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第68回 中堅・中小企業におけるこれからの管理職のあり方-1-

【強い組織を作る!人材活用・評価・報酬の勘どころ】

 

(2016年2月)

【第1回 中堅・中小企業の管理職事情】

 こんにちは。人事コンサルタント・CDA・中小企業診断士の渡辺俊です。
 今回からしばらく、私がこのコーナーを担当しますので、よろしくお願いいたします。

 今シリーズのテーマは「管理職のあり方」。「マネジメントのあり方」と言ってもいいかもしれません。
 「あり方」というと「あるべき姿」が存在するように聞こえますね。
確かにこれまで、たくさんの学者や企業家たちが「マネジメント」について考え、理論体系を作り上げており、読み切れないほどの書物になっています。
 にもかかわらず、今現在もさまざまな角度から取り上げ、論じ続けられているのがこの「マネジメント」です。
 それはつまり、「マネジメント」に、教科書的な正しい答えがあるわけではないことを物語っています。
 環境や状況が変わればそのあり方も変わっていくのであり、社会や組織、人間が存在し続ける以上、考え続けざるを得ない奥深いテーマだということなのでしょう。

私たちプライムコンサルタントは、会社がスタートした当時から「評価制度」との関連で管理職研修をお手伝いしています。
 しかしつい数年前まで、これを積極的に求めるクライアントは、それほど多くなかったように思います。

 ところが最近、「プライムさんは、管理職の教育もやってくれるの?」というお声掛けをたびたびいただくのです。
 「評価制度は、しくみを作っただけでは機能しない」ということに、多くの企業が気づき始めているという見方もできますが、それだけでもないようで、「管理職の教育」という名のもとにさまざまなニーズがあるように思います。
 私たちが関わっている多くの中堅・中小企業が、「マネジメント」というものをあらためて考え始めているように思うのです。

 今回のシリーズでは、中堅・中小企業が、今何を思って管理職教育に焦点を当て始めているのかを見つめ、これからの管理職のあり方を、皆さんとともに探求していきたいと思います。

1.「うちの管理職は管理職じゃない」

 これは、私がこの仕事を始めて以来、何人もの社長からお聞きしてきた言葉です。
 社長は、「管理職」について何らかの役割を期待しているのに、わが社の管理職はそのイメージにはほど遠いということなのでしょう。
 では一体、社長たちが持っている管理職のイメージとはどういうものなのでしょうか。
 さてここで、皆さんに質問です。ここに、配下に4人の営業マンを持つ3人の営業課長がいます。
 あなたが「いいね!」と思う課長はどのタイプでしょうか? またそれはどうしてですか?文句なしに「いいね!」と言い切れない場合は、「強いて選ぶなら・・・」でも結構です。

A) 課の売上の1/2を自分で稼ぎ、数値が足りないと自ら進んで営業に歩き、何が何でも目標を達成するA課長
B) 自身の売上は課の数値の1/5程度。4人の営業マンの同行営業・現場指導・後方支援に徹するも、目標未達も見受けられるB課長
C) 社長直命の新商品開発プロジェクトで、次から次と出てくる社長からの課題に応えることを最優先とし、現業の営業は部下任せのC課長

 

 どの課長を選んだかで、課長の役割をあなたがどのようにとらえているかがわかるように思います。
 A課長を選んだあなたは、課の成果を上げること、売上目標を達成することが、課長のもっとも大切な役割だと考えているのではないでしょうか。
 B課長を選んだあなたは、一時的には目標未達があったとしても、部下を育成して部下に成果を出させることを最優先すべきだと考えているかもしれません。
 C課長を選んだあなたは、社長が投げかける将来に向けての課題を実行することが、何より大事と感じているのではないかと思います。

 実のところ、「管理職」に何を求めるのかは、会社によって、また状況によってそれぞれなのだろうと思います。
 ここではA、B、Cという3人の課長に単純化していますが、理想をいえば、部下も育成し、売上目標も達成でき、社長の要求にもすぐに応える管理職を、社長は求めているのでしょう。
 さらには、時流を読みながら進むべき方向性を的確に見極める、幅広いネットワークやコネクションをフル活用して最適な体制や基盤を作り上げる、難解な事態を解きほぐし適切に対処するなど、管理職に求めるものを上げたらきりがありません。
 このように、「うちの管理職は管理職じゃない」という発言の裏には、その社長なりの管理職に求めるイメージがあり、会社規模の大小に関わらず、管理職というものは、相当に複雑で幅広い役割を期待されているように思います。
 そしてその「相当に複雑で幅広い役割」を考える時、「マネジメントとは何か?」という問いが脳裏に浮かんできます。

