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第79回 中堅・中小企業におけるこれからの管理職のあり方-12-

【強い組織を作る!人材活用・評価・報酬の勘どころ】

 

(2016年11月)

【第12回 『マネジャーに必要な素養とは?』(3)】

 こんにちは。人事コンサルタント・CDA・中小企業診断士の渡辺俊です。
 前回は、ロバート・カッツの提唱する「管理職に必要な3つのスキル」のうち、「ヒューマンスキル」を取り上げて考えてみました。そしてこれにつながる「管理者に必要な5つの技法」をご紹介しました。
 これは、私たちのパートナーである現代マネジメント研究会 菅野篤二先生が提唱しているものです。菅野先生は、これまで、多くの企業の管理者教育で、この5つの技法を伝えてこられました。
 今回からこの5つの技法について、みなさんとともに考えてみたいと思います。
 まずは「リーダーシップの技法」について取り上げます。

1.リーダーシップとは何か?

 菅野先生は、「リーダーシップとは、リーダー(集団の一人)がある状況のもとで、意図(目標)を実現するために、関係する人に意図(目標)の達成に向かって自発的に行動(協力)するよう働きかける過程(行為)である」と言っています。

強い文中図表1.jpg

 この定義の中には、「リーダーシップ」を理解する上でのポイントがいくつかあります。
 まず一つ目は、「リーダー」とは誰か?ということです。
 リーダーは、集団の一人ですから、その集団の一員であれば、誰もがなることができます。しかし、リーダーには、もう一つ、大事な条件があります。
 それは、その集団に関して、「何らかの意図・目標」を持っているということです。つまり、企業組織においては、「何らかの意図を持って、組織目標の達成に向かわせる責任のある者」が、リーダーであると言えましょう。

 二つ目は、「関係者」とは誰か?ということです。
 一般には、リーダーが管轄する組織のメンバーであると考えられます。
 確かに、組織目標達成のために、実際に活動するのはメンバーでしょう。しかし、力を発揮してほしいのは、メンバーだけではないはずです。上司、関連する他部署、外部の協力業者など、わが組織の目標を達成するには、様々な人たちの支援が欠かせません。
 したがって、リーダーが働きかけなければならない「関係者」は、自部署メンバーに限らずたくさんいると言えます。

 三つ目は、働きかけの目的が、「相手が自発的に行動(協力)するようになること」だということです。
 経済的な強制や心理的な操作によって、仕方なく、いやいやながら相手が動くというのは、リーダーシップによるものだとは言えません。
 「関係者」が「リーダー」の働きかけを進んで受け入れ、その思いや考えに共感し、自らも一緒になって協力して初めて、リーダーシップが効いたと言えるのです。
 リーダーシップは、前回考察した「対人関係」のビジネスシーンを思い返してみると、特に、自組織のメンバー全員に、
「会社や組織の方針や目標を伝え、共有する」
「その方針や目標に向かうことの意味や意義を語り、共感を得る」
「その方針や目標を、チーム一丸となって達成するよう動機づける」
といった局面において求められます。また、
「経営トップや上司に対して、報告、相談、提案、進言を行う」
「他部署の責任者やメンバーに、協力を願い出る」
といった際にも求められます。
 そしていずれの場合においても、リーダーシップの本質は、相手の「内発的動機」を芽生えさせることであると言えるのではないでしょうか。

2.リーダーシップの3つの理論と3つのスタイル

 リーダーシップを理解するには、過去の研究成果であるリーダーシップの理論を知ることも有効です。それらの理論は、研究が進むにつれ、次のような変遷をたどってきました。

1.リーダーシップ特性理論
2.リーダーシップ行動類型論
3.リーダーシップ状況適合論

 特性理論は、リーダーシップは、ある特定の人が持っている天性のものだという考え方です。
 すぐれた功績を残したリーダーには共通する特性があるはずだという仮説のもとに、さまざまな研究が行われました。しかしその仮説を実証することはできず、やがてこの理論は限界を迎えます。

 これに対して、リーダーの内面ではなく、外面的に表れる行動スタイルからリーダーシップの本質を研究したのが行動類型論です。
 行動類型論は、リーダーシップを、課題を達成していく機能と、職場集団を維持して人間関係に配慮するという機能の両面から説明しています。
 このように行動スタイルからとらえることにより、リーダーシップは特定の人だけに備わっている才能や資質ではなく、本人に自覚・ヤル気があれば、教育によって身に着けていくことが可能なものであると考えられるようになりました。その点が、特性理論との大きな違いだと言えます。

