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第14回「労働法総論1」~駆け出し人事コンサルタントの学習・成長ブログ~

【強い組織を作る!人材活用・評価・報酬の勘どころ】通算第111回

(2018年10月)

こんにちは。人事コンサルタント(社会保険労務士・中小企業診断士)の古川賢治です。



 今回から、本シリーズ「駆け出し人事コンサルタントの学習・成長ブログ」は、新たなテーマについてお伝えしていきます。

 そのテーマとは、「労働法」です。2019年4月に施行される働き方改革関連法は、戦後最大級の労働法改革とも言われ、企業の人事・労務管理は今後ますます高度・複雑化していくことと思われます。
 しかし、そのような中にあっても、まずは基本を押さえたうえで、企業としてどのように対応していくのかを考えることが大切であるのは、言うまでもありません。

 そこで、連載第14回からは「労働法のキホンを学ぶ」をテーマに、企業の人事・労務管理者として、"これだけは押さえておきたい労働法のキホン"にポイントを絞って、様々なトピックをお届けします。
 新シリーズ1回目となる今回は、「労働法総論1」と題し、労働法とは一体どのようなものであるかについて、概念や成り立ち、法体系等を交えながらその概観を明らかにしていきます。

1. 労働法概観


① 労働法とは何か

今回は、労働法総論について学習します。突然ですが、「労働法」とは一体どのようなものを言うと思いますか?


文字通り、労働に関する法律のことで、働くうえで関係してくる様々な法律のことを指しているのだと思います。


そうですね。実は、「労働法」という名前の単一の法律があるわけではないのです。労働法とは、『労働基準法』や『労働契約法』、『労災保険法』といった多くの法律、命令、行政解釈、判例などから成る、労働関係を規律する法(ルール)の総称なのです。


労働法とは法律以外にも、命令・行政解釈・判例も含む一連のルールを言うのですね。この中で、法律は何となくイメージしやすいですが、その他の3つはどのようなものなのでしょうか?


それについては、次の図表1にまとめましたので、確認してみてください。



図表1 労働関係を規律するルール
ルール 説明
法律 国会の議決を経て制定されるもの。労働基準法や労働契約法など。
命令 行政機関が制定するもので、内閣が制定する「政令」、各省の大臣が制定する「省令」等がある。例えば、労働基準法施行規則は厚生労働省令である。
行政解釈 行政が法運用を行うために、自主的にする解釈。例えば、厚生労働省労働基準局等の上級機関が下級機関に発する「通達」など。
判例 裁判所の判決として示された法的判断で、その後の他の事件においても同様の判断が適用される可能性のあるもの。

それからここで、労働法の世界に登場する行為者を紹介します。それぞれについて詳しくは、次回以降の講義で適宜取り上げていきますので、ここでの説明は省略します。



  1. 国家
  2. 用者(≒雇う側)
  3. 労働者(≒働く側)
  4. 労働組合

分かりました。行為者として4者いるということだけ覚えておきます。


② 労働法の成り立ち

次に、労働法の成り立ちや発展について見ていきましょう。労働法は、もともと欧州(ヨーロッパ)で発展してきました。市民革命以降、近代市民法における「契約自由の原則」の下では、使用者と労働者の関係は、対等な私人間の契約関係の1つにすぎないとみなされていました。したがって、その契約関係は当事者間の自由な合意によって委ねられることになります。


ちょっと待ってください。対等な関係として当事者間の自由な合意に委ねると言っても、当時のような資本主義初期の発展段階では、農村から都市に出てきた大量の未熟練労働者が、生活の糧を得るために自らの労働力を売る必要に迫られていたと聞きます。そのような労働力が過剰な市場においては、労働者の交渉力は弱まり、対等な関係とは言えなかったのではないでしょうか?


はい。確かに労働者側には、生きていくためにはいかなる劣悪な労働条件・環境であっても、その条件に同意して働かざるを得ないといった事情がありました。そして、一旦合意した労働条件は、市民法上は対等な取引の合意事項としてその効力が認められることになります。その結果、各国で過酷な労働による健康破壊や女性・年少者の酷使などの問題が生じました。


使用者と労働者の間の交渉力の格差を無視して「契約自由の原則」を貫けば、当然そのような悲惨な状況に陥ってしまうだろうと思います。その後、どうなったのでしょうか?


労働者を保護するために、各国で契約自由の原則を部分的に修正する取り組みがなされていきました。つまり、ここで初めて労働法が誕生したのです。具体的には、代表的な3つの取り組みを次の図表2に整理しましたので、確認してください。


図表2 労働法の誕生
取り組み 労働法の誕生
労働保護法の制定 ・ 労働条件の最低基準を法律によって定め、その基準を下回り労働させることを罰則や行政監督で禁止する労働保護法を制定した。
・ 1802年、イギリスで工場法が成立し、年少者の労働時間を規制。1844年、女子の労働時間規制を導入。
労働組合法の制定 ・ 労使間の交渉力の格差を是正するため、労働者の団結体である労働組合の結成とストライキ等を認めた。
・ 1919年、ドイツのワイマール憲法で団結権を保障し、これを侵害する合意・措置を違法とした。
労働市場の規制 ・ 労働力のマッチングを行う仲介業者による人身拘束・人身売買を禁止するため、民間による職業紹介を禁止した。
・ 1919年、国際労働機関(ILO)による勧告で、「有料職業紹介所廃止(職業紹介の国家独占)」を打ち出した。

なるほど。ヨーロッパで誕生した労働法なので外国での出来事が中心ですが、その誕生の背景がつかめたような気がします。


次回は、今回の続きとして、労働関係の特色や労働法の体系、労働条件を規制するシステムなどについてお伝えしていきます。労働法総論ということで、個別具体的な話よりもやや抽象的な話が続きますが、次回も頑張ってついてきてください。


広範にわたる労働法の様々なトピックを理解するうえでは、全体的な視点を持つことが不可欠だと思います。教授、本日はありがとうございました。



今回の連載内容は、2017年6月1日の講義を参考に執筆しました。
東京労働大学講座「労働法総論」(荒木尚志 東京大学大学院法学部政治学研究科教授)

※東京労働大学講座は、独立行政法人労働政策研究・研修機構が毎年度開催している、労働問題に関する知識の普及や理解の促進を目的とした講座です。今年度で66回目を数え、これまでの修了者は27,000人を超える歴史と伝統を誇る講座です(2018年1月時点)。


本連載は、下記の当社コンサルタントが順次、執筆いたします。
菊谷寛之(代表)
渡辺俊(中小企業診断士)
田中博志(中小企業診断士)
津留慶幸(特定社会保険労務士)
古川賢治(社会保険労務士・中小企業診断士)

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