する。ただし、機会均等の実現という制度改定の目的から安定賞与は徐々に縮小し、最終的には廃止する。
  2. 賞与制度の見直しは新しい評価制度と密接に関係するため、1年間のトライアル期間を設ける。トライアル期間中は経営者による賞与額の一部調整も実施する。
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