 ところで、行動類型論の中にも、いくつかの研究結果としての類型があります。中でも、クルト・レヴィンが表した、専制型、民主型、放任型の3つのタイプは、広く知られています。

強い文中図表2.jpg

 そして、レヴィンがそれぞれのタイプと成果との関係を調査したところ、集団の凝集性、メンバーの積極性や満足度、集団の作業成果のいずれにおいても、専制型や放任型に比較して、民主型のリーダーシップが最も優れているという結果が出ています。
 このように行動類型論によって、よりよいリーダーシップのスタイルが明らかにされましたが、現実には、そのスタイルが有効でないケースも散見されました。
 そこで生まれてきたのが、有効なリーダーシップのスタイルは、状況によって異なるという状況適合論です。
 リーダーシップは、ある一定の特性を身に着け、それを常に発揮すればいつもよい結果となるという性質のものではなく、状況や相手によって、その場の判断で臨機応変に使い分けるべきものと考えるのが、この理論の特徴です。
 このように見てみると、「民主型のリーダーシップ」という基本スタンスを維持しつつ、状況や相手に応じてリーダーシップのあり方を変えることのできる洞察力や柔軟性を持てるようにすることが、管理者教育の方向性だと言えるのではないでしょうか。

3.これからのリーダーシップのあり方

 

 リーダーシップの研究は、企業の経営環境の変化に伴ってさらに進化し、カリスマ的リーダーシップ論や、変革型リーダーシップ論が生まれてきました。
 カリスマ的リーダーシップ論は、フォロワーに対して極めて深く大きな影響を及ぼす人こそがリーダーであり、自信にあふれた姿勢で、極めてハイレベルな行動(たとえば、思いもよらない将来ビジョンを描いて提示する、確信を持ってフォロワーに目標を示す、など)をとっていくことで、カリスマとして認知され、フォロワーの信頼や服従を得ていくという考え方です。

 また、変革型リーダーシップ論は、不透明な状況下でも変化に柔軟に対応するために、組織文化や戦略に対する変革力に注目した考え方です。
 一方的に人と組織を牽引するのではなく、フォロワーとの相互依存的な関係の中で、自身のビジョンを伝えて共感を引き出し、社員一人ひとりの成長を支援しつつ、組織学習を促進することで、変革し続ける組織を作っていくというリーダーシップのあり方です。

 この考え方をさらに押し進めたサーバントリーダシップの考え方も提唱されています。リーダーが自らの良心に従い、より良い世界へ導くことを自身の責務と信じ、周囲の人々や組織にとって優先されるべきことがなされているか、常に心をくだく「奉仕」こそがリーダーシップの本質だという考え方です。
 リーダーがメンバーの自主性を尊重し、メンバーの成功・成長への奉仕や支援に注力することで、信頼関係が形成され、コミュニケーションが円滑になり、結果として、ビジョンや目標への共感・協力が得られやすくなります。共有されたビジョンや目標を中心に、メンバーが主体的に動くため、ビジョンの実現・目標達成の可能性も高まるのです。
 いずれも、IT、ネットワーク社会、グローバル社会への加速度的な変化が進む中、既成の制度やルールのもとで、従来どおりの管理統制的なマネジメントをし続けることから脱皮するリーダーシップのあり方だと言えます。

 これらの新しい理論では、リーダーの個人的な資質も改めて着目されており、そういった資質を誰もが教育によって身に着けられるかというと、なんとも言えない面があります。しかし経営を取り巻く環境が激変、複雑化し続ける今の時代の組織運営にあたって、これからの管理者が意識すべき素養であることは間違いないように思うのです。
 そうであるならば、管理者がその意識を持ち続けるように動機づけるしかけを探求し、試行錯誤しながら管理者教育のプログラムに作り上げることが、とても重要な課題であると私は思っています。

本連載は、下記の当社コンサルタントが順次、執筆いたします。
菊谷寛之(代表)
渡辺俊(中小企業診断士)
田中博志(中小企業診断士)
津留慶幸(社会保険労務士)

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