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2.管理職登用の実態

 ところで会社・社長は、管理職をどうやって選抜し登用しているのでしょうか。
 模範的な解答は、組織への忠誠心や業績に対する責任感、仕事の判断力、決断力、周囲への影響力などを重視して、組織運営の責任者として人や仕事を「管理する能力」がありそうな人材を見極め、登用するということではないかと思います。

 しかし実際に多くの中堅・中小企業では、主に、次の3つのいずれかのスタイルで登用が行われているように思います。
 1つ目は成果重視型。あるポストに誰かを任用する際、その領域でもっとも成果を上げている、結果を出している人材を登用するというスタイルです。
 たとえば営業部門のマネージャーには、もっとも高い営業成績を上げている人、売上や利益を確実に作る人を登用するというやり方です。

 2つ目は年功序列型。「あいつも40代半ば、同期のLくんは一昨年、Mくんは昨年課長になったし、そろそろあいつも上げてやらないと・・・」という周りの配慮で登用するスタイルです。
 ときには、「あいつ」のためにポストを作ろうというようなことも、いまだにお聞きすることがあります。
 逆に「うちは30代後半から40代前半の社員がいないので、課長に登用できない」という話もあります。
 実際に課の責任者をやらせているのに、若手だからという理由で「係長」のままで管理職にしないのは、年功序列登用の裏返しともいえます。

 3つ目は、先の2つとは少し視点が違います。肩書優先型とでも言いましょうか。
 たとえば、顧客の信頼、安心を得るために、「営業マネージャー」という肩書をつけるとか、時間外手当の支給対象から除外するために「課長」にするとか、対外的な諸事情のもとに登用するといったスタイルです。
 前者は、社内的には管理職として扱わず、「登用」なのかどうかあいまいな場合もあります。
 後者は、法的な管理監督者としての実態がなければ認められないのですが、現実にはこのような登用を行っている会社も少なくありません。

3.なぜ管理職教育が必要なのか

 さて、先に述べたように、社長は管理職に対して、相当に複雑で幅広い役割を求めているはずです。
 だとするならば、上記の3つのスタイルで登用された人材が、その社長の期待にすぐに応えられるかというと、はなはだ心もとないのではないでしょうか。
 ある領域で高い成果を上げていたからといって、管理職としての役割が十分に務まるとは言い切れません。
 「名選手、必ずしも名監督にあらず」、その道のプロが必ずしも名将になるとは限らないことを、私たちはよく知っています。
 また一定の年齢に達すれば(一定期間の経験が積まれれば)管理職が務まるかと言えば、そうでないことも誰もがよくわかっています。
 ましてや、対外的な肩書と管理職が務まるかどうかは、ほぼ関係がないと言ってもいいでしょう。
 登用すればすぐに管理職にふさわしい働きができるわけではないのです。
 登用は、管理職になるためのスタートに過ぎず、「管理職になっていく」には、ここから学びを始めることが必要なのです。

 しかし多くの中堅・中小企業では、一度登用された管理職は、学ぶ機会を得られないままに自己流でその役割を担い続けています。
 問題に直面するたびに悩み、先輩や上司、社長に相談してヒントをもらったり、巷にあふれる書物を参考したりしながら、何とかその役割をこなしています。それはそれで大事な経験ですし、その経験によって日々自然と育てられるという側面があることに間違いはありません。

 ただそれに加えて、管理職として身につけるべき知識や心がけという広範な専門性があることも事実です。
 現場以外の機会で学んだ方がいいことも、確かにあるのです。日常の経験と日常を離れた学びの相乗効果で学習と気づきが積み重なり、「真の管理職になっていく」のではないかと思うのです。

 では、管理職として学ぶべきこととは、いったいどのようなことなのでしょう?それを語るにあたっては、まず、次の問いについて深く考えてみる必要がありそうです。
•そもそも管理職とは何なのでしょうか?
•会社はなぜ、何のために、管理職を登用するのでしょうか?

 この問いはすなわち、「マネジメントとは何か?」を考えることにほかなりません。
 次回は、これをひも解いていくことに取りかかりたいと思います。

本連載は、下記の当社コンサルタントが順次、執筆いたします。
菊谷寛之(代表)
渡辺俊(中小企業診断士)
田中博志(中小企業診断士)
津留慶幸(社会保険労務士)

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