採用面接で精神疾患の有無を聞いてもよいか
Q
厚労省が「職務給の導入に向けた手引」を公表し、多くの企業がすでに職務給を導入していると聞きました。これまで、職務給は日本ではあまり普及していないものと認識していましたが、この点についてはどのように理解すればよいのでしょうか。
なお、当社では今後、役割等級に基づく人事制度の導入を検討しています。
A
給与の決定方法は経営の根幹に関わる重要な要素であり、各企業は試行錯誤を重ねながら、自社に適した独自の給与体系を構築しています。
基本給の決定方式は大きく分けて、職能給、職務給、そして役割給の三つが代表的な方式と考えられます。本稿では、これら三方式の違いと、今回、厚生労働省が公表した「職務給の導入に向けた手引」における職務給の考え方について概説します。
職能給、職務給、役割給は、企業での給与体系の決定方式として、それぞれ異なる考え方に基づいています。
① 職能給
従業員の持っている「職能」や「スキル」に基づいて支払われる給与が職能給です。日本の高度成長期 から 1990 年代半ばまでの正社員の賃金は、職能資格制度に基づく職能給が一般的であったと言えます。
職能給は、従業員がどれだけ専門的な知識やスキルを持っているか、またはその能力を発揮できるかに応じて支払われると考えられます。ただし、多くの正社員は、職務遂行能力を勤務経験の蓄積によって上昇させていくので、結果として、職能給は年功的な運用になりがちです。毎年、賃金表の号俸が上昇し、それにともない賃金が上昇する定期昇給の慣行も、このような背景から生じていました。
② 職務給
職務給は従業員の仕事の内容や業務の「職務」に基づいて給与が決まる制度です。仕事そのものの難易度や責任の度合い等を評価して給与が決まります。職務の内容を細分類し職務分析・職務評価を行い等級付けを行って賃金のレートをつけます。
職務給は欧米において一般的な制度です。企業横断的に職務を分類して、それに対応する賃金体系になっているので、同一の職務に従事していれば、どこの企業に雇用されても賃金は同一になり、したがって同一労働同一賃金が実現しやすい給与システムといえます。
しかし職務給は、企業内での長期的なキャリアパスに基づく報酬体系とは相性が悪く、職務概念を基本とする(欧米型の)職務給は日本的雇用環境のもとではなじみにくいという事情がありました。
③ 役割給
従業員の役職や業務の「役割」に応じて給与が決まる制度です。企業によって要請される役割に対応した賃金であり、どのような職務(ジョブ)に従事したかではなく、自分の与えられた役割(職責)を、どのようにこなして企業に貢献したかを評価します。
役割等級ごとに給与のレンジ(幅)を設定し、その人が果たすべき責任や期待される成果に応じて給与が変わります。職務給と似ていますが、職務概念をあいまいにしたまま、個々人の役割(ミッション)に焦点を当てることで、市場の要請に応えやすい点が特徴となります。ただし、一般正社員の場合、役割といっても不明確になりがちであり、人に着目する日本型人事制度においては、個人の能力を重視した「職能給」が主流といえます。
以上の方式毎の大枠の違いは企業の給与体系の設計において、どの基準(職能、職務、役割)を重視するかによって決まるといってもよいでしょう。①の職能給は属人的な「能力」に着目するのに対して、②職務給、③役割給は、労働者の従事する「仕事」に着目している点に違いがあるといえます。

厚生労働省は今年 2 月、「職務給の導入に向けた手引き」を公表しました。これは、政府が進める労働市場改革の一環であり、「個々の企業の実態に応じた職務給の導入」が、「リスキリングによる能力向上支援」や「成長分野への労働移動の円滑化」と並ぶ、三位一体の労働市場改革の柱の一つとされているためです。
この手引きにおいては、職務給を「基本給における『役割・職務の重要度』に基づいて決定される部分」ととらえているとしています。この定義からは、前述したような職務を細分化する欧米型の「職務給」とは異なり、「職務」だけでなく個人の「役割」の要素を加味した、日本型の「職務給」と捉えてよく、したがって厚労省では、前述した「役割給」的な意味合いも含んだ、「職務給」の導入促進を意図しているように考えられます。アンケート結果で「多くの企業が職務給を導入済み」と回答しているのも、このような「職務給」の捉え方に基づくものと解されます。
そういった事情も含め、近年、日本型の「職務給」に企業や社員の注目が集まっているといえます。公表された手引では、職務給は、導入している企業からも社員からも、メリットを実感しているという声があがっているとしています。
この手引では、日本における職務給がどのような導入状況にあるのかを知る必要があるということで、以下のような内容がまとめられています。

給与・評価システムに悩みのない企業はほとんど存在しないと言っても過言ではありません。「関心はあるものの、制度の変更は大変そうだ」と導入をためらっている企業や、職務給や役割等級制度の導入を決めたけれど、実際に何から始めればよいかわからないといった中小・中堅企業も多いのではないでしょうか。制度改定を進める際には、厚生労働省が企業向けに導入を支援するための資料やツールを公開しているので、これらの活用、更には外部の専門家やコンサルティング会社の活用を検討されるとよいでしょう。ご検討の際には、ぜひ当社にご相談ください。
著者プロフィール
特定社会保険労務士/中小企業診断士。
東京都出身。東京大学理学部卒業後、富士通株式会社に入社。
コンピュータの基本OSの企画・開発に携わったのち、事業改革、人事労務管理、企業年金業務など幅広い分野を担当。平成17年に同社を退職し独立、米田経営労務研究所を開設。
現在は、経営全般・人事賃金制度・退職金制度設計を得意分野とし、「キラリと輝く会社づくり・人づくり」をモットーに中小企業のコンサルティングを中心に活動中。