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障害者の雇用義務と企業の対応 -2018年10月号-

【ホワイト企業の人事労務ワンポイント解説】第14回

米田徹先生のプロフィールはこちら

(2018年10月)

Q 当社は従業員数約40名の中小企業で今後従業員数の増加を見込んでいます。企業は障害者を雇用する義務があると聞いており、当社としても前向きに取組んでいきたいと考えています。
 障害者の雇用義務について概要を教えてください。

A 新聞等で大きく報道されたように、率先して障害者雇用に取り組むべき立場にある中央省庁や自治体が、その雇用者数の割合を水増ししていたとして大きな問題になっています。
 国の33行政機関のうち27機関で不適切な障害者数の算入があり、従来6,900人の障害者を雇っていたとしていたのが、実際には半数の計3,460人が水増しされていたというから驚きです。平均雇用率も従来の2.49%から法定雇用率を大幅に下回る1.19%に半減しました。
 国や自治体だから自主的に雇用義務を果たし模範となっているはずと信じていた国民や民間企業への悪影響が懸念されますが、障害者と共に働くのがあたり前の社会を作ることが大切なのは言うまでもありません。

◆障害者雇用の状況

 国の行政機関等のチェックが甘いのに対し、民間企業に雇用されている障害者は年1回個人名や障害者手帳の番号報告など厳しいチェックを受けています。そしてその数は14年連続で過去最高を更新しています(H29.6.1現在)。
 常用労働者に占める障害者の実雇用率は1.97%で障害者雇用率達成企業は50.0%と民間企業での障害者雇用は着実に進展している状況です。


米田先生10月号図表1.JPG

◆障害者雇用促進法の改正

 障害者の雇用促進、職業リハビリなどにより職業の安定を図ることを目的に「障害者雇用促進法」が制定されています。法改正により2016年4月に①雇用面での差別の禁止、②合理的配慮の提供義務、③相談体制の整備、苦情処理紛争解決援助等が施行されています。
 例えば、単に「障害者だから」という理由で求人への応募を認めない、また採用後に労働能力などを適正に評価することなく異なる取り扱い(賃金、福利厚生等)をすることは①の差別禁止に抵触します。
 ②の合理的配慮とは、例えば視覚障害者に点字や音声などで採用試験をしたり、知的障害がある人向けに図などを活用した業務マニュアルを作成したりというように、障害の特性に配慮した措置のことです。(厚労省が「合理的配慮指針」を公表しています)。③は事業主には障害者からの苦情を自主的に解決することが努力義務化され、社内解決が困難な場合は都道府県労働局長による勧告や紛争調整委員会による調停が行われます。

◆法定雇用率改定と障害者雇用納付金制度

 更に当該法改正では「④法定雇用率の算定基礎に精神障害者を加える」こととし、「法定雇用率」も下表のように引上げられました(実施はH30.4~)。

米田先生10月号図表2.JPG

 現在、民間企業の法定雇用率は2.2%ですから45.5人以上の常用労働者(週所定労働時間20時間以上、かつ1年を超えて雇用の見通しの者)を雇用する事業主から障害者の雇用義務が発生します。
 障害者雇用促進法では「障害があるため、長期にわたり職業生活に相当の制限を受け、又は職業生活を営むことが著しく困難な者」を障害者と定義しています(同法2条)。そして、障害者雇用率の対象になる障害者は、身体障害者、知的障害者、精神障害者で、それぞれ、身体障害者手帳1~6級の交付を受けた者、児童相談所などで知的障害者と判定された者、精神保健福祉手帳の交付を受けた者とされています。
 障害者数のカウントは重度(身体障害1~2級、重度知的障害)の場合で週所定労働時間30時間以上の場合は2と算定、また、短時間労働者(週20~30時間未満)の場合は0.5(重度障害者は1)と算定します。そして法定雇用率を満たしていない場合には納付金を徴収する一方、障害者を多く雇用している場合には、調整金、報奨金などの支給制度があります(下記「障害者雇用納付金制度」を参照)。

●障害者雇用納付金制度(常用労働者100人超企業が対象)
①法定雇用率を下回る場合→不足1人あたり月額5万円(200人未満の企業は4万円)を徴収
②法定雇用率達成の場合→超過1人あたり月額2.7万円調整金支給(100人以下の企業は月額2万円の報奨金支給)

◆今後の動向とまとめ

 上述した法定雇用率については2021年4月までに、さらに各0.1%ずつ引き上げられ、民間企業では2.3%になる予定です(その場合、対象企業は45.5人以上から43.5人以上に広がります)。
 また厚労省設置の障害者雇用に関する研究会では「障害者雇用納付金制度の対象企業を現行の100人超から50人以上に拡大したり、これまで対象としていなかった週所定20時間未満で就労する障害者も対象にすべき」との提言を行ったとの報道が最近ありました(労働新聞8/27付)。
 現状では企業は「一般事務のできる軽度の障害者」を雇おうとする傾向が強いようですが、障害者は販売、製造から各種専門職まで、様々な職種で雇用されています。法定雇用率の数字を満たすことだけが目的化してしまってはならず、障害者が働きやすい職場環境を作り、「共生社会の実現」また企業の「労働力確保」や「生産性の向上」に結びつけていくことが重要です。
 冒頭の質問者のように、これから障害者雇用に取組む必要のある企業ではハローワークや地域障害者職業センター、障害者就業・生活支援センターなどの支援機関との連携や各種の支援制度や助成措置(設備等)を活用することも重要なポイントといえるでしょう。障害者雇用への理解を深めてじっくり取組むことが大切です。

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